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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

1708nm 皮脂腺破壊レーザー ニキビ治療の最新技術

今日は、久しぶりにクリニックFに出勤し、まずは届いていたレーザー医療や皮膚科の医学専門誌や文献に目を通しました。

幾つかの専門誌を読んで、特に僕が気になったのはこの記事です。

米国ミシガン大学の工学部と医学部の合同研究グループが報告した1708nmの波長のレーザーが皮脂腺を選択的に破壊する可能性があるという論文です。

皮脂腺を選択的に破壊できるようになれば、アクティブなニキビの治療に画期的な効果を得ることができるようになります。

以前に、ニキビ跡のレーザー治療はもはや完成したというブログを書いたことがありますが、ニキビ跡ではなくて、アクティブなニキビのレーザー治療が可能になれば、皮膚科医療の中でも、一段とレーザーが活躍する場が増えることになりますよね。

あまり国内の医学会や教科書では報告されていないのですが、海外の学会ではヒトの脂肪/脂質に吸収させるレーザー波長が90年代に活発に議論されており、Palomar社のGregory AltshulerとMGHのRox Andersonらにより、1999年3月26日に共同出願。さらに2003年8月12日には特許が成立しています。

人の脂肪組織に対するレーザー波長の吸収曲線を実験してみると、この上図のように940nm、1200nm、1720nm、2300nm近辺の4カ所で、水(青線)とヒト脂肪組織(黄色線)の吸収率が逆転する波長が出てくるのです。

中でも青の矢印をつけた1720nm前後の波長は、940と1200nmの二つの波長と比較してヘモグロビンの影響を受けにくく、さらに2300nmに比べて水の影響を受けにくい、理論的には脂肪組織/皮脂腺をを溶解させるのに最も適した波長。

この1720nmにきわめて近い、1708nmの波長のレーザー機器を、ミシガン大学の工学部が作り上げて、同大学医学部皮膚科で実験をしたという報告です。

最近、僕自身が工学部大学院の博士課程に通うようになってからというもの、レーザーの仕組みである回路図についつい目が行ってしまうのです(笑)が、論文を読むと、1542nmの波長をラマンオシレーターで変換し、1708nmに変化させる仕組みでこの波長を作り出しているようですね。

ただし出力は4Wしか出せないようです。

この論文でも指摘されていますが、正常成人の肌では、皮脂腺が存在するのは1.5㎜~2㎜の深さです。

反対に、この1708nmのレーザー波長を使用した場合の皮膚の深達度は計算によると深く見積もっても1.1㎜程度。

残念ながらこのプロトタイプでは実際の生体でニキビの治療効果を出すには至らないようですが、生体外実験では良い成績が出ているようです。

臨床利用されるには数年かかりそうですが、楽しみですね。

 


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