TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

BLOG|ブログ

肝斑のレーザー治療

肝斑のレーザー治療は、国際的にも推奨できないということで以前は統一されていました。しかし先日も書きましたように僕の方でも発表させて頂いたプロトコールの活用や、2005年に発表されたフラクセルなどのフラクショナル・レーザーがこの図のように肝斑を打ち抜くことによる治療が可能となり、アメリカの厚生労働省に相当するFDAでも認可を受けるようになりました。

いわば2005年が「肝斑レーザー治療元年」となったわけです。

2007年には、QSヤグレーザーによるレーザートーニングという方法が開発され、肝斑の治療をレーザーにより行なうことが出来るようになりました。現在この方法はFDAに認可を申請しています。

レーザーで肝斑を治療するためには5つの注意点があります。

1.表皮最下層にあるメラニン色素を破壊できるように、深達度の高い“赤外線域の波長”のレーザーを選択する。

2.メラニン色素を破壊する臨界照射時間(TRT・熱緩和時間)である50ナノ秒以下のレーザーを選択する。

3.均一にレーザーが照射されるように照射径内のパワーが均一なトップハットモードのレーザーを選択する。

4.メラニン色素のみを破壊し、周りの正常皮膚に影響が無いパワーを選択する。

5.目の周りに発生することが多い肝斑は、レーザー照射によって網膜に影響を与えることがあるので、適切なスポット径を選択する。

もちろん、医師の経験は必要ですが、この5つを守るレーザー治療を行なえれば、確実に肝斑を治療することが出来るわけです。

韓国の先生では肝斑改善率100%と発表する人もいます。2005年というターニングポイントを越え、肝斑はレーザー治療が可能になったわけで、これは非常に画期的なことです。美容クリニックはもちろん、美容に携わっている化粧品会社、製薬会社、機械メーカー、すべての方々にぜひこの情報はアップデイトさせておいてほしいと思います。そうしないと、

「レーザーは肝斑に使用してはいけない」

というすこし古い情報のまま、患者さんやユーザーの方々がそれを信じ、せっかく治る可能性のある肝斑をあきらめ、鏡を見ながら毎日溜息をつく女性を増やしてしまうことになりかねません。

日々医療は進化しているなと肌で感じながら、僕自身も毎日診療にあたっています。


肝斑と女性ホルモン

肝斑は30~40歳代に発症し、高齢者にはほとんど見られないことから、まず年齢でその可能性を判別できることが特徴のひとつに挙げられます。

女性ホルモンのバランスに関わるシミの一種なので、妊娠やピルの服用により発症もしくは悪化することがあり、これも肝斑診断のひとつの参考となります。

女性ホルモンの中の、特に黄体ホルモンが関わっているのではないかといわれています。

黄体ホルモンのおもな働きは、子宮を妊娠の準備をさせるように変化させ、月経周期を決めて、もしも妊娠した場合には出産までの間、妊娠を維持させる役目を果たします。

50代後半に入り閉経を過ぎる頃になると、シミが薄くなったりして自然と治ってしまいます。

肝斑はこうして女性ホルモンと非常に深い関係にあり、この疾患に悩む人は30代~50代の女性である、ということが言えます。ただ内服薬などでホルモン・コントロールを図れば肝斑が消えるか?といえば、なかなかこれも難しいのです。

「婦人科にずっとかかっているけれど肝斑が一向に改善される気配がない」

と言ってクリニックに来る患者さんがけっこういますからね。

僕のクリニックでは、肝斑の患者さんに対し、レーザー治療を行っていきます。内服薬と外用薬を併用しながらの治療になりますので、外からも中からも肝斑に対してアプローチできるのです。結果は非常に良いですよ。

明日はこのレーザー治療についてもう少し詳しく書いていきましょう。


肝斑はレーザーで悪化する?

肝斑はレーザー治療で悪化すると言われてきました。実際に他院のレーザー治療で悪化した肝斑の治療に当たることは、今でも少なくありません。

シミがとれるはずのレーザーで、シミの一種である肝斑がなぜ悪化するのか? と言えば、それは

①レーザーの選択を誤っている

②レーザーのパワー設定を誤っている

③レーザーの照射方法を誤っている

この3つが挙げられます。

これまではレーザーによる肝斑へのアプローチに対して決まったプロトコールが存在せず、それによって誤ったレーザー機器を使って、高すぎるパワーで誤った照射方法のまま患者さんの治療にあたっていた医師が多かったのです。そのため肝斑が結果的に悪化してしまう、という事態が起き、いつのまにか

「肝斑にレーザーは禁忌」

と言われるようになってしまいました。

しかしこの云わば「肝斑は禁忌というレーザーの常識」は海外では2005年に覆りました。

以前にも書きましたがアメリカ・レーザー学会で僕の発表した理論によって、「レーザーによる肝斑治療のプロトコール=フジモト・プロトコール」が世界的に認められるようになったのです。アメリカでもヨーロッパでもアジアでも学会に行くといつの間にか僕は

「肝斑治療のフジモト」ということになっていることもしばしばです(笑)。

もう少し詳しくレーザーによる肝斑治療を書く前に、肝斑と女性ホルモンとの関係を次は考えてみましょう。


トランシーノは果たして本当に肝斑に効くのか?

トランシーノの主成分=トラネキサム酸は決して「肌を白くする作用」があるわけではない、「肌の漂白剤ではない」ということを書きました。

これは何を言いたいかと言うと、

トラネキサム酸を飲んでいる間は確かにメラニンができにくくなり、肌がターンオーバーすることで徐々に肝斑の色が薄くなっていきます。

しかし、トラネキサム酸だけで完全に肝斑を消すことができるのか? と言えば実際トラネキサム酸を患者さんに処方している僕のような美容皮膚科の医師は皆きっと

「う~ん、トラネキサム酸だけで肝斑を消すのは難しいでしょうね。」

と答えるだろうと思います。

実は、このトラネキサム酸の用法は国際的にはあまり知名度がなく、先日も韓国の学会でディスカッションしたフランス人医師に、

「アジアでは肝斑にトラネキサム酸を処方するようだが、ヨーロッパでは聞いたことがない。トラネキサム酸がどうして肝斑に効くのか?」

と聞かれました(苦笑)。

僕がクリニックで肝斑に悩む患者さんの治療をする際には、内服薬はあくまでレーザー治療と外用剤を補助するものとして使用します。特殊なレーザーで施術を行うと、肝斑にとても効果があるのです。

ちなみにトランシーノのWEB SITEを見ると、

「肝斑はレーザー治療で悪化すると言われています」

と書いてあります。

これは本当なのでしょうか? 回答はまた次回に。


「トランシーノ」の主成分トラネキサム酸

トランシーノの主成分はトラネキサム酸である、そしてトラネキサム酸はもともと「止血剤」である、ということを前のブログで書きました。

シミの一種=肝斑の治療にどうして止血剤を使うのでしょう? 不思議ですよね。

これは出血→止血のメカニズムを考えていくと良く理解できます。

出血すると血液凝固を促すために「血栓」ができますが、トラネキサム酸にはその血栓を溶かしてしまう作用で知られる「プラスミン」を阻止して止血を助けるという働きがありました。

実はこのプラスミンはメラノサイト刺激因子の一つなのです。思えば、何度もひっかいて出血してしまった部位は、なんとなく色が付いてきますよね。

この「なんとなく色がついて色素が皮膚に残ってしまった状態を「反応性色素沈着症」と言います。

トラネキサム酸は、

1.メラノサイト刺激因子のひとつであるプラスミンを阻害する作用

2.メラノサイトの樹枝状突起形成を促進させるプロスタグランディンE2の作用を阻害するという作用

という作用があります。

つまり、トラネキサム酸を使用すると、メラニンができにくくなるというわけです。別の言い方をすると、トラネキサム酸は決して「肌を白くする作用」があるわけではない。「肌の漂白剤」ではない、ということが言えます。

ここをまずきちんと理解することが非常に重要です。


カテゴリー