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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カテゴリー:北米 サンディエゴ編

米国レーザー医学会ASLMS2017 サンディエゴ 寄稿その2

米国レーザー医学会ASLMS2017 サンディエゴ 寄稿その2

今回の学会の特別講演は1973年ピューリッツァー賞「ベトナムの少女」で有名なキム・フックさんでした。

有名な写真が画面に現れると、皆が声を上げます。

南ベトナム軍の空軍機がナパーム弾を投下、キム・フックさんが暮らすチャンバンは空襲を受けます。

その当時、9歳だった左半身を中心に重度の熱傷を負い、一命は取り留めたものの、現在に至るまで合計17回の外科的治療を受けたのだそうです。

ベトナム戦争についてアメリカ世論がどう考えているのか詳細にはわかりませんが、こうした取り上げ方をするのは、アメリカの学会らしいと思いましたよ。

彼女は幾多の試練を乗り越え、1992年にベトナム人と結婚し、現在は2児の母親としてカナダはトロントに在住しています。

熱傷後の瘢痕に対しては米国人医師の元、レーザーを中心に治療されており、ASLMSの発展を心より応援していると締めくくりました。

講演中、多くの聴衆が涙を流し、感動していました。

僕も、キム・フックさんの体験や苦労に思いをはせると同時に、彼女を演者として招待するアメリカ人の姿勢や、学会参加者の医師の表情に心を打たれました。

この話を直接拝聴できただけでも、本学会は大満足でしたね。

ベトナム_1

ベトナム_2


米国レーザー医学会ASLMS2017 サンディエゴ 寄稿その1

米国レーザー医学会ASLMS2017 サンディエゴ 寄稿その1

2017年4月5日から4月9日まで開催された米国レーザー医学会。

帰国後、すぐにイギリス出張で時間が経ってしまいましたが、総括しておこうと思います。

今回はサンディエゴ開催。

僕は4度目のサンディエゴでしたが、ご存知この街はアメリカの最西南端に位置し、メキシコのティファナに接する都市です。

学会中は厳寒酷暑もなく、非常に過ごしやすい気候でした。

また、『トップガン』の舞台になったように、米軍基地の街でもあり、海軍や海兵隊の基地が散在します。

特に、空母ミッドウェイは圧巻で、夕日に映える航空母艦には毎回感銘を受けます。

本学会は475題の応募があり、ポスター発表も含めて375題の演題が登録され、査読を通過した一般の口頭発表が220題ありました。

内容は大きく分けて、

①皮膚の分野が85題、

②基礎研究の分野が98題、

③その他(歯科、婦人科、抗癌治療等)

が79題の3つに分類されます(一部重複あり)。

皮膚の演題に関しては基礎研究よりも招待講演やシンポジウムが多くなるので、一般の演題数は少なくなっています。

しかし、メインホールでの講演は殆どが皮膚の分野であり、聴衆も多く、やはり一番興味を引く分野ではあります。

アメリカ_1

アメリカ_2

アメリカ_3

今年は、業界上位3社のシネロンキャンデラ社、ゼリティック社、サイノシュア社の買収というショッキングな報告からスタートしましたが、画期的な機器の登場というより、既存の機器のエビデンス固めと基礎研究の充実という傾向が見られました。

皮膚に関しては、PICOレーザーからLLLT(低レベル出力レーザー治療)まで幅広い分野で議論が交わされていましたが、特にPICOレーザーではこれまでになかった中規模な臨床研究の結果が出始めています。

前向き、単or 2重盲検、ランダム試験の報告が2題あり、徐々にではありますが刺青以外の美容目的でのPICOレーザーに関するレベルの高いエビデンスが確立されてきました。

一方、レーザーの抗腫瘍効果の報告も多く、既存のYAGレーザー等を用いた基底細胞癌(1題)や悪性黒子(1題)、乳癌に対する放射線治療後(2題)の治療成績等が優秀演題として表彰されました。

同時に、良性腫瘍や神経疾患、殺菌等に関するPDT(Photodynamic Therapy)治療も注目されています。

PDTによる光免疫療法に関しては2012年にオバマ大統領が革新的ながん治療法であると誇ったように、今後、注目されていく分野であり、邦人では、アメリカ国立衛生研究所の小林久隆先生が最前線で活躍されています。

基礎研究に置いては、僕の発表もその一部でしたが、Laser assisted Drug Deliveryに注目が集まっており、フラクショナルレーザーに伴うシスプラチン(抗癌剤)の局所投与がsession awardとして表彰されていました。

また、Women’s Healthcare(膣弛緩症や腹圧性尿失禁等)分野のレーザー治療に関する演題は18演題あり、注目されている分野の1つです。

従来のCO2レーザーによる成績報告を認める一方で、Fotona社のインティマレーザーの報告が増えています。

インティマレーザーは粘膜に対してより低侵襲で、深部まで作用が到達する利点があり、今後、その需要は伸びていくことが予想されます。


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