TOP

レーザーの歴史

レーザーによる肝斑治療

2005

「レーザーで肝斑を治療してはいけない」 というのは、美容医療の業界ではそれまで「常識」とされており、こうした記述が実際教科書にも載っていました。
しかし、2005 年前後からレーザーによる肝斑治療の有効性が専門医の間で認められ、いよいよ肝斑治療にもレーザーが用いられる時代へと突入します。
そんな中、リアイアント社が開発したフラクセルを始めとする「フラクショナルレーザーリサーフェシング」機器は表皮から真皮にかけてまでをメラニンに依存することなく水分吸収することにより、円柱状にタンパク変性させ、部分的に熱擬古を作ることで肌を入れ替えることができるという、画期的なコンセプトでデビューを果たします。
これは理論上、レーザーによる肝斑の治療が可能且つ有効であることを証明することに成功した、と言えます。

2008

これによって、フラクセルは初めて米国FDAに、肝斑治療の有効性が承認されたレーザー治療器 となりました。
しかしながら、日本人と欧米人とでは、肝斑に相当する 「Melasma」の概念自体が実際には少々異なったものであり、こうした事情を知る私にとってはすべての日本人の肝斑症例に対して、フラクセルが効果的であるとは到底思えませんでした。

そのまま月日が流れた2008年。アメリカ・フロリダで開催され、米国レーザー医学会(ASLMS)で注目を浴びた新しい技術があります。
レーザートーニング という技術です。

これは、ルートロニック社の Spectra VRM(Max)やHOYAコンパイオ社の Medlite C6 といった1064nm の Nd:ヤグレーザーを、非常に低いフルレンスで照射して比較的短い期間に繰り返すことで、肝斑治療を行うというものです。

レーザーで肝斑を治療するためには 5つの注意点 がありますが、その注意点をすべてクリアする機器及び治療法であることに、当時私も強く興味を持ちました。

「5つの注意点」とは

  1. 表皮最下層にあるメラニン色素を破壊できるように、深達度の高い"赤外線域の波長"のレーザーを選択する。
  2. メラニン色素を破壊する臨界照射時間(TRT・熱緩和時間)である50ナノ秒以下のパルス幅のレーザーを選択する。
  3. 均一にレーザーが照射されるように、照射径内のパワーが均一な"トップハットモード"のレーザーを選択する。
  4. メラニン色素のみを破壊し、周りの正常皮膚に影響が無いパワーを選択する。
  5. 目の周りに発生することが多い肝斑は、レーザー照射によって網膜に影響を与えることがあるので、適切なスポット径を選択する。

もちろん医師の経験と技術は必要ですが、この5つを守るレーザー治療を行なうことができれば、理論的には確実に肝斑を治療することが出来るということになるわけです。

上記の機器以外でも、サイノシュア社の QスイッチアレキサンドライトレーザーAccolade も、755nmの波長でありながら上記の条件を満たすものとして登場しました。
アレキサンドライトレーザーのパルス幅は、Nd:ヤグレーザーよりも数倍長くなりますが、この熱だまりによってコラーゲンやエラスチンの合成を助けている効果で、副次的に小じわが減少する症例もあり、2008年はこうした機器と治療法に注目が集まる年となりました。

※当サイトのテキスト&画像の無断転載はお断りいたします。引用される場合はクリニックFのクレジット記載をお願いいたします。