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藤本院長のブログ(新国際学会周遊記)

放射性ヨウ素の除去

2011年04月13日(水) カテゴリー:医療

地震も続き、原発・プルトニウムの問題も依然緊張が続いています。患者さんからは飲料水や農作物、海鮮物などについての質問も受ける機会がしばしばあります。

クリニックFで採用している日本トリムの整水器で、ヨウ素の除去効果を示すデータが得られたことが4月2日の読売新聞に掲載され、それについての御質問なども頂きました。

こちらが実際の記事になります。

Photo

担当の方による、この記事にはないもう少し細かい情報をここでご紹介しておきます。

「放射性物質については、厚生労働省が3/19日に水道局宛に出した文書内で、活性炭にヨウ素131を除去できる可能性があるとする指摘があった。しかしながら、素材メーカーも含め民間でこれに対するデータを持っている所は無かった。

厚労労働省見解の追試として、日本トリム社では取り急ぎ福島県いわき市内のユーザー宅2軒にご協力いただき、水道水と整水器通水後の水を採水し、分析を日本食品分析センターに依頼した結果。」

ということのようです。

もちろん放射性物質は浄水に関して想定外のものであり、自然界に微量にしか存在しないセシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどは取り扱いも出来ない為、試験自体することが困難ですが、理論的には活性炭を使用して微量元素を吸着させるだけでも、飲料水の安全度は増しそうですね。

東京都や千葉県の水道水や、一部の農作物、魚介類に放射性ヨウ素131が含まれていたという情報が出てから一月あまりが経ちました。

ここで改めてヨウ素(ヨードとも言う)とはなんであるか復習しておきましょう。

ヨウ素とは、原子番号53番。ハロゲン元素のひとつです。

004

これは以前のブログでもふれた、「世界で一番美しい元素図鑑」のヨウ素の画像です。クリニックFにも英語版と日本語版の二冊が備品として置いてあります。

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ヨウ素自体には同位体が37種類あることが知られていて、ヨウ素127のみが安定型です。

甲状腺ホルモンの構成成分として、人間にとって必要な微量元素であり、体内には約25mgが存在します。食物としては海藻類に多く含まれていることは、このひと月でよく理解された方も多いかと思います。

甲状腺は、ヨウ素が体内に入ると、甲状腺ホルモンを作るために、必要な量を取り込み蓄積する作業をします。

通常のヨードが甲状腺に取り込まれた場合、30日程度で半分の量が体外排出され、甲状腺に取り込まれないヨウ素はその日のうちにほとんどが出て行きます。

放射性ヨウ素とは、放射線を放射するヨウ素で、数種類あります。特にヨウ素131(半減期約8日)、ヨウ素133(半減期約21時間)は、ウランの核分裂によって生成される放射性ヨウ素です。

半減期が長いヨウ素131のほうが放射線を放出する時間が長いといえます。

セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど他の放射性元素の体内動態を考えると、基本的には体内代謝経路に関わりません。一旦筋肉のような血流の多い組織に移行することはあれ、ほとんどが尿から排泄されます。

これに対してヨウ素は、沸点も低く、気化して大気中に広範囲に拡散しやすい上に、呼吸や飲食により体内に吸収されやすいという性質があります。

原子力施設の事故で放出されたヨウ素131が体内に吸収されると、甲状腺で甲状腺ホルモンに合成・蓄積され、その後長期間にわたって体内被曝をしますので注意が必要です。

チェルノブイリ原子力発電所の事故では、癌患者が増えるだろうと予測されていたのですが、結果的には事故の5年以上後に統計学的に優位に増えたのは、特に幼児だった子供たちの甲状腺癌の発症率だけでした。

甲状腺癌の予防のためにヨウ素剤を飲むのは、吸収された放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積される前に、正常なヨウ素で甲状腺のヨウ素必要量を飽和させるという意図があるのです。

行政は原発の事故より近い地域より、一刻も早く、特に小児を優先してヨウ素を予防的に飲ませるといった、二次的被害を防ぐ対策を直ちに練るべきだと思います。

一方で、医学的にはこうした放射性ヨウ素を短期間に使用することで、甲状腺癌治療や甲状腺機能亢進症の治療が行われています。同位元素のヨウ素123やヨウ素131は単一光子放射断層撮影(SPECT)に、ヨウ素124はポジトロン断層法(PET)に用いられています。

このような治療目的の場合、なるべく甲状腺に放射性ヨウ素を集めたいので、治療前の患者さんには、昆布や海苔などのヨウ素の摂取を控えてもらいます。

放射性ヨウ素の経口摂取を防ぐには、花粉症と同様な対策が必要となります。特に手洗いとマスクは大切です。


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