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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

「患者さん」か「患者様」か??

病院におけるクライアントを、「患者さん」と呼ぶのかそれとも「患者様」と呼ぶのか。

この議論が始まって久しいですが、皆さんはどうお考えですか?

僕自身はこの議論にあまり興味がありません。ただ患者さんの名前を「さん」で呼ぶのか「さま」で呼ぶのかについては、考えてみると自分なりにこだわりがあることがわかりました。

たとえば、「田中太郎」さんという患者さんが僕の病院に来てくれたとします。

僕はこの人を「田中さん」とは呼んでも「田中様」と呼ぶことはありません。

日本語のニュアンスの問題かもしれませんが、「田中様」と呼ばれてしまえば、この患者さんは医者との間にある一定の距離を感じ、聞きたいことがあっても遠慮して聞けなくなってしまうのでは? と思ってしまうのですよね。

先日うちのスタッフが、似たようなことで相談を受けているのを耳にしました。

彼女は美容クリニックでの経験が長く、クレーム対応の仕方や接遇に関する相談を受けることも多いようで、このときも他院の方から相談の電話を受けている様子でした。

その病院では、スタッフの患者さんに対する呼び方がまちまちで、「田中さん」と呼ぶ人もいれば「田中さま」と呼ぶスタッフもいる。スタッフの間で呼び方が違うのはおかしいから、どちらかに統一した方がよいのではないかと思う。でもどちらがよいのだろうか?

それに対する彼女の回答を聞いて、なるほど、と思いました。

彼女曰く

「さん」と呼ぶのか「さま」と呼ぶのかは、そのスタッフの持ち場によって変わってくると思う。病院にはドクターのほかに受付もいればナースもいる、その他に技術スタッフがいる場合もある。

ドクターはクライアントのことを「さん」で呼べばよいと思うし、ナースや技術スタッフも「さん」でよいと思う。なぜなら自分の肌を触る人間との間には一定の信頼関係が必要で、お互いに心を開く必要がある。クライアントはこうしたスタッフに化粧をとった素顔を見せ、時に洋服を脱ぐ場合もある。「防具」そして「鎧」のない状態に一時なるわけである。

「鎧のない状態」・・・それはとても心もとない、不安な状態である。

そういう状態のクライアントの緊張を解き、安心と信頼感を与え、最高の技術を施す為には、なれなれしくならない程度で「近しく」なる必要があり、そのためには「さま」ではなく「さん」と呼ぶ間柄を作る必要があるのではないか。

しかしながら、受付とクライアントとの関係はこれと異なると考えた方が良い。受付が患者さんと話をするとき、そこには受付カウンターであったり、電話であったり、メイクであったり洋服であったり、必ず一枚「壁」や「皮」がある。その壁を挟んで、予約をとったり、お会計をしたり、コートを預かったり、お茶を出したり、クレームの処理をしたりする。クライアントと一定の距離そして“柔らかな上下関係”があってこそ、成り立つ仕事である。

こうして考えていくと、受付はクライアントのことを「○○さま」と呼んでよいと思う。

スタッフの持ち場・役割によって、クライアントの呼び方を変えることが正しいのではないか。

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相談をもちかけてきた方も、これでクリアになったようで、病院の体制をこのように、以後統一されるとおっしゃっていたようです。

病院とは、多種多様な専門職によって成り立つ現場であり、患者さんへのアプローチは持ち場によって異なります。その前提の下考えると彼女の考え方は非常に納得できました。

医療経営のセミナーで、こうした話も今後生かして行きたいと思います。


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