NYから帰ってきてからは、すっかり日本の師走モードで、今年の診療もラストスパートを迎えています。
いくらハードなスケジュールでも、NYに行くと元気になって帰ってこられるのは、やはり夜の観劇のおかげでしょうか。質の高い芸術と音楽のおかげで癒され、活性化するような感覚があります。
音楽、そして芸術の力、ですよね。
このブログを読んでくださっている方はご存知のことと思いますが、僕は音楽が大好きです。特にクラシック。もし才能と環境が叶うなら指揮者になりたかった、と思うくらいです。
そのせいなのでしょうか、クリニックFにはピアノの先生や声楽家、楽器演奏家などのほか、いわゆる芸能人と呼ばれる有名な歌手の方など、音楽の仕事をされている方がけっこういるのです。
これは開業前には想像もしていなかった、思いがけないプレゼントですね。
音楽関係の方から
「このピアノ、素晴らしいですね。誰の演奏ですか?」
とクリニックFのBGMについて聞かれると、これが実に嬉しいんですよ。
クリニックFのBGMは有線ではなく、すべて僕が自宅から持ってきている音源を、クリニックのコンピュータで「i-tunes」に入れて流しているのです。同じ曲でも指揮者や演奏者が違えば、まったく別の曲になってしまいます。そういう意味で、クリニックFに流れている曲の数々は、
「ベートーベンの交響曲4番なら、この指揮者」
「チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番なら、この演奏」
「ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番なら、このカップリング」
「ショパンのバラード1番なら、この人」
「椿姫を歌わせるなら、この歌手じゃないと」
・・・などなど、僕が四半世紀以上に渡ってコツコツと集めてきたコレクションの中から、珠玉のものを抜粋してかけているのです。
レーザーと同じく、こだわってしまうんですよね。
ところで、音楽の力のひとつに痛みとの関係があることをご存知ですか?
音楽は、「聴覚性痛覚消失」と呼ばれる現象を起こすことで知られています。身体的な苦痛を和らげる効果があるのです。手術や出産、歯科の治療などに際して音楽を流しておくと、鎮痛剤や麻酔の使用が少なくて済む、という研究報告などが海外では出されています。
これは音楽が作用して、体内にある天然の鎮痛及びリラックスホルモンである“エンドルフィン”の分泌が促されることが、理由とされています。
エンドルフィンは内因性麻薬と呼ばれている、モルヒネ様ペプチドです。マラソンのときに、ランナーズハイと呼ばれる現象が起こることがありますが、この原因であるといわれています。
モルヒネが退廃的に働くのに対し、脳内麻薬であるエンドルフィンは、人間の脳を活性化するのに役立つ物質なのです。
怪我や病気がなぜ怖いかといえば、その理由のひとつに「痛いこと」が挙げられることは誰もが納得することでしょう。その大きな苦痛のひとつに、ホスピスみたいな特別な場所だけではなく、日本の医療現場はもっと注目し、緩和できる工夫を随所で行っていく時代になっていくことと思います。
薬剤を使って痛みを緩和するのではなく、音楽や香り、指や手による刺激などを随所に取り入れた複合的な医療施設が、当たり前の時代に早くなると良いですね。