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レーザーの歴史

レーザー発想の誕生と黎明期

1917

レーザーの成り立ちには、アルベルト・アインシュタインが深く関わっています。理論物理学者アインシュタイン(1921年ノーベル物理学賞受賞)による1917年の論文「Zur Quantentheorie der Strahlung(放射の量子論について)」が、レーザー=LASER(=Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)とメーザー=MASER(=Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の理論的基礎を確立しました。
アインシュタインは、電磁波の吸収、自然放出、誘導放出についての確立係数(アインシュタイン係数)に基づいて、マックス・ブランクの幅射公式から新たな公式を導き出します。

1928-1939

その後1928年、Rudolf W.Ladenburgによって誘導放出及び負の吸収という現象の存在が確認され、1939年にValentin A.Fabrikantによって誘導放出を使った「短い」波長増幅の可能性が予言されます。

1947

1947年には、物理学者 ウィリス・ラムWillis Eugene LambとR.C.Retherfordが水素スペクトルに明らかな誘導放出を発見し、誘導放出をテーマとした世界初のデモンストレーションが行われます。
ラムは水素スペクトルの微細構造に関する研究により、彼もまた1955年にノーベル物理学賞を受賞しています。

1950

1950年、アルフレッド・カストレル Alfred Kastrer(1966年ノーベル物理学賞受賞)は、原子と光の共鳴的相互作用を研究し、原子を励起するために光を用いる「光ポンピング法」を提案し、数年後にこれをJean Brossel、Winterと共に開発することに成功します。
これが後のメーザーやレーザー開発の際に重要な技術となります。
同じ頃、物理学者のジョセフ・ウェバー Joseph Weberhaは、AとBのアインシュタイン定数がメーザーやレーザー という電磁波増幅器を作れば、使えることに着目します。

1952

1952年、カナダ・オタワでの無線学会でその見解を発表し、量子エレクトロニクスの基礎となる公開文献を出版することに成功します。彼はその後「初期のメーザーへと導く考え方の理解」に対する功績で認められ、メーザーやレーザーの実用開発へと導いた量子エレクトロニクスの先駆者として名を残しています。

1954

1951年、アメリカの物理学者 チャールズ・タウンズ C. H. Townesはアンモニアガスを媒体とする装置の開発を開始し、その後時を経て1954年に誘導放出による電磁波の発生と増幅を初めて得ます。
タウンズはこれを「MASER(Microwave Amplification by Stimulated Emission of Radiation=放射の誘導放出によるマイクロ波増幅)」と名付け、1954年に、義弟であり同じく物理学者であるアーサー・ショーロー Schawlowと共に、電波の一種 マイクロ波を強力にまっすぐに送り出す装置である「アンモニア分子線メーザー」を開発しました。

1958

1958年にはメーザーを可視光や赤外線の範囲でも実現できることを理論的に示し、具体的にどのようなシステムで実現できるかを提案しています。 これがレーザー=LASER(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation 放射の誘導放出による光増幅)」に関する最初の論文です。
アメリカ人物理学者セオドア・メイマン Theodore Harold Maimanは、タウンズの理論に基づき、1955年にメーザーの研究を始めました。

1960

1960年5月16日GMのヒューズ研究所でルビーの結晶を使い、光を強力に直線的に送り出すレーザー発振装置=世界初のルビーレーザーを発明することに成功します。
これが近代レーザーの発祥です。
メーザーとレーザー装置の実用開発は、このタウンズとショーロー、そして量子エレクトロニクスの基礎研究で知られるロシア人物理学者 ニコライ・パソフとアレクサンドル・プロホロワ、そしてアメリカ人物理学者セオドア・メイマン Theodore Harold Maimanによって成し遂げられた、とされています。
タウンズ、パソフ、プロホロフらは1964年に、またショーローは1981年に、それぞれノーベル物理学賞を受賞しています。

メイマンはルビーレーザーによる功績から「レーザー治療の父」と呼ばれています。
1960年代には、アメリカ人皮膚科医 レオン・ゴールドマンがルビーレーザーを使って、世界で初めて子供の血管腫を治療しました。
発明後レーザーは応用/適応範囲、医療では治療範囲を着々と広げ、いつしか「近代科学史上最も大きな発明の一つは、人工の光レーザーである」と言われるようになります。

1980

1980年代には、レーザーの医学への応用が飛躍的に進み、
〇生体情報取得への応用(Optical Coherence Tomography等)
 レーザー光をセンシングプローブとして、さまざまな情報を得る。
 →単位周波数(波長)に対する高い精度
 =時間的コヒーレンスの利用
〇生体切除術・改質への応用(Laser Surgery等)
 →波長程度の大きさに集束出来、高いエネルギー密度 
 =空間的コヒーレンスの利用
といった分野でレーザーが活躍することになります。

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