パリから帰国したのは先月の15日でした。報告をブログに書くだけで一ヶ月かかってしまった計算になります。
それにしても2008年も海外出張が多い年でした。
8月 カナダ コントロバーシー&カンバセーションズ 学会参加
9月 NY・ボストン ハーバード大学ウェルマン光医学研究所訪問
9月 パリ ヨーロッパレーザー皮膚科学会(ESLD) 学会参加
来月の頭にはイスラエルの出張も控えていますが、今年に入って出張した国は、すでに12ヶ国を数えます。特に9月は月の半分が海外出張でした。
最新医療の、こと1年おきに新しく登場するレーザー治療に関しては、当然、教科書も出ていないですし、実際に学会に参加してディスカッションすることで得られる「生」の知識がとても大切だと思っています。
「こんな話がされていた」なんていう学会の報告書をもらっても、あまり役には立ちません。
カタログ上に出ているスペック表を見ると、理論上は同じ機能があるはずのレーザー機器も、製造会社の技術力によって安定度や効力が全く違うことがあるのです。
また発表、講演するドクターも、企業が用意したプレゼンテーションを使用するときもあり、発表自体が企業寄りのデータになることもあります。
最新鋭の機械を扱うこの分野に関しては、いくら時間がかかっても、現地に足を運び、開発者と、使用者に腹を割って話を聞いて、実際に使用してみることがとても大切なのではないかとおもいます。
患者さんに質問されたり、レーザーの治療効率が悪かったりするときに、ふと、
「そういえば前の学会でそんな話をしていたな」
と思い出すのです。
意識の下に知識が刷り込まれるのでしょうね。
閑話休題
今までもいくつもレーザークリニックに携わってきましたが、代診の医師を入れてしまうと、患者さんとの距離が遠くなってしまいます。クリニックFに来てくれるレーザーの患者さんは、非常勤医師を入れずに、からなず自分で診ようと思ってこのクリニックを作りました。
でも、東京で外来をやりつつ、これだけ出張すると、疲れもたまります。さすがに先月は体力が落ちてきて、先月のパリでは滞在中に奥歯の歯茎が剥けて、なんと血が出てきたのです。
歯茎から出血するとき、歯科医ならばだれでも歯周病を考えるといいますが、医師ならまずビタミン類(特にビタミンC)の不足による栄養不足を考えます。
もちろん単なる栄養不足なら安心なのですが、白血病などの血液疾患の初期などでも歯茎の出血が起こります。
血友病や、紫斑病、血小板減少症、肝硬変のように、血液凝固にかかわる因子が低下している場合も起こります。もっと悪いと歯肉癌などの悪性腫瘍の可能性もあります。
今回は栄養が問題だったらしくて、出血は帰国したらすぐに治りましたが、海外でそういったことがおこると、たとえ医学の知識を持っていたとしても、びっくりしますよね。
そんなこともあって、実は今月、北京で行われる中国形成外科学会で招待講演を依頼されていたのですが、初めて国際学会の講演依頼をお断りしてしまいました。この10月は、久しぶりに一度も海外出張のない月を迎えているのです。
こうしてそろそろ紅葉の季節を迎える日本で、日本ならではの食事が毎日続く生活を送っていると、
「やっぱり日本はいいところだな」
と改めて感じています。