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藤本院長のブログ(新国際学会周遊記)

2014-15年のMETのカルメンは歴史に残ると思います

今週は楽しみにしているニューヨーク・メトロポリタン・オペラ 通称METのライブビューイングが行われる週でした。

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1週間しか上映期間がないので、その中でなんとか空き時間を探し、さらにその時間に開演している映画館を探し・・・という感じで観ています。

オペラを観ている3時間はすべてを忘れて没頭し、幸せな気持ちになります。

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今週はMET上演日 2014年11月1日の「カルメン」です。

カルメンはこれまでに恐らく20演題以上観ているでしょうか? 

このブログで書いたことがあるのは

2011年にシチリア島ティアトロマッシモで観たカルメン

こちらの劇場は、ゴットファーザー3の最後の場面で使用されました。

さらに2011年の震災の後に来日したボローニャ歌劇場で主役がすべて入れ替わったカルメン。

これは時期的なものもあり、鮮明な記憶として残っています。

これら含めカルメンに関しては違ったディレクションでも何度も観ていますし、ストーリーも曲もよく知っていますが、観るたびに違う感動を与えてくれるオペラでもあります。

作曲家ビゼーには事実上カルメンしかオペラ代表作がなく、しかもカルメン作曲後ほどなく若くして亡くなってしまったので、この成功を彼は生きている間に見ることが叶いませんでした。

その事実を本当に残念だと毎回心から思う、錆びることない素晴らしい作品ですよね。

けれど、その素晴らしさに僕たち観客は時々慣れてしまい、いえ正確には時に慣れ過ぎてしまってそれを見失い、カルメンならもう何度も観ているしよく知っている、また次の機会もあるだろうから今回は観なくてもいいか・・・と思ってしまうことがあります。

でも、今回のカルメンは特別でした。凄かった。

僕がこれまでに観たカルメンでは最高のカルメンでした。

※※※

Photo

指揮はスペイン人指揮者で若手の実力派 パブロ・エラス=カサド 

演出:フィガロのリチャード・エア

主役は、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ(写真)。

METでカルメンを演じることは、メゾソプラノなら誰しもが夢見る究極の目標の一つでしょう。

グルジア出身の彼女は、まさにカルメンが乗り移ったような迫真の演技をするのですが、これには鳥肌が何度も立ちましたよ。

アレクサンドルス・アントネンコがドン・ホセを

今年のMETの「フィガロの結婚」ではフィガロを演じたイルダール・アブドラザコフがエスカミーリョを。

さらに、ラ・ボエームのミミでは定評のあるアニータ・ハーティッグがミカエラを演じます。

これがまたどの役もぴったりで・・・たとえば以前ヨナス・カウフマンがドン・ホセを演じていますが、もちろん彼はずば抜けた才能の持ち主で、彼が演じるドン・ホセは今でも語り継がれているわけですが、役だけを考えるとドン・ホセを演じるには彼は元々色男過ぎるし華があり過ぎる。エスカミーリョとの対比が難しい場面もあるように思うのです。

しかしながら、アレクサンドルス・アントネンコは舞台の上で愚直な、バスク出身の母親を愛し、恋人と素朴な人生を歩む、まさにドン・ホセそのもの。

スペイン北部のバスク地方は、今でこそ文化都市、グルメなどで知られますが、この歌劇が書かれた当時は時に差別さえされる地域であったと言います。

ホセは母の期待を胸に、母に胸を張ってもらえる仕事を選ぼうとそんな田舎を後にし兵隊になりますが、

カルメン演じるラチヴェリシュヴィリという、かつて人生で出逢ったことのない女性を前に、少しずつ人生を狂わせていく様子があまりにリアルなのです。

Carmen

そのドン・ホセをラチヴェリシュヴィリは、時に誘い、時に突っぱね、嘲笑い、怒り、微笑みながら、ファム・ファタル(運命の女)として生き抜きます。

悪女のように言われがちなカルメンですが、今回の舞台ではラチヴェリシュヴィリにホセを包み込むような母性さえ感じました。

ドン・ホセの方が実は強く、彼を選んでしまったことがカルメンの悲劇なのではないか、でもそれを含めて彼女はすべてを受け入れ、彼女なりのやり方でホセを愛したのだなと終盤では思わせるような演技でしたね。

そんなふたりを彩る、エスカミーリョとミカエラ。

ミカエラの透明感溢れるアリアにMETで観客たちは惜しみない賛辞を送り、エスカミーリョによってこの悲劇に束の間、色彩豊かな虹がかかるような舞台でした。

カルメンは、本当に名曲揃いです。

第1幕への前奏曲

ハバネラ「恋は野の鳥」
   

第2幕への間奏曲 「アルカラの竜騎兵」
   

ジプシーの歌
   

闘牛士の歌 「諸君の乾杯を喜んで受けよう」
   

花の歌
   

第3幕への間奏曲
   

カルタの歌
   

ミカエラのアリア
   

第4幕への間奏曲 「アラゴネーズ」

どれも本当に素晴らしいのですが、不思議と会場を出たのちに頭に残る旋律は、毎回違うのも面白いところ。

今回は、アニータ・ハーティッグが演じたミカエラのアリアがしばらく頭の中を鳴り響いていました。

2014-15年のMETのカルメンは歴史に残ると思います。

是非いずれかの機会でご覧になってください。


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