今世紀に入ってから約20年間。
最も進化した医療の一つが、レーザー治療を中心とした、Photo-medicine(光医療)であることは、僕のブログを読んでいる方はご存知だと思います。
この分野が急速に進化したのは、ご存知
1983年にサイエンスに採択されたPrecise microsurgery by selective absorption of pulsed radiationという論文です。
(Anderson & Parrish, Selective Photothermolysis, Science, vol.220, page 524-7)
ページにしてわずか3ページ強。
とても短いこの論文(選択的光融解理論)が業界に与えた影響は数知れず。
この理論は、「(レーザー光の)波長、光の照射継続時間(パルス幅)、単位面積あたりに照射する光エネルギー量の適切な組み合わせによって、生体の限定された領域に光熱分解を生じさせることができる」 というものでした。
➀光の波長(Wavelength)
➁照射持続時間(Pulse dilation)
➂単位面積当たりのエネルギー量(Fluence)
の
3つの要素を調節して照射すると
特定の色素、細胞、そして細胞内構築物を選んで、
融解する、もしくは組織の急速な温度上昇に起因するショックウェーブの機械的な力で特定組織のみを破壊することができるという理論です。
今日は、
➁照射持続時間(Pulse dilation)➂単位面積当たりのエネルギー量(Fluence)
が適切に選ばれたと仮定して話を進めてみたいと思います。
➀光の波長(Wavelength)を変化させることで、どういった治療効果の変化がみられるでしょうか?
こちらのグラフは、波長を変化させることで、体内のどのような物質が吸収するかのグラフです。
➀メラニン(茶)は波長が短ければ短いほど強く吸収する。→シミ治療にかかわります。
➁オキシヘモグロビン(赤)は一般的に波長が短くなればなるほど強く吸収されるが、可視光線には542nmと577nmに二つの山がある。→あざ治療にかかわります。
➂真皮の水分は波長が長くなればなるほど吸収率が上がる。ちなみに表皮には水分はほとんど存在しません。→肌のタイトニング治療にかかわります。
皮膚の中で最も熱に弱い組織は表皮ですので、表皮を冷却しながら施術をするのが原則です。
このバンドの可視光線を光治療器として使うと、メラニンとオキシヘモグロビンの吸光度が近いので、干渉されてしまうのです。
クリニックFでは、治療上、これらのコントラストを上げるために
➀シミ治療の場合
機器の冷却を上げて、使用するジェルも氷で冷やしたり、リドカイン麻酔を塗布してから使用します。
どちらも血管を収縮させる力があり、メラニンを際立させるのです。
➁赤みのあざや、酒さなどの赤みの治療の場合
光治療で注意しなければならないのは、冷やしすぎないこと。
光治療器であれば、常温のジェルで、フルレンスと冷却を落として施術します。
同じくメラニンに対しても吸光度が高い波長なので、事前にメラニンを除去したり、直前にビタミンCイオン導入をすることでビタミンCを酸化型から還元型に変化させ、メラニンの色調を薄くしてから照射する。
と言った工夫をしています。