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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

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180日

以前もブログに書きましたが、クリニックFのBGMは有線ではなくて、iTunesに取り込んだ僕のクラシックCDコレクションなのです。

今週のお題はフルトベングラーのベートーベン交響曲。

先ほど、スタッフに

「小学校の音楽の時間みたいになってますよね。」

と言われてしまいましたので、

「この指揮者は世界を代表する名指揮者なんだよ。」

と説明(若干説教)してしまいました(笑)。

ところで、今月もCDの作曲家の全集をいくつも買ってしまいました。

クリニックFのPCには、すでにかなりの曲目数がインストールされています。

確認してみたところ、毎日曲を聴き続けても180日かかるそうです。

しばらくは大丈夫そうですね。


人間到る処に青山あり

引き続き男性の患者さんも多いクリニックFです。

10代~30代は、ニキビ跡で悩む方。

35歳以降はアンチエイジング目的の方。

最近は、そこからのご紹介で、患者さんの奥様やお母さん、お姉さん、妹、そして彼女が来る・・・というケースも結構あって

「本当に時代は変わったよなあ・・・」

と感じますね。

先日は、20代の患者さんと一緒に、お母さんがお見えになりました。そのお母さんは自分は毛穴のことでもう50年も悩まれてきた、と。

そして

「毛穴を治療することはできないと思ってきたのですが、クリニックFの治療でどんどん綺麗になる息子の肌を見て、自分も来たいと思ったんです」

とおっしゃっていただきました。

これはとても嬉しかったですよ。

また、40代以上の患者さんとは、治療の話だけでなく世間話でついつい時間が経ってしまうことも多いのですが、先日は60代のある経営者の方と漢詩の話で盛り上がりました。

「男として生を受けた人間の生き様」として、たまたま話題に上がったのです。

ひとつは、三国志の英雄で、僕も好きな曹操の漢詩「歩出夏門行」です。

曹操孟徳はその血族の夏侯氏らとともに、魏を作り上げた武将です。三国志演義では諸葛亮孔明を神格化するため?に悪役として書かれていますが、思うに1000年に一人の英雄なのではないでしょうか。

「武」ばかりではなく、「文」においても秀でた才能を持った武将でした。

歩出夏門行も、長い漢詩なのですが、特にこの部分が有名ですよね。

神龜雖壽

猶有竟時

騰蛇乘霧

終為土灰

「神亀は寿しといえども なお終る時あり 騰蛇(ここでは竜の意味)は霧に乗ずるも 終には土灰となる」

老驥伏櫪

志在千里

烈士暮年

壮心不已

「老驥は櫪に伏すも 志は千里にあり 烈士暮年 壮心やまず」

現代語訳は

「亀の中には長寿のものもいると言われているが、いくら長くとも命はいずれつきるものである。

霧にのって舞い上がる竜も、最後は土や灰ととなって消えてしまう。

しかしながら、駿馬はたとえ老いて馬屋に伏したとしても、志は千里を駆け巡っている。

志をもった男は年老いても大志を抱いた心を忘れないでいる。」

・・・といった意味です。

歩出夏門行は曹操が32歳の時の作品であるとか。

曹操は65歳、西暦でいうと220年に病で倒れるまで生きましたが、きっとその時も同じことを思っていたのでしょう。

僕はこの詩がきっかけで、動物の中でも馬が特に好きになりました。今でもそうです。(馬が好きだと話をすると、良く聞かれるのですが、僕は府中に通う馬好きというわけではありません。念のため(笑))

もうひとつ話題に出たのは19世紀の幕末の勤皇僧侶である釈月性が読んだ漢詩。

将東遊題壁 です。

男児立志出郷関

学若無成不復還

埋骨何期墳墓地

人間到処有青山

「まさに東遊せんとして壁に題す

 男児志を立てて郷関を出ず

 学若し無く成るんば復還らず

 骨を埋むるに何ぞ墳墓の地を期せんや

 人間(じんかん)到る処に青山あり」

現代語訳は

「男児たるもの、いったん志を立てて郷里を離れるからには、学問が大成しない限り二度と戻らない覚悟である。

故郷の墓地に埋葬されようなどという考えはとうに捨てている。志を天下に求めるのならばどこで死んでも本望ではないか。

どこであっても自分の骨を埋めるくらいの青々とした山はあるだろう」

今年は「龍馬伝」で盛り上がっていますが、幕末の勤皇志士達はこの漢詩の文言を座右の銘にしていたんでしょうね。

この詩は、高校のとき教科書で読んだのが最初だったと思います。でもあのとき理解した内容と、今理解する内容ははっきり異なります。

大人になったということでしょうか(笑)。

漢詩には良いものがたくさんありますよね。

その中でもこのふたつは僕も大好きで暗誦できるくらいですが、改めてこの連休は本棚から古い本を引っ張り出して声を出して諳んじてみましたよ。

気合いが入りましたね。


9月開催の韓国のMIPSの招待講演

この9月に3日間にわたり、形成外科と皮膚科医を対象とした皮膚科学会がソウルで開催されます。

MIPS( International Congress of Minimal Invasive Plastic Surgery & Dermatology)という学会です。 僕はこの学会に招待講演を依頼されたので、先ほど届いたパンフレットを見ていました。

スケジュールを見ているとなんと。

ご覧の通り、初日のオープニングセレモニーの直後の講演。

2日間の、この学会招待講演枠のトップバッターの演者でした。

「アジアンスキンにおけるフラクショナルレーザー機器の比較検討」

について講演をする予定です。

“Comparison study of Fractional Resurfacing using different fluences and densities for skin rejuvenation in Asian skin”

頑張りますね。


東京二期会オペラ 「ファウストの劫罰」

昨日は診療後、上野の東京文化会館ホールで行われた東京ニ期会オペラ「ファウストの劫罰」を観に行きました。

クリニックFに定期的にいらしてくださる音楽関係者の方からお勧めいただいたのです。

ゲーテの「ファウスト」は、とても有名な物語ですよね。

「クラシック音楽」とは、「主に250年前から150年前にドイツで作られた作風」と定義しても良いと思うのですが、特に19世紀のロマン派の作曲家にとって、ドイツの文豪ゲーテは特別な存在でした。

フランツ•シューベルトの「魔王」や「野ばら」はゲーテの詩の歌曲ですし、ベートーヴェンの「エグモント」はゲーテの作品の劇音楽です。

そんなゲーテを訪ねて僕も旅したことがあります。2009年のヨーロッパ皮膚科学会(EADV)は、ドイツのベルリンで開催されましたので、僕は学会発表の後、アウトバーンを南下してゲーテゆかりの地であるライプツィヒを訪ねました。ゲーテには、ライプツィヒ大学で法学を学んでいた時期があったのです。

ライプツィヒには、世界最古の民間オーケストラであるゲヴァントハウスがあり、メンデルスゾーンが史上初めてのプロの指揮者(指揮者として生計を立てた)として活躍したとても文化度の高い地域です。

ゲーテも住んでいたこの街の中心部には、アウエルバッハ・ケラーという、ゲーテのファウストの中に実名で登場する地下酒場もあるのです。ファウストがまず最初にメフィストフェレースに連れてゆかれ、庶民の歌を聴き、さらにメフィストフェレースが蚤の歌を披露した場所ですが、そこで食事をした時は感無量でしたよ。

この小説、僕も医学生の時に読みました。現在までにさまざまな翻訳や、手塚治虫さんの漫画にまで引用されていますが、本当に読めば読むほど奥の深い含蓄のあるストーリーですよね。

老研究者のファウスト博士(モデルは実在したらしいのですが)は、中世ヨーロッパにおける最高学位のドクトルを手にした極めて優秀な学者でした。

当時大学に存在した哲学、法学、医学、神学の四つの学問を究めてしまいますが、死を迎える数日前に、「学ぶ前に比較して、自分は少しも利口になっていない」と嘆き、学問の追求だけでは充足感を得られないと、人生に失望しています。

そこに現れたのが黒い犬に扮した悪魔のメフィストフェレース。

悪魔の自分との間に契約を結べば、この世の人生で、今後自分がファウストに伺候して、ありとあらゆる享楽を体験させることを約束する。

その代わり、あの世では、立場を入れ替えて自分に仕えるという契約をしようと言うのです。

この話、実は全くフェアではありません。現世の生を費えた瞬間から未来永劫、悪魔に仕えなければならないわけですから。

ファウストは逡巡しますが、あの世のことなどどうでも良いと考え、ついに死後の魂を売る契約をしてしまいます。

契約をした後、メフィストのアドバイスに従って、自らの若い肉体と、美しい娘グレートヒェン(マルグリート)を手に入れ、人生の中での「最も美しい瞬間」を追い求めるファウスト。

しかしながら、この物語は、悲劇的な結末を迎えるのです。

この老ファウストの物語に影響を受けた多くの作曲たちが、数多くの曲を作ります。

フランツ・シューベルトのリート「糸をつむぐグレートヒェン」

フランツ・リスト「ファウスト交響曲」

ロベルト・シューマン「ファウストからの情景」

シャルル・グノーのオペラ「ファウスト」(1894年日露戦争の開戦の年ですが日本で初めて公演されたオペラです。)

ムソルグスキーの「蚤の歌(アウエルバッハの酒場でのメフィストフェレスの歌)」

マーラーの交響曲第八番

などがファウストより生まれた楽曲です。

「ファウストの劫罰」の作曲者であるフランス人のベルリオーズもまた、ファウストの物語に心を奪われた一人でした。

ベルリオーズは若かりし頃、「ファウストからの8つの情景」という曲を作曲し、ゲーテ本人にこの楽譜を2部進呈したのです。残念ながらベルリオーズはゲーテから返事をもらうことができなかったようですが、ファウストの素晴らしさを友人であったリストに伝えます。リストはこのファウストを座右の書として何度も読み返します。

約20年後にベルリオーズが「8つの情景」を進化させて「ファウストの劫罰」が完成させると、これを進呈されたリストが作品に影響を受け、「ファウスト交響曲」を作り上げるのです。

この時代の音楽と文学の歴史が長い年月をかけて絡み合い、繋がっているのは、すごいことだと思いませんか?

さて、今回の「ファウストの劫罰」の初日公演ですが、世界的な知名度を誇るダンサーを率いるH・アール・カオス主宰の大島早紀子さんが演出振り付けをされたのです。2007年のリヒャルト・シュトラウスの「ダフネ」のセンセーショナルな舞台を創出して以来の二期会の演出でした。

歌手陣も素晴らしかったとは思いますが、特に「言葉を発しない」ダンスのチームの表現力には、視覚的に圧倒されましたよ。

オペラでは普通ならば、歌手の歌う舞台の上は、単なる背景です。

しかしながら、今回の「ファウストの劫罰」では、大島さん率いる通常の人間には考えられないほど鍛えられた肉体を持った6人の女性ダンサーが、細いワイヤーを使用して、宙に舞う演技を行ったり、階段を転げ落ちる特殊なダンスを行ったりと、オペラの視覚的な新境地を見せて頂きました。

全ての振り付けが、オーケストラのリズムに見事なまでに合致している。

しかも、劇的物語というオペラと交響曲との間に分類されるこの公演で、ソロの歌と歌との間隙のオーケストラの演奏中に、曲にとけ込むように調和した見事なダンスが行われるのには感動しました。

オペラは命を持った生き物ですので、会場の聴衆の盛り上がりや雰囲気によって、テンポも抑揚も変化します。そうした中、その時々の曲に合わせて高度な技術レベルのダンスを、ダンサーにリズミカルに踊らせる。相当な技術と表現力が必要なはずです。

どのシーンも素晴らしかったのですが、マルグリートが昇天するシーンがあまりに美しく目に焼き付いて、忘れられません。

あのような演出は、他では絶対に観れませんよ。本場であちらの歌手陣と共演しても、非常に高い評価を受けると思います。

本当に素晴らしい夜でした。


台湾の美容雑誌に載せて頂きました

ここ数年、アジア開催の学会で講演をすることが多いのですが、今日も以前に取材いただいた台湾の女性美容雑誌の7月号がクリニックFに届きました。

「大美人・BEAUTY」7月号

フラーレンの構造に対しての取材についてでしたが、こんな記事です。

海外の雑誌取材の場合、まれに日本語での取材というケースもあるのですが、質問者の日本語の理解度を聞いているとなんだか不安になって、結局英語での取材に切り替えてもらうことの方が多いですね。

海外で取材を受ける場合は、原本の本を送っていただけることの方が稀なので、今回のように出来上がりの本を見ることができるのはうれしいですね。ただ、中国語なので見ても内容はよくわかりません・・・(苦笑)。

最近クリニックFでも増えてきた中国の患者さんに、今度翻訳してもらおうと思います。


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