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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

旧脳に作用する音楽とアロマセラピー②

前回のブログで、

「クリニックFは、痛くないレーザー治療を実践するために様々な工夫を凝らしている」

といったようなことを書きました。

そして、その工夫のひとつがこだわりのBGMであり、もうひとつがアロマセラピーの採用である、と。

「クリニックFでアロマセラピーを採用している理由は、スパ的なリラクゼーション効果を求めてではなく、アロマセラピー・・・香り/匂いが旧脳に及ぼす痛みへの作用を考慮してのことである」

とも書きました。

このあたりについて詳しく今日は書いていきたいと思いますが、まずそもそも「痛み」とは何か、ということをクリアにしていきましょう。

世界疼痛学会(IASP)で決定された、「痛みの定義」という ものがあります。それによると

「「痛み」とは、実質的、または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような経験から表現される不快な感覚、または情動経験をいう。」

と定義されています。

「情動経験」・・・日常生活でなかなか聞きなれない言葉ですが、“情動”とは短時間で強く作用する脳とホルモンや免疫系、生体物質における興奮状態としての「生理反応」であり、わかりやすく定義すると「感情の動き」ということになります。

つまり、痛みとは「感覚」であると同時に、それに伴う「感情の動き」でもある、ということなのです。

この「情動」の部分に、音楽と香りが深く関わってきます。

感情の動き=「情動」を司っているのは、大脳辺縁系を中心とした旧脳です。

医学的に説明すると、人が外界を認識する感覚機能――いわゆる人間の「五感」――は①視覚・②聴覚・③嗅覚・④触覚・⑤味覚ですが

このうち①視覚、④触覚、⑤味覚は脳の「大脳皮質の連合野」と呼ばれる場所で、過去の記憶を含めた情報が補われることによって脚色・肉付けがなされ、初めて情報消化される感覚です。

一方で②聴覚と③嗅覚からの感覚は、情動を司る大脳辺縁系に直接刺激を与えます。

喜びや悲しみ、恐怖や感動などに対して、より強い影響を与えるのです。

日常の中で触れる音や匂いには様々なものがありますが、脳に心地よい音をリズムやハーモニーにしてつなぎ合わせ、旋律(メロディ)となったひとつの音楽として「音を楽
し」んだり、草花や樹木の香り、磯の匂い、懐かしい母親の味・・・など、深い呼吸と共に「香りを楽しむ」と、脳内の複雑な神経ネットワークに、さらに大きな刺激が与えられます。

この大きな刺激が、痛みの刺激を上回った場合。

つまり耳に入るリズムや旋律、鼻腔を刺激する香りにすっかり心奪われた場合。

痛みがその瞬間消えることがあるのです。

専門的な言葉で言うと、音楽や香りの刺激が痛みの刺激を上回って、痛みを「マスク(覆う)」してしまうのです。

音楽の旋律による聴覚刺激や、香りの刺激による嗅覚刺激に脳が集中したことで、痛みを含めた音楽以外の情報刺激に対して、脳が感じづらくなるというわけです。

クリニックFで痛みを緩和する目的で、音楽やアロマセラピーにこだわっている理由がお分かりになっていただけましたでしょうか?

エレベーターが開き、クリニックFの扉を開いた瞬間から、痛みを感じづらくなる仕組みと工夫が随所に施されているのです。


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