レーザーアシストのドラッグデリバリーに関して、5月ごろから新しい英語の原著論文を書いています。
薬学の論文は、化学式でなければ立証できない世界。医学の論文とは違った厳しさがあります。
自分の書いてきた医学の論文のクオリティが時に恥ずかしく思えるほど、ある意味、精密です。
論文を書くときは、いつ出口があるかわからないトンネルを、孤独に、自分の脳との勝負しながら息をつめて走り続けるような…。
集中して論文を書く時期は、1論文につき3か月と決めているのですが、その時には、眠っていても、ゴルフをしていても、ドライブをしていても、論文の筋道について考えていることがよくあります。
僕の場合、煮詰まるとピアノを弾いたり、交響曲を大音量でかけたり、キャンディクラッシュをやったりして(笑)、束の間リラックスしています。
頭がリフレッシュされ、整理されるんですよね。
雑誌の編集室から依頼されるいわゆる総論論文も大切な仕事だと思いますが、
僕は一人の研究者として、ゼロから1の理論を生み出し、世界に向けて発信することにできる唯一の手段。
英文原著論文にこだわり続けたいと思っています。
そういえば、僕がFBやブログによく書く、「学術論文」って一体なんでしょうか?
とご質問を受けました。
確かに研究者以外には馴染みのないものかもしれません。
大学という最高学府で書く論文には、卒業論文(学士論文)、修士論文、さらに博士論文があります。
それぞれに”査読者”と言われる論文の質を審査する教官がおり、学士は指導教官1名、修士が2名、博士が3名以上の査読者が必要で、順を追って難しくなると言えます。
特に米国では博士号(Ph.D.)が無いと、研究の話ができる基礎学力を持たないものと判断されてしまいますので、致命的です。
一方で、
一般社会で論文というのは、ごく一部の優秀な卒業論文(学士論文)が業界誌に掲載されることがありますが、通常は、修士号取得以降の研究者が書いた、雑誌に掲載された論文のことを指します。
ここでいう雑誌とは二つの種類があります。
一つは、「紀要」という大学が独自に発行している雑誌。
もう一つは「論文誌」という研究領域を同じくしている人が投稿する雑誌です。
10年以上前、大学の「紀要」に日本語の論文を提出すれば博士号が取れた時代がありました。
特に医師が医学博士を取得する場合は、「足の指についた米(取っても食えないが、取らなきゃ気持ち悪い)」と揶揄された時期もありました。
その時代に「博士号を大学から買った」人たちもいるのですが、大学によって博士号取得のためのハードルが大きく違うのも事実。
一般的には、一定水準以上の英文査読誌に、数報の論文が受理されたもののみが、博士号が取得できます。
大学院課程の間に博士号に相当する論文を書くことができなかった場合は、単位取得退学と書かれることが多いです。
論文の種類も、
原著(論文)Original Articles
その中に 臨床研究 Clinical Investigations and Reports
基礎研究 Basic Science Reports
症例報告Case Report
総説 Review article
短報 Brief Report
手紙 Letters to the Editor
に分かれます。
雑誌のレベルの高さは、その雑誌がどのくらいの引用率があるか「インパクトファクター」という数字で示されます。
第1位の雑誌は CA: A Cancer Journal for Clinicians
こちらはなんと、Impact Factor: 115.84
第2位の雑誌は The New England Journal of Medicine
Nature や Science などの雑誌がこれに続きます。
結局のところ、学問の世界を客観評価することは難しく、研究業績というと、「英文原著の数と質」を加味して判断されるのです。