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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

てんかん発作の研究 

錦織選手のおかげで日本中が興奮の朝を迎え、夜にはスーパームーンも見られるでしょうか。

昨日は診療を早めに閉めて、薬学部の講義を聞きに行きました。

東京大学大学院薬学系研究科の小山隆太先生の特別講義。

2012年にネイチャーに受理された論文

「てんかんは幼少時の高熱による熱性けいれんに起因している」

ことについて講義でした。

もちろん研究内容もそうですが、研究へのアプローチも本当に興味深い内容で、研究者としてとても良い刺激をいただきました。

複雑型熱性けいれんのモデルラットにおいて、熱性けいれんが海馬の顆粒細胞の移動を撹乱し、顆粒細胞を不適切な場所に散在させることが分かったのですが、この異所性顆粒細胞は成体になっても残存し、その数が成体におけるけいれん発作の起こし易さと相関するのだそうです。

つまり、乳幼児期の神経回路形成が、将来の認知機能に与える影響の細胞生物学的検証を行ったということ。

ヒトの場合、1歳以下で起こすと脳に異所性顆粒細胞が生じてしまい、これがてんかん発作の回路を作ってしまう可能性もあるようですが、異所性顆粒細胞の発現には、神経伝達物質であるGABAによる神経興奮性作用と、この作用を担うNKCC1共輸送体が関与するので、KCC1共輸送体の阻害剤を熱性けいれん後に連投することで、異所性顆粒細胞の出現を抑え、将来のてんかんを制御することが出来るのだそうです。

これは小山先生もご指摘されていましたが、将来のてんかんの予防のために神経作用薬をのませるべきかという点についてはまた別の議論が必要となるところかと思います。その一方で、1歳以上で熱性けいれん既往がある方が、将来の記憶認知能力が上がるというデータもあり、とても興味深かったです。

 


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