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藤本院長のブログ(新国際学会周遊記)

キュテラ社のピコ秒レーザーエンライトン

キュテラ社のピコ秒レーザーエンライトンの座長職終えました。

picoレーザー理論の話も少々させて頂きました。

ありがたい事に満席でした。

学会_1

学会_2

学会_3

学会_4

演者のJUNクリニックの菅原先生と。

レーザー分野では査読の入った英文論文を書ける数少ない優秀なドクターです。

卒年は僕と10年ずれてるんです。驚きですね。


ピコ秒レーザー:光音響効果 と 光機械効果の違い

ピコ秒レーザーが光熱作用ではなく、光音響作用が起こり、標的物の破壊理論が変わるのでは?

と予測されたことについて、その理由を述べます。

Qスイッチレーザーが皮膚に照射された場合に起こる反応は

光熱作用 と 光機械作用

に分けられます。ハルス幅が長ければ光熱作用の影響が強く出て、パスル幅が短ければ光機械作用の影響が多く出るとお考えいただいたらいいと思います。

光機械作用の中には、パワー密度が上昇することにより、光音響効果、蒸散、光アブレーションという三つの作用が段階的に起こります。

パルス幅がナノ秒以上のレーザー機器では、レーザー光が標的物質のメラニン色素に吸収された際に、熱によって色素が破壊されたり、放熱のヒーターになることがわかっています。

このために同じ波長のレーザーにより脱毛が出来たり、シミが取れたりするのです。
ナノ秒レーザーによって、照射されたターゲットに吸収された熱が周りの組織に拡散するのに要する時間(thermal relaxation time: 熱緩和時間)の半分より短い時間に照射された場合は、組織が破壊される方向に働きます。

この、熱緩和時間はクロモファーを含む構造体のサイズで決まります。

一方、ピコ秒以下のレーザー機器で照射された場合は、

光機械作用のうち、光音響効果が強く作用されます。熱ではなく、衝撃波によりメラニン色素を破壊することができます。

1)メラニン色素を構成する分子が光子を吸収して、原子の格子振動が分子間を伝播していく過程で、熱エネルギーに変わり、メラニン顆粒全体の温度が上昇していく。

2)メラニン顆粒の内部のH2O、つまり蛋白と結合している結合水が温度の上昇に伴い膨張、気化する過程で、メラニン顆粒内部から外側に向けて、応力(圧力)が発生する。

3)これによってメラニン顆粒が破壊される時、この応力が緩和されたことになる。

したがって、照射開始時から応力破壊が起こるまでの時間を応力緩和時間と考えるのが普通。

ちなみに応力破壊時の圧力波は、音速で伝わると言われているので、応力緩和時間とはメラニン顆粒の半径を音速で割った値という方もいらっしゃるが、そもそも応力はメラニン顆粒の中心から発生して外側に伝わるわけではないし、メラニン顆粒爆発までの時間は温度の上昇スピードに依存するのは自明です。

この時、応力緩和時間が討論に出されることが多いのですが、ターゲットに到達するエネルギー密度、波長できまる吸光度等から、実際には個々のメラニン顆粒の温度上昇スピードが異なるので一義的に決定されるものではないために、熱緩和時間のように固定値ではありません。

1

実際にどのピコレーザーを購入したらよいのか?

とよく相談されますが、僕はまずFDAの認可がされている上記三社(シネロンキャンデラ社、キュテラ社、サイノシュア社)の米国3メーカーであれば、どの機種を購入してもよいのではないかと思っています。

ちょうど一眼レフのカメラを買う時に、キヤノンにするか、ニコンにするか、ソニーにするのかという判断程度のものだと思います。

2

ピコ秒レーザーが必要なクリニックは、

1) 刺青を治療するクリニックは文句なしに買い

2)シミに関しては、効果というよりは、ダウンタイムの減少 (生成する空胞が小さい)

3)機器としての安定性の高い、壊れにくい機器を選ぶ

4)買収されていないメーカーを選ぶ
という感じで機器を選べばよいのではないかと思います。


どの会社のピコレーザーを買うべきか?

2013年に米国市場にピコ秒レーザーが導入されましたが、僕はピコ秒という技術にあまり新規性を感じなかったため、クリニックにはすぐに導入するという結論に至りませんでした。

工学的なレーザーではピコ秒の上のフェムト秒レーザーも存在しますし、あくまで、ピコ秒レーザーは皮膚医療レーザー技術の進化過程の改善であって、革命ではないと思ったのですよね。

ピコ図

ピコ秒レーザー自体は90年代に機器とともにいくつかの報告症例が論文化されています。
1996年 Kilmer 800nmのTi: Sapphire Laser  100フェムト秒 100ピコ秒 400ピコ秒 にて刺青除去検証(猫の皮膚)
1998年 Ross 1064nm Nd:YAG 35ピコ秒 10ナノ秒 との刺青比較 (ヒト)黒色の刺青のみピコに有意性あり

しかしながら、機器の安定性が低かったため、実用化には至りませんでした。

ピコ2

事実上のピコ秒レーザーの解禁となった2013年には、サイノシュア社、キュテラ社、キャンデラ社の米国3社のピコ秒レーザーが揃い、レーザー医学会や皮膚科学会でも大変大きな注目を浴びました。

当初ピコ秒レーザーが注目を上げた理由、つまりレーザー技術者たちの目論見は3点あります。

1)カラーブラインドで刺青の色素が取れるのでは?

2)肝斑に対して画期的な対処法になるのでは?

3)光熱作用ではなく、光音響作用が起こり、標的物の破壊理論が変わるのでは?

という点でした。

まず、

1)のカラーブラインドについては、2015年米国で、高額な機器を購入したのに、カラーブラインドで刺青が取れなかったと医師がサイノシュアを訴訟したという事件が起こりました。

実際にはあまり効果がないことがわかってきました。

その証拠に 1064 / 532nm 755nm以外の第三の波長を各社が模索しているという現状があります。

次に

2)の肝斑治療に関しては、実際のところ、キラーコンテンツにはなりえなかったというのが現状です。肝斑のメラニン粒子は、単に色素粒子が小さいわけではないのです。

ピコ秒レーザーを照射した場合、ナノ秒と比較して、表皮内には小さい空胞(LIOB Laser Induced Optical Breakdown)の出現をみますが、これは、分子乖離ではなくて、水が水蒸気になった際に起こった現象です。

3)に関しては少し専門的な話になりますので、次回まとめて書きますね。


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