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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

ビューティフル・マインド

『ビューティフル・マインド』(A Beautiful Mind)は、2001年のアメリカ映画です。ノーベル賞を受賞した実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いたノンフィクションなのです。出演: ラッセル・クロウ, ロン・ハワード, エド・ハリス, ブライアン・グレイザー, クリストファー・プラマー 。アカデミー賞では作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞を受賞した作品です。

ジョン・ナッシュはナッシュ均衡(ナッシュきんこう)の論文が有名です。ナッシュ均衡は僕のMBAの論文でも引用したのですが、ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種であり、最も基本的な概念です。他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによって、より高い利得を得ることができない戦略の組み合わせのことで、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない状態を意味するのです。つまり、簡単に言うと、あるゲーム理論の中で、どのプレーヤーも戦略を変更する必要のない均衡状態のことを言うのです。

僕はナッシュ均衡を自分の論文に引用したにも関わらず、彼が統合失調症を患っていた事実を全く知りませんでした。

統合失調症は、元々ドイツ語のSchizophrenieに対する訳語として、明治時代に“精神分裂病”と訳されましたが、その語彙の意味を取り違えられることから、2002年に日本精神神経学会総会によって「英schizophreniaに対する訳語を統合失調症にする」という変更がなされました。

統合失調症には大きく分けて三つの病態があります。妄想や幻覚が症状の中心で30歳代以降に発症することが多い 妄想型。 思春期前半に発症することが多い破瓜型。そして、興奮・昏迷などの症状を呈する緊張型です。

統合失調症は人格の崩壊とつながり、予後は悪いものと考えられていると思いますが、実際には人口の1%が罹患し、比較的頻度の多い病気です。妄想や幻覚が治療によって消えることはありませんが、この映画のように、これらが実際のものではなく、妄想や幻覚なのだと自ら気付くことによって、社会復帰が出来るようになります。

昔から天才となんとかは紙一重といわれていますが、脳のシナプスの発火が多い人ほど、常識では考え付かないことも気付きますし、発想も豊かになります。こうした人が、あるときに統合失調症になってしまうというのも、なんだか理解できる気がしますね。

また、研究者というのは孤独なものです。周りの友人は、ときにライバルとなります。大学、そして大学院時代、友人もなく、一人理論の展開のみを追い続けていたナッシュが、のちに病気とわかる統合失調症ゆえに脳の中にもう一人の友人を作ってしまったり、重要国家プロジェクトの任務を帯びていると幻覚してしまったりします。天才であること、孤独であることによってナッシュはある意味追い詰められていく。けれど、そんな彼を妻やかつてライバルだった友人が支え、助けていく。つくづく人はひとりでは生きていけないのだと、才能があればあるほど、理解者が必要なのだと考えさせられました。そして、ノーベル賞が決まり、教授達がナッシュの前にペンを置いてゆくシーンは、感動的でしたよ。


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