TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

音痴と空間把握能力の関係

毎月VISAカードの会員誌を楽しみにしています。今日も読んでいて、東大薬学部の池谷裕二准教授のコラムで「音楽脳」について、素晴らしく面白い記事を見つけました。ネイチャー神経科学の2007年7月号の記事について書かれたコラムだったので、自分でも探して読んでみました。

以下池谷先生のコラムとネイチャーの記事を合わせて御紹介させていただきます。

音痴(Amusia)とは、メロディーや音程の認識が苦手な症状で、人口の4%が有するが、耳などの感覚器の機能不全が原因と、簡単に説明できるものではないのです。つまり、耳は正常に機能しているし、大脳皮質の聴覚野の活動に異常が見られるわけではありません。

これは音楽ではなく言葉に置き換えて考えるとわかりやすいそうで、たとえば日本語でも「明日いらっしゃるんですね」という文章を、「明日いらっしゃるんですね?」と同じ文章を疑問符で使った場合と疑問符がつかない場合では、この「ね」の文字の音程の差だけで、われわれはすべての文脈を認識するわけですが、音痴の人でも、この音程差は間違いなく認識して、意味を理解できる。ですから、耳の感覚器に異常があるわけではない、というわけです。

ニュージーランドのビルキー博士らの研究によると、音楽家と、いわゆる音痴な人を比較すると、空間把握能力に相関性があるというのです。空間把握能力は、立体図形を頭の中で回転させた図を思い浮かべるという、簡単な試験で確かめられます。モニターに出てきた図を立体的に回転させて、その図形が別のどの図形と一致するかという、IQテストでも行なう試験です。

一般的に女性より、男性の方が空間把握能力は高いと言われています。確かに地図を見たり、車を縦列駐車をするなんて、男性が得意ですよね。この論文では、その事実を裏付けるように、ビルキー博士は実は女性の方が音痴が多いと考察しています。

音程はピッチで表わしますし、音程を表わす楽譜は等高線のようにも見えます。実は僕も絶対音感を持っているのですが、自分も設計図から出来上がりを予想するような、空間把握能力は決して低くはないのでは? と思っていました。

脳の同じ場所で空間把握能力と音程把握能力が機能している可能性があるなんて、不思議ですよね。

逆に、建築家の方は、音痴があまりいないのでしょうか? 今度建築士の友達に聞いてみようと思いました(笑)。

David K Bilkey博士のアブストラクトの原文を引用しますので、ご興味のある方はお読みください。また、VISAカードの会員の方、池谷先生のコラムもぜひ読んでみてください。僕は池谷先生の著作にも興味がわき、取り寄せようかこれから検索します。

Amusia (commonly referred to as tone-deafness) is a difficulty in discriminating pitch changes in melodies that affects around 4% of the human population. Amusia cannot be explained as a simple sensory impairment. Here we show that amusia is strongly related to a deficit in spatial processing in adults. Compared to two matched control groups (musicians and non-musicians), participants in the amusic group were significantly impaired on a visually presented mental rotation task. Amusic subjects were also less prone to interference in a spatial stimulus-response incompatibility task and performed significantly faster than controls in an interference task in which they were required to make simple pitch discriminations while concurrently performing a mental rotation task. This indicates that the processing of pitch in music normally depends on the cognitive mechanisms that are used to process spatial representations in other modalities.


カテゴリー