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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

なぜレーザーを照射すると肌が変わるのか? 最新の知見

おはようございます。

10月25日金曜日。今日の東京は朝から深い霧に囲まれているようです。

しとしとと降り続く雨。この後の台風が気になりますね。

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クリニックFは肌質を改善するためのレーザー治療を専門に行っています。

日本ではまだまだ、レーザー治療をしたというと、シミやあざを取るといった治療を思い浮かべる方が多いと思いますが、欧米では違います。

これは、肌質を若々しく再生させるという意味を持つ英単語

「Skin Rejuvenation」

「スキン リジュビネーション」

という言葉があるために、肌質を入れ替えて、綺麗に若々しくするという概念がすぐに理解できるのだと思います。

このところ著作をまとめる予定があって、少し難しいですが、レーザーがどのように生体に影響するのか、レーザーの細胞や細胞内レベルへの影響の、いわゆるミクロの話を書いてみようと思います。

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現在では、レーザーのほかに、光(IPL)、LED、RF(ラジオ波)、超音波など多くの電磁波が肌を変化させるエネルギー源として利用されていますが、なぜレーザーが肌に効果があるのか理解していない人も多いと思います。

レーザー光線の生体に対する作用はいくつもあるのですが、皮膚科形成外科領域では

①組織を破壊し、入れ替えを促進する強い電磁波。

②組織を活性化して、再生を促進する弱い電磁波。

を、患者さんの肌に合わせていかに上手く使い分けるかという点に集約されます。

特に②の働きがこの10年でより明確にわかってきました。

さらに、①と②の要素を併せ持ったフラクショナルレーザー機器の開発も進んできました。

肌に特定の波長や条件のレーザーを打ち込むことによって、肌を若返らせることが可能になってきたのです。

これには大きく四つの役割があります。

それらは、

1)ATP(アデノシン3リン酸)合成の刺激

2)RNA合成の刺激

3)炎症に関するサイトカインの合成を修飾

4)細胞膜カルシウムチャンネルと細胞間情報伝達の反応開始

です。

この中で特に重要な役割をしているのは、1)です。

ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー発生源であり、生体の発電所のような役割をしていますが、主要な機能は、生体内のすべての細胞反応に必要なエネルギーとなるATPの産生です。

ATP
の合成にはミトコンドリア内膜で多段階の反応で進められるのです。

過去の研究にも

○650nm前後の赤色レーザーとLED光線はミトコンドリア機能を改善し、
ATP合成を70%増加する。

○光線はチトクロームオキシダーゼ産生とチトクロームCオキシダーゼによる電子伝達の増強によりATP産生を促進する。

などの報告がなされており、「レーザー照射の主な役割が、ミトコンドリアでのアデノシン三リン酸(ATP)産生の促進すること」により、細胞活性を上げる。

ことが報告されています。

次に大切なのは、2)です。

もともと生体の細胞の核には、コラーゲンやエラスチンを作り上げるための情報が存在します。

しかしながら、それらの遺伝子は年を追うごとに発現しなくなるのです。

そうした遺伝子を再度発現させるための「トリガー」としてレーザー光を使うのです。

○レーザー光線療法は、プロコラーゲンをコードするmRNA(メッセンジャーRNA)産生によりコラーゲン産生が促進され、組織治癒を強化すると考えられている。

○赤色レーザーは、コ
ラーゲン合成とmRNAを増加し、プロコラーゲン合成を3倍以上増加する。

ことが報告されています。

ここまでは高校レベルの生物を勉強した人であれば理解が出来るかもしれません。

3)については、医学的な専門知識が少し必要です。

レーザー照射は炎症を制御し、プロスタグランジンF2a(PGF2a)、インターロイキン1α(1L-1α)とインターロイキン8(IL-8)の増加やPGE2やTNF (tumor necrosis factor) αの減少に関与することがわかっています。

○レーザー・光線によるATP産生増加
は多くの臨床効果がありとくに組織治癒を促進する。

○プロスタグランジン均衡の変化は血流を増加させる。

○IL-1αやIL-8放出は、ケラチノサイト遊走と増殖の誘導をする。

○赤色(He-Ne)レーザー照射はTリンパ球、
Bリンパ球を活性化、細菌への結合能を増強する。

○レーザー照射は肥満細胞の脱顆粒を引き起こす。

○マクロファージは線維芽細胞の増殖のためのサイトカインの産出と放出を促進する。

○レーザーと赤色と赤外線域のLED光線も、線維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞など組織治癒に関する多くの細胞の増殖を刺激する。

という報告があります。

生体内には数多くの色素が含まれています。

光の波長によっては特定の色素に吸収されますので、生体細胞内のミトコンドリアその他の反応器官に必要光量が届くかどうか、それが光の効果を左右するのですよね。

この光は、強すぎてしまえばサイトカインの生成を抑えてしまいます。

弱すぎると、反応が起こらない。

この辺りは臨床経験から学ぶことしかできません。

しかしながら、一方で臨床結果より得られた学術的な理論の構築も必要です。

このように進歩がある分野は日々の勉強が大切だと、いつも痛感させられますね。


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