TakahiroFujimoto.com

HOME MAIL
HOME PROFILE BOOKS MUSIC PAPERS CONFERENCES BLOG MAIL CLOSE

BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

マイケル・ポーターの基本戦略

MBAを取得し、論文を書いたときに、日本の医療経営の問題点についていくつか調べる機会がありました。まとまった時間があったので、少しまとめてみました。いつものブログと文体が違い、論文調なので、ごめんなさい。でも自分が常に考えていることですので、いくつかアップしてみます。よろしかったらお付き合いください。

近年の医療技術や医療用設備・機器の進展、またIT化による情報装備の必要性に伴って、医療機関における資金需要は大幅に拡大しつつある。病院経営においては、職員が誇りと満足感をもって働ける環境づくりと管理・指導、効率の良いファイナンスも必要である。

しかしながら、現行の医療制度においては、診療報酬の統制に加えて、一般企業の医療事業への参入禁止、広告の規制、混合医療の保険対象外、病床数の規制などさまざまな規制があり、これが非常に非効率な医療経営を招いている。いわば、両手を縛られたまま医療経営をしなければならない状態である。2006年4月の診療報酬の抑制により、投資の終了した既存の医療経営母体でさえ組織維持が難しく、新規参入などはほぼ不可能になる。

この事実によって、最新のそして質の良い医療サービスを受けたいと願う消費者にとっても、選択肢を制限されていることに気付くべきである。このような現状を打破するためにはやはり、各種の規制を緩和し、医療市場に競争原理を導入する必要があると思う。

病院間における競争戦略に関して、マイケル・ポーターの3つの基本戦略、すなわちコストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中化戦略を考慮すると以下のようになるが、これらは日本の9割以上を占める個人院長のクリニックには適応できず、医療市場においては、競争の原理は働いていないということが良く理解できる。

日本の医療報酬は標準診療点数制をとっており、これが存在する限りコストリーダーシップ戦略を用いることはできない。この診療点数制については、患者にとって自己負担はあるにせよ社会保障方式の医療保険制度によって直接的に懐が痛まないために、患者が過剰な治療や投薬を要求する一方で、それに応えない医師の評判と収入が下落したり、医師は医療努力を低下させるなど弊害が多い。

差別化戦略に関しては現行医療制度の下でもさまざまな工夫が考えられる。例えば、最新の施設・設備の導入、有名専門医の招致、早朝・夜間診療や休日診療など診療時間の拡大、巡回・訪問診療など診療空間の拡大、また患者への接遇の改善、予約制による待ち時間の短縮などによるサービスである。

集中化戦略としては、例えば、今後増加すると考えられる循環器科・消化器科・脳神経科などに専門特化することにより一連の迅速な検査、適切な診断、早期の治療が可能なようにスタッフを揃えることなどが考えられる。

欧米においては、病院の経営者(CEO)は、経営のプロが務めるのが慣行となっており、医師が務める場合にも通常はMBA(経営学修士)などの資格を取得している。今後の医療機関の管理運営においては、医療の知識・技術もさることながら、マネジメント能力やマーケティングの素養が不可欠となっている。日本の医療法人の理事長や、個人病院の院長は原則として医師の資格が必要であるが、この悪法は時代に即しておらず、即刻改正すべきである。

病院経営を医師の片手間な経営ではなく経営のプロに任せることによって、経営の透明性・健全性・尊法性を確保し、迅速かつ適切な情報開示を行い、また経営・管理責任の明確化ならびにアカウンタビリティの徹底も促進する必要があると思う。


カテゴリー