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藤本院長のブログ(新国際学会周遊記)

医工学部が必要な時代へ その② 医学博士、工学博士の取得へ 

2013年01月16日(水) カテゴリー:医療

その①より続く

医師免許取得時に初めて

「既存の科に、自分の行きたい診療科や研究科がない」

ということに気づいても、現実はそんなことを言っている場合ではありません。

時間的猶予もありません。

とにもかくにもまずは祖父の生き方を辿るべく、彼が行っていたペインコントロールの専門を診療と研究対象にしたいと思い、痛みの専門家である麻酔科を選択。

結局麻酔科で5年目に麻酔専門医を取得しましたが、進路の選択が果たして正しかったのかどうか、いつも悩んでいました。

とはいえ、一度自分で決めた道なので、専門医を取得するところまで突き詰めることがまず先決。

それがなされなければ転科はしないと考えていました。

そんなとき大学病院の外来で、ペインコントロールに使用していた低出力レーザー機器を思い出したのです。

そうだ、自分は幼少の頃より顕微鏡やカメラなどの光学機器や機械がなにより好きだった。

いつか理系の研究者になりたいと思っていたのだったっけ・・・という、小さい頃の夢を思い出したのです。

そして、医師免許を生かして理系(工学)の研究に携わることもひょっとしたら可能なのではないか、と考えるようになりました。

米国の場合、メディカルスクールに進学するためには他の科の大学を卒業し、学士を持たなければなりません。

医学生の中には、工学部を卒業した人も多く、こうした環境から米国では医学にも工学にも詳しい人間が、機器開発に携わることができるのです。

しかしながら、同じ理系に分類される医学と工学は似たようで非なるもの。

日本では二つの分野にまたがった専門家は数えるほどしかいません。

医学と工学に長けた専門家は、人工心臓(心臓ペースメーカーを含む)を作る分野か、重量子線治療を含めた放射線医学を扱う分野か、レーザー医療に携わる分野に属する限られた人間です。

これからの医療現場には、もっともっと高性能機器が登場する時代が来るに違いない、そうであればそうした機器を扱って治療にあたる医師ももっと必要になるはずという確信も、僕の背中を押しました。

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僕は理学系研究の中でも特に工学(光学)に興味がありました。

そうなるとやはり光学機器の英知を結集したレーザー機器を専門にしたい。

レーザーはアインシュタインにより1920年代に発表された、「誘導放出の研究」により理論を提案されて80年。

さらにメイマン博士によりルビーレーザー機器がつくられたのが1960年。

自然界には存在しない人知が作り出したコヒレントな光。

まだまだ工学的にも新しい分野です。

レーザーが医療に応用されている局面は沢山あります。

古くはレーザーメスを主体とした外科領域、皮膚科・形成外科領域、泌尿器科領域、歯科領域、眼科領域さらには痛みの治療。

レーザーの医学応用には、診断領域と治療領域の二つの利用方法があります。臨床治療応用では、やはり皮膚科・形成外科領域での応用が最も多い。

医師となって6年目に大学院医学博士課程に進学。4年間の在学中に、自分の生活のために青山外苑前、六本木、そして表参道にレーザークリニックを開業しました。

これら3つのクリニックは、大学院修了後に東京大学医科学研究所で、大学職員(助手)になる前に、経営権を譲渡売却しました。国家公務員は兼業は出来ませんでしたので。

大学院医学系研究科では皮下の免疫細胞の司令塔であるマストセルを研究テーマにしました。

皮膚・免疫系の勉強を研究者の立場から勉強し直すことができたのは、今の自分のキャリアに生きていると思います。

僕の医学博士号の主査は、東京大学皮膚科の前教授の玉置邦彦先生にお願いしました。

玉置教授は素晴らしい人格者でした。

2010年に急逝されたときには大変驚き、もっと様々なことを教えて頂きたかった、もっとお会いしたかったと悔やまれました。

レーザー臨床では米国レーザー医学会やヨーロッパ皮膚科学会、米国皮膚科学会に所属し、世界に人脈をつくるために、毎年学会発表をするようにしました。

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僕はレーザーを利用する治療科を専門とする様になり、今年で14年目です。

英語による国際学会発表や招待講演も約90回行いましたので、そろそろ目標としていた100回という数字が見えてきました。

もともと新たな分野を学ぶことが好きなので、医療経営に興味を持ち経営学修士号(MBA)の学位を取ったり、フライングドクターを目指してセスナ機の免許を取得し、航空力学を勉強したりしたこともありました。

しかしながら、齢40にして思い立って工学部大学院を社会人受験。

当初アメリカの大学で取得の準備をしたのですが、アプローチしたどの大学も、工学部修士課程からしか入学が認められなかったのです。さすがに日本で医業をしながら修士・博士の5年間は離れられません。

人の縁を通じて、僕の今までのキャリアから判断していただき、工学部博士課程から入学できる大学を探したのです。

この3年間工学部博士課程に在籍し、工学博士号の取得がが本年中に見えるようになり、工学的な研究アプローチがわかるようになって、初めてぼんやりとしか見えてなかった輪郭がくっきりと見えてきました。

僕は医学部工学科もしくは、工学部医学科を専門にしたかったのだ、ということがようやくわかってきたのです。

医療の発展には、それ以前にその分野の工学の発達が不可欠です。

新たな機器が出来ることによって診断・治療能力が上がり、新たな治療が広がるのです。

しかしながら、同じ理系でも、医学と工学は研究アプローチがかなり違います。

臨床医として医学に携わる以上、医師の免許は必要です。

僕はどこかの大学で「医工学部」をつくる企画があったら、是非とも合流して仕事をしてゆきたいですね。

医師として医師国家資格を持つために勉強する学部と、医学にかかわった工学の学位を取るための学部。

もしくは工学博士などの理系の学位を持った人たちに、より短期間に医師免許を取得していただく勉強をしてもらう学部。

世界の200余の国や経済地域の基幹産業の中で、基軸となる1位から3位までの間に医療分野が含まれない国は本当にわずかです。

逆に医工学は、世界がこれから高齢化社会を迎えるにつれ最もニーズがある分野であるとも言えます。

もともと高い工業技術を持ち、世界の中でいち早く高齢者会を迎える日本の強みを生かすことが出来ると思うのです。

今後も、医学工学にまたがるレーザー研究を続けてゆきたいと思います。


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