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レーザーの歴史

「レーザー・アンチエイジング」というジャンルの確立~フラクショナルレーザー登場による市場の変化・拡大

フラクセルの登場によって業界が受けた衝撃は大きく、美容医療市場におけるレーザー治療の立ち位置も全く変わりました。なかなか決定打を見出すことが出来なかったニキビ跡や毛穴、傷跡といった凹凸の改善がこれで確実に望めるようになり、また「皮膚をレーザーで入れ替える」「皮膚をレーザーで若返らせる」という概念が生まれたのです。

フラクセルはただ単なる新しい技術を搭載したレーザーではなく、「レーザー・アンチエイジング」という新しい言葉を生み、定着させる原動力となった技術を誇る、歴史にその名を残すレーザーとなりました。

レーザー機器の併用による治療が普及~フラクセルとサーマクールの併用

フラクセルの登場が大きなきっかけとなり、レーザー機器の併用による治療方法が学会などで発表されることが多くなったことも追記しておきたいと思います。

2008

2008年、美容先進国の米国で最も効果的な施術は、フラクセルとサーマクールの併用療法だといわれました。
これは、「サーマクールで皮下組織まで熱を加えてリフトアップとコラーゲンの再構築をはかり、フラクセルで表層の肌を少しずつ入れ替えてゆく」療法です。

2007

私は2007年4月に開催されたASLMS第27回米国レーザー学会で、 「サーマクールとフラクセルの併用療法による若返り療法」 「The Treatment of Photo damage and Facial Rhytids Utilizing Fraxel (1550nm Erbium Glass Fractional Laser Resurfacing) and Thermacool TC (Monopolar RF) for Japanese Patients (原題)」の演題を提出し発表しましたが、当時アジア人における併用療法の演題を提出した人間は初めてだとのことでした。

それまで白人種に比べてメラニン色素の多い黄色人種=日本人は、概してレーザーの出力を落とさなければならず、そのため適切なパワー設定が難しく、ましてやIPLなどに比べてアグレッシブな設定のフラクセルとサーマクールを併用するのは難しかったのです。

2004

私はサーマクールの最も初期のユーザーの一人です(いまでこそ数が多くなってしまったサーマクール認定医も、私の頃は英語でトレーニングを受けました)し、フラクセル理論が世界デビューした2004年のダラスのレーザー学会、フラクセルが日本に初めて上陸した2005年のどちらにも立ち会いましたので、いずれの機種にも思い入れがあります。

この年は、フラクセル、サーマクールそれぞれを擁するリライアント社とサマージ社が合併した年でもありました。レーザー会社の吸収・合併はこの年以降益々盛んになっていきます。

フラクショナルレーザーの発展形=ALMA PIXEL Laser

2008

イスラエルにあるAlmaというレーザー会社で出しているHarmony(ハーモニー)という機械があります。このHarmonyでは、2940nmのエルビウムヤグレーザーか1320nmのフラクショナルレーザーを選択することが可能だということで、やはりこの2008年話題になりました。

Alma社は本家のフラクセルを販売している米リライアント社に次いで、かなり前からフラクショナルレーザーの開発を始めた会社の一つです。

自分の腕に照射してみると、9×9mmぐらいの皮膚にこのような穴があきます。写真で見えますか?

フラクショナルレーザーのドットの間隔が思ったよりも広いですね。

ほかのフラクショナルレーザーではドットが肉眼では見えないぐらい小さいのです。

半日後にはすっかり赤みもなくなりました。

肝斑にもフラクショナルエルビウムヤグレーザーの特性を考えると仕方ないかと思いますが、もう少し肌の下への進達度が上がればいいのにな、というのがこの時点での感想でした。

バリエーションの増えた肝斑に対するレーザー治療

2008

続々とデビューするフラクショナルレーザーの中で、韓国のルートロニック社も新しいレーザー機器をこの年デビューさせました。フラクショナルレーザー「モザイク」。機器はフラクセルに比べてちょっと小ぶりですが、実際に照射してみるとビームモードは同じパワーのフラクセルと比較するとわずかに太い。

マックスピールの名前で有名なSpectra VRMも同じく日本初上陸となりました。VRMが世に出てからこの段階で約4年の歳月が経ったことになりますが、いよいよ新しいバージョンが登場したというわけです。この新しい機器を用いた「VRMトーニング」という別の施術のプロトコールで、いよいよ肝斑治療がクリニックFで可能になります。韓国ではこの機器を使った施術で、肝斑の改善率は100%であったと発表する先生も出てきました。

同種のHOYAコンバイオC6というレーザーやこの年の米国皮膚科学会(AAD)でデビューした、サイノシュアの新しいアレキサンドライトQスイッチレーザー "Accolade"もこの年国内での販売が決定し、肝斑に対する治療としてレーザーが完全にひのき舞台に上がった年となりました。

中国・韓国におけるレーザー企業の台頭

2000

技術力は高くとも厚生労働省による厳しい規制の中、レーザーの開発がなかなか難しい日本を置いていく形で、中国や韓国では美容レーザー・光治療器の開発及び販売がどんどん進められていました。アジアを中心に販売台数でも伸びを見せ、アメリカ製の機器やイスラエル製の機器などに比べ安価に販売されていたことから一定の人気を誇っていました。ところが機器の技術にはアメリカやイスラエルの機器を模倣したものも多く、2000年代に入ってから特許や知的所有権、知的財産権を巡って本国から厳しい指摘を受ける事態に発展し、場合によっては裁判などで争う姿勢も見られるようになりました。

フラクショナルCO2レーザー

2008

2008年末にはフラクショナルCO2レーザーがとうとうクリニックFに納品されました。ルートロニック社のeCO2(エコツー)プレミアムが日本初上陸となったためです。

この年、アメリカでは、フラクセルやアファームMPXなどのフラクショナルレーザーよりも、より強力で、効果の高いCO2を使用したフラクショナル治療が一般的になりつつありました。

CO2の波長を使用すると、肌を蒸散する能力が高く、ニキビ跡や毛穴を治療する効果が高くなるのですが、反対にダウンタイムと呼ばれる、日常生活に復帰できる時間が長くなってしまいます。

こうしたアグレッシブなレーザーは、欧米人や、韓国人など、結果にこだわる人種には受け入れられると思うのですが、あまり日本人向きではないのかなと、導入には慎重になっていました。

しかしながら、実際に使ってみるとパワー設定を調節することでこれらのトラブルは回避できそう。それでも数日のダウンタイムがあるので、フラクショナルレーザーの未体験者にはお勧めできませんが、「フラクセル2」や「アファームMPX」や「モザイク」で改善できなかった、深いニキビ跡や毛穴に悩んでいた人には、その後の選択肢の一つになりそうです。

技術は進歩するものですね。

フラクショナルCO2レーザーは、米国では当時一回5000ドル(約50万円)もする高額な施術でしたが、数回でフルリサーフェシング(肌の総入れ替え)が可能で、患者さんはこの機器を導入しているクリニックをわざわざ探して遠くから訪ねて来るということでした。

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