機会がある度に、フェルメールの絵を見ることを旅の目的のひとつとしています。
今回のアメリカ出張で、ニューヨーク滞在中時間があれば、市内にある8枚のフェルメールを、すべてとはいかなくても一枚でも観られたら・・・と思っていました。
日本に関するニュースは、アメリカで目にするとまた違った緊迫感が漂い、毎日「FUKUSHIMA DAIICHI(アメリカでは福島第1原発をこう呼んでいるようです)」について新聞紙面やCNN他のニュースで見聞きしていると
こんなときに絵画鑑賞・・・?
と思う自分も心の中にいましたが、
こんなときだからこそすこしでいいから美しいものに触れて日本に帰りたい
と思う自分も一方でいました。
ニューヨークにある8枚のフェルメール。そのうち3枚はフリックコレクションに、残りの5枚はメトロポリタン美術館にあります。
どちらの美術館もマンハッタンのアッパーイーストサイドにありますので、時間があまりなくても歩いて移動できます。
フリックコレクションは、実業家であったヘンリー・クレイ・フリックの個人的なコレクションを、彼の邸宅だった場所で展示しているのです。
アンドリュー・カーネギーと一緒にカーネギー製鋼を設立したフリックですが、ワシントンDCのナショナルギャラリーを作り上げたアンドリュー・メロンと友人だったのだそうです。
1880年に一緒にロンドンに旅行した際に、メロンは英国ナショナルギャラリーに感動して、ワシントンにもそれに匹敵するものを作りたいと考えた・・・という話は以前ワシントンブログでもしたと思うのですが、フリックの方は、個人コレクションであるウォレス・コレクションをモデルに自分のコレクションを集めるというインスピレーションを受けたようです。
このコレクションはプロの視点から見てもその卓越した趣味の良さで知られていて、実際行っても本当に素晴らしいのです。
実業家として成功したのちに、そのお金をどのように使うかは個人の考え方によると思うのですが、フリックのように審美眼をもって、散逸してしまいがちな世界の芸術品を蒐集し公開するというのは、我々市民にとっては嬉しいですよね。
ともあれ、フリックコレクションは、美術館としては小さいのですが、僕がとても好きな場所です。
建物の中には中庭があり、皆がくつろいでいます。
この美術館は絵画の写真がとれませんので、ウィキペディアから写真をお借りしました。
以下のフェルメールの三枚の絵が展示してあります。
「兵士と笑う女」
この絵はフリックが最も好んだ絵だといわれているのだそうです。写真になると平面的な絵に見えますが、実物は兵士の赤い服にも質感があり、女性の表情も、光の当たり加減の描き方も素晴らしいです。
女性のこぼれるような笑顔に、不覚にも目頭が熱くなりました。いつもよりエモーショナルになっているのでしょうね。
絵画を画集で見るのが好きだったのですが、光を巧みに使ったフェルメールの絵は特に、実物と画集の印象が違うことが見るときの楽しみです。
「中断された音楽の稽古」
「夫人と召使」
です。
この絵に描かれた「白の縁取りのついた黄色のサテンのコート」は、フェルメールの遺品として実在が知られており、ほかの絵にも登場しますので、見覚えがある方もいると思います。