NYC(New York City)最後の夜は、メトロポリタンでオペラを鑑賞しました。
ワーグナーの名作「トリスタンとイゾルデ」です。
中に入ると、これまでに出演した演者の写真がずら~っと並んでいて、それはもう圧巻です。
続々と観客が集まってきます。
今回取れた席は一階席の一番前。オーケストラピットの目の前という、時差ぼけも疲労も吹っ飛んでしまいそうな席です。
トリスタンとイゾルデの公演時間は平均して約5時間。夜7時に幕が上がり、終了予定は12時となります。
長い夜になりました。
監督は昨日カーネギーホールでベートーヴェンのピアノ協奏曲を弾いたダニエルバレンボイム。偶然にも彼の演奏と指揮を連日聴くことになったのはラッキーでした。
しかも一番前に座ると、無心で指揮をするバレンボイムの鼻息までが聞こえるのです(笑)。
ダニエル・バレンボイムはアルゼンチン ブエノスアイレス出身のユダヤ人です。
2009年のウイーンフィル ニューイヤーコンサートを指揮することが決まっているほど、現在は世界を代表する指揮者なのですが、もともとはピアニスト。
ちなみにこの写真はこの日の前日、カーネギーホールに飾ってあったのを見つけた、まだピアニストだった若き頃のバレンボイム。
ピアニストとしての名声を確固たるものにした後、指揮者に転向したのです。
ところでこの「トリスタンとイゾルデ」を作曲したワーグナー。彼については、以前のブログ「医者の心とワーグナー」でもふれましたよね。
彼の曲は、ドイツ帝国のヒットラーが溺愛し、アーリア人の文化的優位性を宣伝するのに利用されました。
そういった経緯があり、現在でもイスラエルではワーグナーの音楽はタブー視されています。
ユダヤ人であるバレンボイムは、2001年7月にエルサレムの音楽祭にて、アンコールの曲目で「トリスタンとイゾルデ」の一部を演奏しました。
場内は騒然となり、バレンボイムは非難を受けたそうですが、ワーグナーの美しい音楽には、罪はないですよね。
予想通り、会場から出るときにはなんと翌日になってしまったのですが、素晴らしい舞台に、皆スタンディングオベーションで応えました。いつまでも鳴り止まない拍手と喝采に、出演者も達成感に溢れた顔に、満面の笑みを浮かべていました。
オーケストラは、さすがにちょっと疲れていたようでしたが(笑)。
最後にメトロポリタンの美しいクリスマスツリーを見ながら帰りました。これから数時間、仮眠を取ってJFKに向かい、24時間後には日本にいることになります。