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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

■2013年5月ドイツ出張⑯ 斬新な演出のライプティヒでのワーグナー舞台神聖祝典劇パルジファル

おはようございます。

ドイツ・ブログの続きです。

**********************

ワーグナー生誕200周年で滞在したライプティヒでの二日目の晩。

オペラ座にてワーグナー最後のオペラ作品である「パルジファル」を観ました。

パルジファルは、リヒャルト・ワーグナーが1865年、国王ルートヴィッヒ二世のために書いた全三幕のオペラ。

中世(10世紀ごろ)スペインの、イエスの血を受けた聖杯を守るモンサルヴァート(聖杯)城と、クリングゾルの魔の城を舞台となります。

主な登場人物は

●パルジファル 無垢で愚かな若者

●グルネマンツ モンサルヴァート城の老騎士

●アンフォルタス 聖杯を守るモンサルヴァート城の王

●クンドリー 絶世の美女、十字架に向かうイエスの姿を嗤ったため、世界をさまよう運命を持つ

●クリングゾル 魔法使い 聖者になりきれなかった人

●ティトゥレル アンフォルタスの父で先王

です。

実はこのオペラ、4時間余りもあり、ストーリーも複雑でちょっと難しいのですが、説明しますと、

第1幕

――かつて十字架上のイエス・キリストの血を受けたといわれる「聖杯(グラール)」と「聖槍」は、先王ティトゥレルに託され「モンサルヴァート(聖杯)城」の「聖杯騎士団(グラールの騎士)」によって守られていました。――

この聖杯の話はベストセラー「ダヴィンチコード」で話題になりましたよね。

ティトゥレル先王の跡を継ぎ、王となったアンフォルタスの苦悩は、そのような聖なる地位にありながら絶世の美女であるクンドリーの誘惑に負け、彼女を操る魔法使いのクリングゾルに聖槍を奪われ、さらに聖槍で傷を負ったこと。

アンフォルタス王のために、老騎士グルネマンツが治療法を求めるシーンからこの物語は始まります。

アンフォルタス王を救うために

「彼らとともに悩む、汚れなき愚者」

を待てとの神託を受けていたのでした。

グルネマンツの元に、湖の白鳥を射落とした若者が捕まえられてくるのですが、グルネマンツはこの若者こそ神託の「汚れなき愚者」ではないかと直感し、若者を連れて城に向かうのです。

城内の礼拝堂で、傷を負ったアンフォルタス王により聖杯の儀式が執り行われます。

先王ティトゥレルによって、聖杯が開帳されますが、若者は茫然として立ちつくすばかり。

グルネマンツは失望して若者を追い立て、これで幕が落ちます。

※※※※※

この作品は、舞台神聖祝典劇と名付けられて宗教性を強調していることから、ワーグナーが上演に当たり、全幕で拍手を禁止したのだそうです。

現在になっても、少なくとも第1幕のあとはカーテンコールが行われないといった独特の慣習もウィーンやバイロイトでは残っています。

ライプティヒでも観客の文化度・理解度は当然高く、一幕が終了した際に思わず数名が拍手をしてしまったところ

「おそらく観光客だろう・・・・・」

と観客がシラッとした雰囲気になったのが印象的でしたね。

カーテンコールは行われませんでした。

第一幕は長く、約2時間もあります。

通常ならオペラが一作終わる長さですよね。

さて、休憩時間には会場でシャンパンをいただくことにしました。

西洋の劇場は、本当に美しいですね。

パルジファルのスコアもありました。

雑談をしてシャンパンを飲み終わるのを待っていたかのように、ちょうど良いタイミングで第二幕が始まりました。

第二幕は、クリングゾルの魔の城にて――

クリングゾルはクンドリーに、魔の城に侵入した若者を誘惑し堕落させるように命じます。

クリングゾルの魔法によっ
て、戦場は花園になります。

花の乙女たちが無邪気に舞いながらこの若者を誘います。

クンドリーが「パルジファル!」と呼びかけ、初めて若者の名が明かされます。


ンドリーはパルジファルに接吻するのですが、この接吻によって、パルジファルは知を得て、アンフォルタス王の苦悩を理解します。

クンドリーはさらにパルジファルに迫り、クンドリーの呪われた過去も明らかになってゆきます。

十字架に向かうイエスに憧れながらも、歩く姿を嘲笑してしまったために、世の中を永久に救いを求めて彷徨わなければならない運命を背負った、絶世の美女。

クンドリーは、過去、数多くの聖者によっての癒しを求めましたが、彼女が誘惑する聖者達は、誰もが彼女の容姿の美しさに目がくらんでしまい救われることが無く、この世を彷徨い、苦しんでいたのです。

しかしながら、知を得たパルジファルは、このクンドリーの誘惑を見事に遠ざけます。

クンドリーの誘惑工作が失敗したと悟ったクリングゾルが現れ、物語のキーとなる聖槍をパルジファルめがけて投げつけます。

すると、聖槍はパルジファルの頭上で静止するのです。

パルジファルがそれをつかんで十字を切ると、魔法が解け、城は崩壊して花園は荒野と化します。

ここで幕が落ちるのです。

こちらの絵、劇場で見つけたのですが

主人公が槍を持っています。

どうやらパルジファルをモチーフにした絵のようですね。

第3幕では、隠者となった老騎士グルネマンツが倒れているクンドリーを見つけるシーンから始まります。

そこに立派に成長し、武装した騎士パルジファルが現れます。

アンフォルタスは聖杯の儀式を行うことが出来ずにおり、聖杯の騎士団は崩壊の危機に瀕していることを伝えます。

グルネマンツがパルジファルの頭に水をかける洗礼の儀式を行い、パルジファルもまたクンドリーを浄化します。

3人は城に向かいます。

城では、騎士たちによって、ティトゥレルの葬儀のための儀式が、始まろうとしていました。

傷を負ったアンフォルタス王の苦しみは頂点に達し、「我に死を」と叫ぶ。

そのとき、パルジファルが進み出て、聖槍を王の傷口にあてると、たちまち傷が癒えるのです。

パルジファルは聖杯を高く掲げ、合唱が「救済者に救済を!」と歌います。

聖杯は灼熱の輝きを放ち、パルジファルの頭上で羽ばたき、クンドリは呪いから解放されてその場で息絶えるのです。

穢れなき愚者であったパルジファルは、聖槍を帰還させ、アンフォルタス王、クンドリーを救い。幕が落ちます。

聖杯(グラール)と聖槍(ロンギヌスの槍)がモティーフとして出てくるのですが、「パルジファル」の題材となった聖杯伝説は、キリスト教に基づく伝説です。

しかしながら、神の子イエスが救済を与えるのではなく、「穢れなき愚者」が叡智を得て登場人物に救済を与えるのです。

話の筋を考えると、ワーグナー独自の宗教観を提示したものとも言えますよね。

上記に一般的なストーリーを書きましたが、実はこのオペラの演出では、第三幕の幕が落ちる少し前に、パルジファルが聖杯を投げて割ってしまうシーンが出てきました。

観客は皆いったい何がおこったのか???

という反応をしていましたし、僕も驚きました。

聖杯だと思われていたものが、別のものだったのでしょうか?

カーテンコールの写真の背景に大きな円が見えますが、ちょっと子宮をモチーフとしたようにも見えませんか?

ダヴィンチコードのように聖杯は子宮だったという解釈なのでしょうか?

何れにしても斬新な演出でした。

こうした演出による謎解きも、ワグネリアンとしての楽しみでもあるのですよね。

皆、満足そうに帰ってゆきましたよ。


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