さて、南仏出張紀に戻りましょう。
ニースの高台には、「シミエ」という場所があります。
この地はローマ時代の遺跡が残る場所です。
この場所では、今でも遺跡の発掘が行われているのですが、その高台の地にフランスを代表する画家 マティスの美術館があります。
フォーヴィスムのリーダー的存在であり、ゴッホやゴーギャンの影響を強く受けたとされる、20世紀を代表する芸術家 アンリ・マティス。
こちらは、Andre Derainによるマティスのポートレイトです。
シャガール美術館から約2.5km先にあるマティス美術館の周辺は、南仏の代表的な高級住宅街でもあります。
歩いて向かおうと坂を登り始めたのですが、これがけっこうタフな道のりで(笑)、照りつける太陽の下汗まみれになりながら、なんとか辿り着きました。
途中にはマティスがアトリエを構えたといわれる高級アパルトマンの「レジーナ」がありました。
中は見学できませんでしたが、丘の上の豪華な建物はひときわ目を引きましたよ。
この丘の上にあるシミエ公園はオリーブの樹に囲まれています。
オリーブの先に、その赤い建物が見えてきました。
これがマティス美術館です。
なんだか、平面的な作りだなあ・・・
と思って近づいてゆくと、御覧の通り、遠くから見たとき「窓」に見えたものは、半分以上が実は窓ではなく、外壁に描かれた「絵」だということがわかりました。
それがわかって、楽しくなってきました。
受付で、このマティス美術館は入場料が無料だと言われました。
それは素晴らしい、でもなぜ・・・?
と聞いてみると、最近就任した市長の計らいで、ニース市内にある市立の美術館は全て無料で公開されているのだそうです。
「でも、さっきのシャガール美術館は入場料をとられたよ。」
と言ったら、
「シャガールは市立美術館じゃなくて、国立なんだよ。」
ということだそうです(笑)。
市長によるとても粋な計らいですよね。
ヨーロッパに来ると、こうした芸術や文化に対する国や市のバックアップに、とても感動することがよくあります。
日本では、少子化対策や子育て支援がなにかと話題になっていますが、大人は無理でもせめて高校生以下の子供には、美術館や博物館、お寺や庭の拝観料などをすべて無料にして開放してあげたらいいのにな、と僕はよく考えます。
すでにそうした試みをされているところもあると思いますが、それでもまだごく一部。もっと増えてもいいですよね。
ブログでも書いていますが、世界的な視野で見ると日本人は本当に勤勉で手先が器用です。子供のころからもしもっと頻繁に芸術や文化に触れる機会があれば、世界的な芸術家や音楽家、職人さんがもっともっと生まれるでしょうし、存続を危ぶまれている日本の伝統工芸が生き残っていく道も見えてくるかもしれません。
また子供時代に学校や家で嫌なことがあっても、こうした場所でひとときを過ごすことが出来たら、きっと情操教育という意味でも大きいことでしょう。
一枚の絵で、人は幸せになることができる
ということを知るのはとても心強いことですし、そうした国民が増えることで、日本は真の意味で豊かな国になることもできるのではないかな、と思ってしまうんですよね。
話が逸れました。マティス美術館の展示を2枚ほど御紹介しましょう。
20世紀を代表するフランス人画家であるマティスの作品の中で、僕はニューヨーク近代美術館にある「Dance」という絵が印象深いのですが
MoMA http://www.moma.org/collection/object.php?object_id=79124
ダンスを彷彿とさせる絵が、こちらにありました。
こちらもいかにもマティスらしい絵です。
外から見ていて、建物はそんなに大きくないと思ったのですが、実は地下室にあたる展示場がとても大きく、さらに出口は地下にありました。
彫刻その他もありましたが、直前に訪れたシャガール美術館のインパクトが強すぎて、せっかくならそれぞれ別の日に行ったほうが良かったな・・・とちょっと残念な気持ちで帰路に着きました。
さらに残念だったのが、今回とても行きたかった
「マティス芸術の集大成」
と言われる、ヴァンスのドミニコ会修道院ロザリオ礼拝堂を日程の関係であきらめなければならなかったこと。
マティスを訪ねる旅は、またいつかの機会にとっておきたいと思います。
そのときここにももう一度来よう。