レーザーの歴史
① レーザー発想の誕生と黎明期
② レーザー脱毛器の誕生
③ あざやほくろに効くレーザーの登場
④ 画期的な色彩的老化の治療法 IPL の登場
⑤ 形態的老化へのアプローチ RF の登場の歴史
⑥ 肌を入れ替える スキンリサーフェシングレーザーの登場
⑦ レーザーによる肝斑治療
⑧ アブレイティブ・フラクショナルレーザー機器の登場
⑨ アンチエイジング市場におけるレーザーの躍進
⑩ 「レーザーアンチエイジング」というジャンルの確立~フラクショナルレーザー登場による市場の変化・拡大
⑪ HIFUによるリフトアップ効果がFDAで承認
⑫ ピコ秒レーザーの誕生
⑬ 伊DEKA社の躍進とhaloの登場
⑭ フラクショナルレーザーによる新たな道筋「ドラッグデリバリー」
⑮ レーザー治療は遺伝子に影響を与えるのか
⑯ レーザーによる痩身市場の開拓
⑰ 粘膜に照射する美容レーザーの誕生
⑱ HIFEMの登場
HIFUによるリフトアップ効果がFDAで承認
フラクショナルレーザーの躍進が美容医療業界で日々語られる中、HIFUという技術を搭載した機器が米国FDAの認可を受けたことでにわかに脚光を浴びることとなったのは、2009年後半のことです。
HIFUとは、High Intensity Focused Ultrasoundの略で、日本語では「集束超音波治療法」もしくは「高密度焦点四季超音波治療法」と呼ばれています。読んで字のごとくここで利用するのは「超音波」であり、超音波を一点に集中して集めることにより、その焦点で高いエネルギーを作り、身体や皮膚の狙った局所のみにこのエネルギーを届けるという技術です。小学生の頃理科の授業で行われた、虫眼鏡を使って太陽の光を集め、紙の上における一点を焼く作業・・・イメージの例としてこれがよく用いられます。
改めて「超音波」とはなにかをここで簡単に説明すると、超音波(UltrasoundもしくはUltrasonic)とは人間の耳には聞こえない高い振動数を持つ弾性振動波(音波)のことを指します。可聴域の音と物理的特徴は変わりませんが、超音波の場合においてその音波を人が聴くことはできません。指向性が高く高解像度の探知へ応用ができるため、医療の世界で超音波はおよそ50年に渡って使用されており、その安全性と機能性から心臓、血管、腹部、頸部、乳房・・・といった様々な部位における検査に利用されることで広く知られてきました。
そこに近年この超音波を用いたHIFUという技術が確立されたことにより、医療現場では別の視点から注目を集めるようになります。病変や腫瘍の切除に使えるのではないかという着眼点が生まれたのです。そして実際前立腺がんや膵臓がん、肝がん、腎がん、乳がん、骨腫瘍といった疾患において治療目的で使用が始まり、様々な医療機関から治療効果や応用事例などについて臨床報告が上がるようになります。HIFUを利用することで病巣のみをピンポイントで破壊でき、また超音波を用いるので放射線治療における被曝などのリスクも伴わず、外科手術と違い組織侵襲がない・・・というメリットが次々とニュースとして取り上げられるようになったのです。実際この日本でもHIFUを採用する医療機関は年々増加している現状があります。臨床例の増加と共に「HIFUは三次元放射線(サイバーナイフ、ガンマーナイフなど)の超音波版と考えることができる」という意見が広がりつつあるのです。
この技術を搭載し、美容医療目的で開発されたのが、米国で生まれた「ウルセラシステム」です。
「Ultherapy is the only non-invasive procedure FDA-cleared to lift skin on the neck, under the chin and on the eyebrow. Now also FDA-cleared to improve the appearance of lines and wrinkles on the decolletage 」
2009年に米国FDAより正式認可が下りたウルセラシステムは、非侵襲性――生体を傷つけることなく、頸部、顎、眉位置の引き上げ効果が認められており、またデコルテのラインや皺の改善についても効果が認められています。
これにより、美容医療領域で「タイトニング」及び「リフティング」と呼ばれる加齢に伴う「引き締め」「引き上げ」治療に利用される治療機器は大きく分類すると、
1.レーザー・光治療機器
2.RF(高周波:ラジオ波)治療機器
3.超音波治療機器
に三分割されることとなりました。
この中でレーザーとRFによる治療は、肌の表皮から熱が加わるので、治療のパワーを上げてゆくと、表面に熱がたまってしまいます。
一方、HIFUを利用したウルセラでは作用点より皮下に4.5mm 3.0mm 1.5mmと確実に熱源を固定できますし、また治療者にとって特筆すべき点としては治療を行う上できちんと目視して治療をすることが出来る、という点です。
実際に超音波を利用して、組織を目視(上図左)しながら焦点を合わせて(上図右)治療が可能となったのは、美容診療の機器としては画期的でした。
焦点を集中させるタイプの超音波であれば、肌の比較的深い部位に熱溜まりを作ることが出来ますので、光治療器やレーザー機器、RF機器との組み合わせ治療が非常に効率よくできるのです。
つまり、別の機器との組み合わせ治療に非常に適している機器であるということが言えるのです。そのため、ウルセラ+サーマクール、ウルセラ+フラクショナルレーザー、ウルセラ+トリニティ・・・といったコンビネーション治療が各院でも人気となり、ウルセラの参入によって「メスを使わないフェイスリフト」が確実に定着することにも繋がりました。
美容医療の現場ではこれにより、1.美容整形的手法を用いたフェイスリフト手術、2.各種「糸」を使ったリフティング、3.ウルセラ、サーマクールといった専門機器を使用したリフティング及びタイトニングが一列に並ぶこととなったのです。
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