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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

ピコ秒レーザーのメリット PICOSURE PICOWAY ENLIGHTEN

米国レーザー医学会では数多くのレーザーが発表されますが、今年も引き続きトピックの一つはピコ秒レーザーと言えるでしょう。

IMG_2641 レーザーを選択するにあたり、波長とともに大切なファクターにパルス幅があります。

機器の開発とともに

〇ミリ秒(1/1000秒) 〇マイクロ秒(1/1000000秒) 〇ナノ秒(1/1000000000秒) 単位でレーザーの照射検証が行われてきました。

特に、ナノ秒発振が可能で数kHzの繰り返し周波数で動作するものを「ナノ秒Qスイッチレーザー」と言います。 ナノ秒レーザーの利点としてあげられるのは、従来より技術が確立されており、ツールとしての信頼性が高いという点、かつランニングコストが抑えられる点が挙げられます。

一方、昨年よりナノ秒からさらに3桁下の秒数で発振することの可能なレーザーが皮膚科形成外科領域にも登場しました。 それが、ピコ秒(1/1000000000000)発振の可能なレーザーです。

このピコ秒の話をするために、米国レーザー医学会の重鎮の一人、ロバート・ワイス医師が話した内容とそれに使用していたスライドが興味深かったです。

IMG_2681

もしもロングパルスアレキサンドライトレーザーのパルス幅をニューヨークからロサンジェルス間の距離と想定すると、

■Qスイッチアレキサンドライトレーザーは大型トラックの荷台の大きさ。 それに対し

■750ピコ秒レーザーはコーラのボトルの大きさに相当する、と仰ったのです。 IMG_2646 これを聞いて僕はうーんと唸ってしまいました。

自分が関わっているレーザー/光治療という学問が、近未来的なものであるという認識はこれまでもありましたが、こうして土地とトラック、コーラという全然違うもの、完全に異なるものを出さざるを得ないほど、比較することができない、単位も桁も全く違う、これまでの想像や常識を超えた物差しでもって次々に進化を遂げていく、それこそが僕の選んだ研究対象であり、学問だということなのです。

未来へ未来へとレーザー医療が先に進んでいく姿を、今回も目の当たりにしました。   こうして話題と注目を集めるピコ秒レーザーですが、具体的な機器を挙げると

昨年CYNOSURE社で販売が始まったPICOSURE(ピコシュア)755nm

本年より追従した

CUTERA社のENLIGHTEN(エンライトン) 1064/532nm

SYNERON/CANDELA社のPICOWAY(ピコウェイ) 1064/532nm

といったものが現在市場に出ていてある程度定評を確立しつつあるものと言えます。

エンライトンの最大出力は 600mJ (1064nm) 300mJ (532nm)

パルス幅 750ps

ピコウェイの最大出力は 400mJ (1064nm) 200mJ (532nm)

パルス幅 450ps (1064nm) 375ps (532nm)

ですので、ピコウェイのパルス幅は他社に比較して短く、魅力がありますね。

以前医療レーザー開発者と、理論上最適なピコ秒の幅を想定した際には、 380-420ps のレンジで 1000mJの出力が確保できれば理想だと聞いたことがありますので、工学的にはもう少し発展を待ちたいところではあります。

ピコ秒などの短パルスレーザーであれば、瞬間的にとても高いピークパワーを持つため、多光子吸収が発生し、材料の電子を励起させ直接原子結合を分解します。

さらに、熱が拡散する時間よりパルス幅が短いため、熱影響が広がりにくい。 工学的にも、ピコ秒レーザーによる加工は、長いパルス幅を持つレーザーに比べ、材料を瞬時に蒸発させることにより溶融物の発生を低減させます。

そこで材料に対して熱影響の少ない、精密な加工ができるのです。

医学的にピコ秒があると唯一メリットがあると発表されているのは、刺青の治療のみ。 期待していた肝斑の治療については、もう少し議論が必要なようです。

こちらシネロンキャンデラ社のピコウェイ IMG_2863

IMG_2865 長年キャンデラの機器開発に携わっている工学博士のDr.Bhowalkorと写真を撮りましたよ。 ピコウェイの開発秘話なども聞くことができましたよ。


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