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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

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医師がMBAを取得するメリットとは

突然ですが、医師がMBAを取得するメリットとは一体なんでしょうか?

最近またこのご質問を受ける機会が増えましたので、ブログにも書いておきたいと思います。

今年は立て続けに友人の医者から、独立したいので経営を見てくれないかという依頼が来ました。

経営が苦手な医師が多いのはある意味当然です。

通常の医師の業務で治療費用について考えることはありません。

価格も厚生労働省が決定しています。

病原菌を撒いてお客を増やす(苦笑)なんてことも当然できません。

悪い冗談はさておき

プロのピアニストや俳優、スポーツ選手ときっと似ているところもあることと思いますが、専門についてとことん追求し、それを全うした生活を送っている、いわゆる「スペシャリスト」である分、それ以外の分野を苦手としてしまうのかもしれません。

また、芸術家や音楽家が美大や音大で似たような志向の人間の中だけである時期を過ごし、そのまま社会に出てしまうことがあるように

スポーツ選手が小さいころからずっと部活にどっぷり毎日浸かって、そのままプロチームや実業団に入ってしまうように

同じ業種の縦社会・・・先輩―後輩の関係には慣れていても、横に広がった社会の体験に乏しく、専門以外のことについて相談をしたり学んだりする機会にあまり恵まれないこともあるかもしれません。

医者の場合は学生時代に本当でしたら余裕もあるはずなのですが、その時はまだ若くて横に視野を広げなければいけないことに気付かぬまま専科に進んでしまうことも多いのです。

そんな医者にとって、ある日突然事業計画書やキャッシュフローを作れと言われても、青天の霹靂、まさに「ちんぷんかんぷん」でしょう。

これは医学の世界にどっぷり漬かった人であればあるほど、そういった傾向があるのではないでしょうか。

※※※

知的好奇心を満たすということは人間の本能だと思いますが、人間の好奇心は最終的には宇宙か、自然か、人体に向かうものではないかと思っています。

好奇心の旺盛な人間にとって、医学の勉強は学生のときに寝ずに教科書を読んでしまったりするほど、本当に面白いのです。

なぜ風邪をひくのか? どうやって骨折の骨が治ってゆくのか? どうして人は老化するのか?

そういった答を見つけるためのヒントが教科書に書いてあります。

こういった疑問を答えるために、いわば医学の共通言語を学び、将来の研究に役立てるのが医学の道です。

でも、すばらしい医療技術を持っている人が、経営も上手いとは限りません。

保険診療費が今年も下がり、7割の病院や診療所が赤字であるという現状で、落ち着いて仕事に打ち込める状態を作るのは、非常に難しいことだと思います。

病院の維持さえ難しいのですから。

また、クリニックを率いる人材になった時には、スタッフ管理の知識も必要です。

医師は独立した瞬間に

「臨床家」として

「管理者」として

「経営者」として

の3つの顔を持たなければいけなくなるのです。

僕がMBAを取得したのはもう10年以上前の話になりますが、MBAを取得することが無かったら、自分のクリニックを売却したり、国内外で医療以外の事業を始めたりすることは絶対になかったと思います。

MBAを取得するにあたり、まずは基礎的な知識をつけます。

●計量分析 

●財務会計   

●マーケティング

●ビジネス・エコノミクス

●組織行動論 

●コーポレートファイナンス   

●経営戦略   

●人的資源管理

などのMBA取得時の基礎教科は、いわば経営の解剖学、生理学、生化学、病理学、薬理学にあたる基教科です。

これらの基礎的な教科によって、経営の共通言語を学びます。

どの教科も学ぶのに非常に魅力的で、毎週授業が楽しみでした。

この基礎科目のうち、計量分析は、統計学のたしなみのある医師でしたら楽勝の教科です。

財務会計。最初はPLやBSって何だ?というところからスタートし、基礎的な簿記の本を読んで勉強しました。

マーケティングの考え方は、そもそも集客しようという概念のなかった医師にとっては全く新しい新鮮なものでした。

経営戦略では、授業のタームで6チームに分かれ、モデルを使って経営シミュレーションゲームをして、戦いました。適切なときに資金投下して、リターンを得るのですが、僕の率いたチームが総合優勝した時は嬉しかったですね。

そして、どの教科でも、プレゼンテーションが必須でした。

理系の研究では、真実は一つです。その真実について話せばよいのですが、文系の研究では、論理過程や、思考方法によって全く別の解決策を導き出すことが出来ますので、プレゼンの上手さはとても大切です。

同じ題材について、サポートする議論と反対する議論を練習したりと毎週のように練習しましたので、プレゼンは上手くなりましたね。

※※※

医師であるにもかかわらず、ビジネススクールに通いMBAを取得して特に良かったと思った点は二点あります。

一つは、「コーポレートファイナンス」という、クリニックの現在価値を瞬時に把握する企業価値評価法についての知識を得たことです。

例えば、クリニックの成長のステージで、どの価格の医療機器を、どのタイミングで投資したら良いのか? ということを、理論を後ろ盾にすぐ理解できるようになったのです。

企業価値評価法について簡単に述べると
財務予測をもとに将来のフリーキャッシュフローを予測し、資本コストにより現在価値に割引、事業外資産の処分価値を加算し、有利子負債を控除する。
という、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法の考え方を身につけたこと。

DCF法を自分が経営するクリニックの財務状況に適応し、常にクリニックの現在価値を上げる努力を行い、そのベクトルに合った投資のみを重点的に行うことができるのです。

そして、もう一点は人的資源管理の科目において、「リーダーシップ理論」を学んだことでした。

現在主流のリーダーシップ論は、ハーバードビジネススクールのジョン・P・コッターが提案した理論です。

ちなみにコッターは、MITとハーバード大を卒業し、1981年にわずか34歳、史上最年少でハーバード大学の正教授に就任した秀才です。

コッターは著書の中で、組織を動かす人間には「リーダーシップ」と「マネジメント」が要求されると明示し、さらにそれらの違いを明確にします。

リーダーシップは組織をよりよくするために変革を成し遂げる役割を持ちます。

企業進路の明確化、人心の統合、動機付けと啓発が課題達成のプロセスとなります。

マネジメントは複雑な経営環境に対処して既存のシステムの運営を遂行すること。

計画立案と予算策定、組織化と人材配置、コントロールと問題解決が課題達成のプロセスです。

変化のスピードが加速する現代では、特にリーダーシップの重要性が増しているのですが、組織内での認識は未だ低く、意思決定を合理的に導き出す「プロセス」と「ツール」を著作で提案しています。

一方で、「俺についてこい(笑)」的なリーダーシップを発揮することだけがリーダーシップではありません。

幾つかあるリーダーシップ理論のうちで、僕が面白いと思ったのは、ロバート・K・グリーンリーフによって提案された「サーバント・リーダーシップ論」です。

グリーンリーフは、
「真のリーダーはフォロワーに信頼されており、まず人々に奉仕することが先決である」
と提言しました。

サーバント・リーダーは、まず相手が最も必要としているものを提供し、相手に奉仕したのちに、その後リーダーとして相手を導く役割を受け入れるというもの。

この考え方には学ぶことが多かったです。

そして、医師に求められるリーダーシップとはどういった性質のものか、僕も考えさせられました。

大学生のときにした勉強は、記憶しなければいけないものが多く、苦痛でした。

社会人になってからの、特に大学院での勉強は、基礎知識を学んだ後に理論を構築するのが主な手法です。

時間が限られている中、新たな分野の勉強は何度も徹夜をしましたし、大変な思いをしましたが、とてもエキサイティングで、特に論文を上梓した後は充実感に満たされました。

※※※

こうして思い返してみると、実は医師免許をとった人間にとって、MBA取得のために学ぶものの数々はいずれも非常に興味深く、勉強を始めるとっかかりを掴むことさえできれば、意外にスムーズに入っていける学問のように思います。

決してハードルは高くなく、医師国家試験のあの勉強量を考えれば(笑)たぶん誰でも頑張れば極めることの可能な学問であり、また資格取得後にとても有益なものであるように思うのです。

僕も偉そうなことを言える立場には全くありませんが、一方で「医師に経営はできない」と企業の偉い方々に言われ悔しい思いをしたことも過去にあり、そんなことはないと言いたい気持ちもあります。

学問と実際の現場はまた異なることも承知していますが、MBAという資格をとるというとりあえずの目的のために医師が頑張るというのは、確かな意味があると思います。

経営学について一緒に語り合える同業のドクターが増えたらとても嬉しいですね。


宝塚OG姿月あさと・湖月わたる・朝海ひかるによるCHICAGO

有楽町にある国際フォーラムにて、宝塚の公演を観劇しました。

宝塚の公演といっても、OGによるスペシャルバージョン。内容はあのブロードウェイミュージカル「CHICAGO」です。

メアリー・サンシャイン以外、演者はすべて女性という全世界でもなかなか観られないこの舞台。

ご覧頂けるようにトリプルキャストになっていましたが、特に姿月あさとさんのビリー・フリンが観られる会は大人気ですぐにチケットが売り切れてしまったそうです。

今回その姿月バージョン、しかも最終日に伺うことができました。

著名人や宝塚の方も多数いらしていましたよ。

大好きなミュージカルCHICAGOを日本語で初めて観ましたが・・・不思議と違和感なかったですね。

しかし、あの国際フォーラムの3階席までびっしりと埋め尽くす女性ファンの数。姿月あさとさん・湖月わたるさん・朝海ひかるさんというトップスターの成せる業なのでしょうが、圧倒されました。

まず朝海さん・湖月さんののびやかなパフォーマンスがあり、その後姿月さんが舞台に姿を現すと、一瞬にして劇場の温度がうわっと上がります。

あれはちょっと初めての経験でした。独特です。

聞けば姿月あさとさんというのは僕と同級生なんだそうで・・・しかも同じ3月生まれなのだとか。

僕の何百倍、いや何千倍女性にモテるのでしょうね(笑)?

また、ブロードウェイの演者に引けを決してとらない湖月さんヴェルマのダンスと迫力は長身を生かして素晴らしくダイナミック。舞台映えとはこういうことを言うのかというかんじでした。

朝海さんのコケティッシュなロキシーもとても良かったです。

3階席の遠くからでしたが、オペラグラスを駆使して楽しめました。

良い休診日でした。


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