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レーザーの歴史

肌を入れ替える スキンリサーフェシングレーザーの登場

2004

波長が10600nmの炭酸ガスレーザー は、集光度合いの標的が水にあるため、生体組織には吸収されやすいという特徴があります。
このレーザーは組織選択性が低いので、いぼや盛り上がったほくろのような編成した組織を蒸発させることで、簡単にそれらの除去ができました。
この性質を利用して、焦点をぼかして肌に照射すると、正常な肌と病変の肌に差がなくほぼ同一の深さに影響を与えることができるのです。
ダウンタイムはありますが、特に白人種では「今の肌を若い頃の肌に入れ替える」ことができ、夢のアンチエイジング・レーザーとして注目を一気に浴びることになります。
しかし、過度に熱変性を加えてしまうと真皮まで編るということで成してしまうため、炎症反応が強くなってしまいます。
また創面も炭化するため、治療が長引いてしまう性質があり、特にメラニン色素の多いアジア人には施術後の色素沈着症が問題となりました。
蒸散系のレーザーとしては、次に エルビウムヤグレーザーが生まれました。
このレーザーは 炭酸ガスレーザー よりも水への吸収率が高く、肌が均一に薄く削れる特長があります。
また施術面が炭化しないため、創面がフレッシュになり、その後に加工がしやすかったのです。
この種では サイトン というレーザーが有名で、レーザーの王様と言われており、日本以外の東アジアでは最も売れたレーザーのひとつですが、色素沈着が多く日本人の肌には馴染みませんでした。

2004

2004年、ダラスのASLMS(American Society for Laser Medicine &Surgery米国レーザー学会)で、カルフォルニア リライアント社が発表した Fractional Laser Resurfacing は画期的な技術開発でした。
肌に細かい穴を開けて(正確には 1550ナノメーターのエルビウムグラスレーザー を使用してミクロン単位で上皮を凝固させるのですが)肌を入れ替えるという全く新しい考えで、会場内に衝撃が走ったのを鮮明に覚えています。
色素沈着が起こりやすいアジア人にとって、リサーフェシング(肌を入れ替える)施術ができることはまさに福音でした。
私は日本で一台目となるフラクセルを輸入し、多くのクライアントに使用し、とても感謝されました。

2005

翌年の2005年以降、このフラクショナルリサーフェシングの技術を応用した器械が多く発売されました。2007年の段階で出た基本的な情報と、FDAでの認可された適応疾患を書きますと:-

…となります。
イスラエルのシネロン社も、フラクショナルな ポラリス(ePlus WRA)を発表し、多くのフラクショナルレーザーの販売がこの市場を作り、次第に定着させていきました。

2007

このフラクショナルレーザーリサーフェシング の市場で、まず注目を集めたのは2007年の春にデビューした本家本元のReliant 社 フラクセルⅡと、Cynosure 社の アファームです。
フラクセルⅡ は フラクセルⅠよりも痛みが少なくなり、施術の深さも深くなりました。
また施術の際に必要だった青い色素も必要なくなり、ニキビ跡のような深い皮膚疾患には効果が高いと、評価を得ました。
フラクセル は体のどこにどのくらいの深さで、どのくらいの密度で打つかを全て調節できるようになっていて、この段階の フラクショナルレーザー市場では明らかに一歩先んじていました。

一方 アファーム は1440nmの近赤外線および、CAP(The Combined Apex PulseTM)システム を使用した、最新フラクショナル・レーザー・リサーフェシング機器でした。
1440nm という光は、その水への吸収効率から、光老化の対象である300μm以下までしか届きません。
その点痛みも弱いし、効果も浅いと言えるのですが、一般的に紫外線の効力のある部分の肌の入れ替えは出来ます。
さらに米国では ランチタイムリジュビネーション(ランチタイムを使った肌の若返り)と言われているほど、約15分という短期間に施術を終えることが出来るのも魅力だと話題になりました。

その後サイノシュア社は、通常の アファームの1440nmの波長に加え、1320nmの赤外線をほぼ同時に照射するアファームマルチプレックスという新機種を開発しました。
この機器は アファームの能力にプラスして、さらにたるみ引き締め効果を取り入れた機器であり、その治験者として、この業界を牽引する5名の医師が選ばれました。
ワシントンDCのロバート=ワイス(Robert Weiss)、カリフォルニア州サクラメントのエミル=タンゲッティ(Emil A,Tanghetti)、ロサンジェルスのロナード=モイ(Ronald Moy)、テネシーのブライアン=ピースマン(Brian Biesman),ニューヨークのブルース=カッツ(Bruce E.Katz)です。
クリニックFにも、2007年夏日本で1台目の アファームマルチプレックス が導入されました。アファームに比べ、アファームマルチプレックス は、この図にあるように皮膚や毛穴のタイトニングに対して患者満足度がより高く、評価できる機械として認知されました。

アファーム VS アファームマルチプレクス

2007

2007年9月には米国キュテラ社の新しい リサーフェシングレーザー PEARL(パール) が日本でもデビューを果たします。
パール は2.79 μm(2790 nm)という当時まったく新しいレーザークリスタル = Er:YSGG(イヨットリウム スカンディウム ガリウム ガーネット)を使用して完成したレーザーで、炭酸ガスとエルビウムヤグレーザーの中間という蒸散波長により、理想的な蒸散と熱効果を実現した機器として上陸したのです。
真皮上層におけるコラーゲンの新生の性質を併せ持ったもので「レーザーピーリング」としての機能が高く、ニキビやニキビ跡の改善効果が期待されました。

2007年に話題となったこのレーザー3種(フラクセルⅡ、アファームマルチプレックス、パール)は、それぞれ主要効果とは別に、肌につやを出し、キメを整えるという効果があり、これによって「色彩的老化=美白」「形状的老化=引き締め」に次ぐ3つ目の美容皮膚科市場「感触的老化=キメを整えつやを出す」が、この日本でも注目される時代に突入したと言えるでしょう。

※FDA(Food and Drug Administration of the United States Department of Health and Human Service)米国食品医薬品局=日本の厚生労働省にあたる

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