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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)

根拠のある正しい治療のために僕が指針としていることについて、ちょっと前のブログを久しぶりに読み返してみました。

EBM:evidence-based medicineのレーザー医療への応用 なぜ最新医学論文を読むことが大切か?

よろしければ、ご一読ください。

※※※

レーザー皮膚治療は、西洋医学の中でも比較的新しい分野です。

レーザーでシミやあざを取っていた「点の治療」をしていた時代が20世紀。

その後、肌質を若々しくしたり、肌の透明感を上げたりと、「面の治療」をするための機器が21世紀になって数多く開発されました。

しかしながら、この10年で新しく開発された21世紀の機器に関しては、厚生労働省の認可が遅いために日本国内の大学病院などで最新の機器を使用することができません。

ドラッグラグやデバイスラグの問題は、以前もこのブログで伝えていますよね。

日本の場合、通常最新機器はまず大学病院に導入されて医師のトレーニングが行われます。

すなわち、レーザー治療はこの日本において医療分野の中で唯一大学病院でのトレーニングが難しい分野である、ということになります。

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一般的な診療を行う上で

「根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)」

という考え方があるのをご存知でしょうか?

「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」

“conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence”

医療のあり方をさす考え方です。

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特に新しい西洋医学を治療に応用するにあたり、人体の生理反応や治療の効果や副作用には必ずしも再現性が認められず、同じ治療でも患者によって結果は異なることは常に指摘されてきました。

多くの治療法の中から、目の前の患者さんにとって最も最良の結果を生むためには医学的な根拠が必要です。

こうした根拠には、従来「生理的原則や知識」が重視されてきました。

さらに、それを補うものとして「医師の個人的な経験」や、「権威者による推奨」が治療法の選択根拠として用いられてきたのです。

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仮に、低出力レーザーを使用した肝斑治療を挙げて考えてみましょう。

生理学的原則や知識として

「表皮下部に存在する肝斑を取り去るためには、特定の波長の低出力レーザーにより、表皮下部のメラニンを破壊する治療が有効であろう。」

として治療法が考えられます。

この事実を証明するために

①医師の個人的経験:

「私の経験では、この波長のレーザー治療は肝斑の色彩を減らすようである。同僚もそう言っている」

または

②権威者による推奨:

「この治療法は当大学で100例以上の良好な成績を収めており、関連病院にも勧めている」

などを根拠にして、一世代前までは西洋医学の治療が行われてきたのです。

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しかしながら、この数十年で、医療や治療を行うにあたり、主に書籍・学会誌・論文発表を根拠にして、客観的な経験知を共有することがいかに大切なのかが、次第にわかってきました。

1980年代以降は米国国立医学図書館による「MEDLINE」など医学情報の電子デー タベース化が進み、また疫学・統計手法の進歩によりできるだけバイアスを排した研究デザインが開発されるようになりました。

そうしたうちに、治療法などの選択となる根拠は

「正しい方法論に基づいた観察や実験に求めるべきである」

という主張が、カナダのマクマスター大学でDavid Sackettらにより提唱されました。

1990年にGordon GuyattによりEBM (Evidence-based Medicine) と名づけられました。

EBMという言葉の文献への初出は1992年ですので、もう20年以上前ということになりますね。

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こうした考えで、もしもレーザー治療を患者さんに、根拠に基づいた医療つまりEBMを用いて説明する場合。

「医学誌のレーザー治療ジャーナルの2004年10月刊行の論文によれば肝斑の治療方法における、治療法A(高出力レーザー治療と薬剤補充療法)の250件と治療法B(低出力レーザー治療のみ)の250件の比較調査を行った。

治療法Bの方が肝斑の逓減率は15%ほど低い結果が得られた。

ただし同雑誌2008年の4月の論文における追跡調査では50歳以上の患者の場合は逆に治療法Aの方が5%ほど完治率は低いとの結果である。

この患者は高齢であるので治療率の観点からは治療法Aが最適な選択となりうる。

ただし治療法Aは薬剤補充療法であり、これには他の副作用が報告されている。

よって治療法AおよびBの治療率およびもろもろの副作用の可能性を患者に掲示した。

最終的に治療法を選択するのは患者である。」

ということになると思います。

クリニックFにおける僕の立場は、実際の治療を行うエンジニア兼ドクターであると同時に、レーザー治療のコンシェルジュでもあります。

患者さんの肌を診断し、問題を解決するために、

僕は日々

「最新英語の論文を読み」

「レーザー機器を購入し」

「機器のメンテナンスをする」

こうしたことでエビデンスのある治療を選択していただけるようにしているのですよね。


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