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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

ルートロニック社 ユーザーズミーティング講演

3月・4月は学会シーズンということもあって、国内外の出張が続きます。

すこし遅れてしまいましたが、先月丸の内で開催されたイベントについてのお話をさせていただきたいと思います。

東京丸の内の丸ビルで開催された、ルートロニック社のユーザーズミーティングに講師として呼んでいただき、アブレイティブ・フラクショナル・CO2レーザーであるeCO2(エコツー)照射の実演をしてきました。

ルートロニック社(元マックスエンジニアリング社)は、このブログでもおなじみですが、おさらいすると韓国系アメリカ人で、レーザー技術者であったファン・ヘイリャン社長が1997年にソウルに設立した会社です。

日本では2002年にデビューしたSpectraVRMというQスイッチNd:ヤグレーザーを、国内最大のレーザー輸入会社の株式会社JMECが輸入し始めたことによって認知度が高まりました。

当時、特にこのSpectraVRMという機器と、黒い炭の粒子を利用した「カーボンローション」を使用する、レーザーピーリングの一種である「マックスピール」という施術方法は、毛穴治療に効果があるとして、女性雑誌を含め一世を風靡しました。

当時治療することがほぼ不可能だと思われていた毛穴治療に対して生まれた「マックスピール」ですが、VRM2、VRM3と機器が進化するたびに「マックスピール2」、「マックスピール3」と名前を変えてきました。

治療機器は、1年の単位でも、常に進化します。2009年現在、「マックスピール」を「毛穴治療」に使用するクリニックはレーザークリニックとしてはあまりに時代遅れで、さすがにないと思いますが、毛穴治療に関して圧倒的に良い効果が望める「フラクセル」が2004年に登場するまでは、海外でも毛穴治療には「マックスピール」が主流でした。

僕のレーザー分野における初めての海外講演も、学会発表も、さらに論文も、この「マックスピール」についてでしたので、非常に思い入れのある機器なのです。

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ルートロニック社は、その後NAFLR(non ablative fractional laser resurfacing) のモザイクと、AFLR(ablative fractional laser resurfacing)のeCO2(エコツー)と、二つのフラクショナルレーザー機器を販売し、毛穴治療やニキビ跡の治療に効果を上げています。

今回僕のワークショップは最後だったので、ヘイリャン社長と隣に並んで座り、すべての講演を聴きながら、近況を報告したり、演題についてコメントしあいました。

休み時間にスピーカーの先生方とも世間話をしたのですが、ほんの10年前までは、アンチエイジング分野でのレーザーと言えば、単にシミなどの「色素的老化」を治療する機器でしかありませんでした。

その際に注目しなければならなかったレーザーのパラメーターは、メラニン(茶)や、ヘモグロビン(赤)に吸収される効率(=波長・wavelength)のみが、議論の主題となっていたのです。

しかしながら、2003年のサーマクールの登場で、コラーゲンやエラスチンを増殖させる事によるシワやたるみなどの「形態的老化」に対する治療が可能になり、

2004年のフラクセルの登場で、毛穴やニキビ跡のような「感触的老化」に対する治療(肌の入れ替え・リサーフェシング)が可能になった。

そこで、現在注目しなければならないレーザーのパラメーターは、色素に関連する「波長」よりも、レーザー照射における熱放散に関わる「パルス幅(pulse dulation)」に変わってきたと言えるのです。

レーザーを照射する上で、このパルス幅(パルス・デュレーション)の選択ミスをすると、組織に必要以上の熱放出がおこり、特に熱に弱い表皮はあっという間に火傷になります。レーザーを使用する医師として、最も注意を払わなければならないパラメーターと言えるのです。

このフラクショナル・リサーフェシング・レーザーを比較する図は今月の米国レーザー医学会学会誌からの出典です。

図をクリックして大きくしていただければわかるのですが、現在販売されているフラクショナル・レーザー機器だけでも、実際施術をしてみると、性能にこれだけの違いがあるのです。

我々医師が、患者さんの症状をもとに、製品と用途を選ばなければならないということですね。

今回僕が講演したeCO2(エコツー)は、レーザー出力のワットとジュールを独立して調節する事ができます。

通常では細かい設定が難しい、このパルス幅(パルス・デュレーション)のレーザー・パラメーターの調節ができるということなのです。

このニキビ跡や毛穴、さらには皮膚の瘢痕の様な傷治療のためのレーザー治療機器であるeCO2(エコツー)に関しては、パルス・デュレーションの調節がまさに胆ですので、僕は今回のワークショップではその説明を詳しくさせていただいたつもりです。

同じジュールの施術では、ワットが高い方がパルス幅が短くなるのです。

実際のレーザーの照射の話ですが、僕は利き腕が右手なので、レーザー治療を始めた頃は、器用な右手を使って全顔を照射をしていました。

でも、ここ数年はレーザーを照射するときは両手を使うようにしています。

左側の顔の照射の時は左の手を使い、

右側の照射の時は右の手を使う。

持ちかえて照射をするようにしています。

その方が真の意味で、左右対称にシンメトリックな照射ができるのです。

このように肌の反応を見ながら、慎重にレーザーを照射してゆきます。

eCO2(エコツー)は、「素人」が手をだすと文字通り「火傷します」が、

「玄人」が使うと「本当に治療効果の高い素晴らしい治療器」になるわけです。

使用法は経験が必要なのですが、現状の日本市場では、エコツーは数日間のダウンタイムがあるとはいえ、ニキビ跡や毛穴に対する治療器として、最も効果的な治療器の一つである事は断言できます。

照射後に肌をチェックして、レーザー施術終了です。

なんだか自分でレーザーを照射している写真を見てみると、ピアノを弾いている様な手つきですね。自分では今まで全く気づきませんでした(笑)。

このワークショップの後に開催されたユーザ-ズミーティング後の会食も、馴染みの国内外の招待講演者の先生方とも歓談でき、非常に楽しい会になりました。


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