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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:ドラッグデリバリー

インドはバンガロールより

今日はインドはバンガロールより、医薬の毒性試験を専門にやってる企業のディレクターがクリニックFに見学に来ました。

多くの新素材の試験は、日本では動物愛護の関係でやりにくく、また高額になっていて、こうしたビジネスの依頼はまだ価格が安いインドなどにいくんですね。

国内のロート製薬の試験を受注したところなのだそうです。

僕も医学と薬学でそれぞれ博士号を取りましたので、新薬のネガティブな面の試験の難しさは知っているつもりですが、こうした分野を引き受けていくのは、まさに理系リテラシーの高い、理系大国のインドですね。

日本も負けていられませんね。


Drug Delivery System “合成高分子による細胞機能制”

僕の薬学博士の専門であるドラッグデリバリーシステムの学会誌。

今月の特集は“合成高分子による細胞機能制”です。

合成した高分子で細胞挙動を制御する研究は近年とても進んでいて、トピックスは以下の通り。

中でも光応答動的材料などはレーザー医療とも直結して興味深く読ませていただきました。

アンチエイジング医療や美容医療にも応用されてくるでしょう。

up to dateしながら知識を蓄えています。今後が楽しみですね。

1. 温度応答型生分解性インジェクタブルポリマーの細胞治療への展開

2. 生きた細胞内の相転移・相分離現象を介した細胞機能操作へ

3. 生体機能化ポリマーによる免疫細胞機能制御

4.生体親和性リン脂質ポリマーを基盤界面とする細胞操作技術

5. 光応答動的材料の開発と細胞移動研究への応用

6. ナノバイオ界面水制御による細胞接着性/非接着性合成高分子の設計


幹細胞培養上清液で死亡例 研究者「エクソソームの投与で何かを治したと人で実証された例はない」「身体にリスクも」 “若返りや美容効果”うたうクリニックに警鐘

どんな薬にも功罪あります。

新しい薬にすぐに飛びつくのは危険。

こうした報告は氷山の一角ですね。

ようやく報道されてきた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fb51f3e64792fc987564fefcffd91b7c9b31f376?source=fb&fbclid=IwAR05vk6hIUEol9OCbHwJsi-jrbEw4Yd8ngdZTJyRfWQ2w0ep13AYGXlPzB8


再生治療について

最近、患者さんから、エクソソームやら幹細胞上清液やらの再生治療ってどうなのですか?と良く聞かれるようになりました。

医師の間でも知識の差がかなりあるように思います。

僕も物理学、化学、生物学の分野で3つの博士号を持った唯一の日本の医師ですので、ちょっとこちらに、現在のアカデミックな見解をまとめておきますね。

再生医療のカテゴリーは多くあると思いますが、確かに多くの魅力を持っていることは事実です。

自分の感覚だと、特に美容医療の場合、すべてがまだ実験段階でどんなリスクが紛れているか全くわからず、クリニックFでは、静観中です。

ただし、クリニックFでは写真の通り、細胞培養用の冷蔵庫も機器も用意して、大学病院などとの共同研究は行っています。

さらに、レーザーとのコンビネーション治療については、すでに昨年に英文論文 ( Lasers Surg Med. 2022 Oct;54(8):1167-1176. doi: 10.1002/lsm.23590. Epub 2022 Aug 2. PMID: 35916125) も発表しています。

こうした研究の中、「分化能」と「自己複製能」がある幹細胞に限定すると、三つに分けられます。

1)胚性幹細胞(ES細胞) 受精卵由来

2)人工多能性幹細胞(iPS 細胞) 細胞由来

3)体性幹細胞(成体幹細胞) 生体由来

です。

1)胚性幹細胞とは、「胚」からつくられる多能性幹細胞です。

受精卵から分離し、あらゆる細胞に分化できる能力(多能性)を持っている細胞です。

一方で、受精卵の成長過程から胚を抽出しているために、倫理的な問題で慎重な対応も求められています。

2)京都大学の山中伸弥教授(当時)が、ES 細胞のようにあらゆる細胞に分化できると能力を持った細胞を作り出すことに成功し、ノーベル賞を受賞したのはご存知だと思います。

iPS 細胞は患者自身の皮膚の細胞から作り出すことができるので、ES 細胞が抱える拒絶反応や倫理的問題を解決できる可能性がありました。

しかしながら、日本政府は 2019 年、iPS 細胞の研究支援資金の打ち切りを発表しました。

なぜならiPS 細胞を作成時に発癌に関連する遺伝子を用いているため、細胞が癌化してしまうリスクがあるということです。

正常細胞であっても癌化のリスクはありますので、研究が進んでもこの問題を解決するのは難しく、実用はかなり先ではないかと思っています。

3)体性幹細胞は、成体幹細胞とも言われています。

体性幹細胞培養には自分自身の細胞を用いることができ、採取も容易であるため、すでに実際の治療に用いられているものもあります。

倫理上生き残るのはこの分野だけでしょうね。

そうなると自分の臍帯血を保存したり、自分の体内から幹細胞を増殖されるペプチドの研究などが進むと未来があるでしょうね。

一方でES 細胞や iPS 細胞に比べると、分化できる細胞は限られます。

つまり、脂肪組織から取ったものは、脂肪にしかなりません。

歯髄から取ったものは、基本的に歯髄にしかなりません。

その用途で用いられている場合は良いと思いますが、例えば、外胚葉由来の神経組織や、皮膚組織はそもそも末梢に胚細胞が存在しておらず、再生しません。

これを点滴で入れることで、身体が若返るかどうかはご自身で判断してください。

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次に美容目的での再生治療について。

色々なマーケティング用語がありますし、多くの宣伝があると思いますが、

1)幹細胞
実際に幹細胞自体を化粧品に配合することは不可能です。
幹細胞は非常にデリケートな「生き物」であり、外に出せばすぐに死んでしまいますし、たとえ、CPC(細胞培養加工施設)の環境下でも細胞の生存は 48 時間が限界です。
それ以上の保存となるとマイナス 196℃以下(液体窒素)での保存が必要です。CPCは価格も維持も高額で、作れるものも少量なので、コストが合わないでしょう。

2)培養上清液
培養上清液は、幹細胞などの増殖に用います。細胞ほどではないにせよ、当然のようにエクソソームやペプチドは壊れやすく、 1 年以上の保存にはマイナス 80℃の冷凍庫が必要です。
また、すべてのエクソソームや、ペプチドが良い働きをしてくれるとは限りません。体内にある癌細胞ですら、エクソソームを放出しています。功罪あるでしょうね。
冷蔵庫保存ができない場合は、フリーズドライにし、パウダー化するしかありませんが、これらは、価格においても、実際の医療現場では1cc あたり約 1 万円で売買されていますね。
その場でフリーズドライを溶かして使用する化粧品ならば、ちょっとは信憑性が上がりますが、いずれにせよ、500ダルトン以下の物質でないと表皮下には入りません。となると、大きさ0.1nmぐらいですかね。ナノ化された粒子は50nmぐらいですから、お考え下さい。

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医療は進化するものですし、検証は必要だとは思いますが、日本は、特にこうした新しいものに対する法律は後手後手に回ることが多く、抜け道が沢山あります。

マウスで数例実験したのちに、日本人に使用されていることも良くあります。

科学雑誌のNatureから日本のやり方は酷いと指摘を受けてしまっているような状況です。

なんとかワクチンもそうでしたよね。

そう考えると、レーザー治療も、最初は癌化するかなど言われていましたが、1980年代から臨床利用されてから50年近く。

かなり安全であることが確認されていますね。

美容医療と言っても、医師免許を持った人間は医療の一端を担うわけですから、エビデンスがあり、安全な治療を選択してゆきたいものです。

 


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