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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

カメラ光学技術の進化は医療を進化させる CANON SX50HS

おはようございます。

今日1月10日は木曜日でクリニックFはお休みです。

昨晩は診療の後、ちょうど1月9日締め切りだった英語の論文を仕上げました。日本とは時差があるので、アメリカ時間の1月9日。

つまり日本時間の今朝提出。ちょうど間に合いました。

今日は諸処の予定をこなした後、工学部大学院レーザー研究室に行って、研究の続きをしてこようと思っています。

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ところで、このブログを読んで下さっている方は良くご存知だと思いますが、僕はカメラに目がなく、新しいものをついついチェックしてしまいます。

今回年末年始の米国出張には、3台のカメラとiphone5を持ち込みました。

その中で新調したカメラは、こちら。

CANON SX50HSです。

この大きさで、光学50倍ズーム1200mm。

しかもレンズ交換なくマクロ撮影も可能。

一眼レフを主体に使っている人間としては考えられない完全無欠のカメラですね。

 

望遠でかつ、動きが速いのでシャッタースビードの短い、高い撮影技術が必要なサーフィンの撮影も、こんなにあっさり撮れてしまってよいのか?と思うぐらい。

雨天で光量が足りない中ですが、ハワイのノースショアでの写真です。

広角も24mmまでですのでこの通り。

この虹はダブルレインボーになっているのがわかりますか?

さらにこちらは望遠で撮った、「虹の架け橋のまさに開始地点」。

ハワイの強い紫外線もあると思うのですが、ここまでくっきりと映るのは驚きました。

こうしたカメラ光学技術の進化は、科学の世界に応用すると、測定能力の精度の高さに直結しています。

「人はなぜエセ科学に騙されるのか」などを著した、元コーネル大学のCarl Sagan教授はScience is a self-correcting process(科学とは自己修正過程である)という言葉を残しました。

昨日のブログにも書きましたが、より精度の高い測定機器が開発されると、過去の理論では説明できない事象が観測される様になり、さらに新たな理論が構築されてその分野の科学が進化するのです。

医学を始めとした生物学の世界は、顕微鏡の開発による、細胞の発見から発展が始まります。

17世紀にニュートンにより基礎的な理論がほぼ成立していた物理学に比較すると、生物学は20世紀半ばから始まった、まだまだ新しい学問ですよね。

1953年のDNA構造の発見が生物学を大きく進化させます。

僕が医学生だった1980年代から1990年代の前半には、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)機器が、最新医療のトピックとなりました。

これはDNAを増殖させるための原理およびそれを用いた手法のことで、最新最速のPCRの機器、つまり最速のDNAのシークエンス測定機器をいち早く手に入れた研究室が、論文を量産できたのです。

これからの科学の発展はどんな分野が中心になるのでしょう?

僕の専門である医学の中では、自分でも注目している分野が3つあります。

一つは、もちろん僕の専門とするレーザー工学の分野。

レーザーの技術は、レーザーをセンサーとして用いる場合と、治療に利用する場合があります。今世紀には、アト秒発振レーザーの開発により、原子どころか電子動態が測定できるようになり、物質の測定精度が著しく上がりました。レーザー治療機器の分野も新機種の開発が続いています。

もう一つは、生体内の「気体」の動態についての分野。

気体である「NO」に生体内で役割があることがわかり、生体内の「水素」が活性酸素の除去にかかわっていることがわかってきました。特に水素については2007年に日本医科大の太田成男教授がネイチャーに論文の載せたことから一気にメジャー化しました。いよいよ生体内の「気体」の動きが測定できる時代になりつつあります。

最後の一つが、小腸内細菌叢(フローラ)の役割についての分野。

こちらにはカメラの技術の進化が大きな影響を与えています。

小腸は癌になることがない不思議な臓器。

今までは、生体内消化管はとても長い臓器ですが、胃カメラもしくは大腸ファイバーによって、入り口と出口のごく一部しか観察ができませんでした。

日本でも世界に遅れて2008年にようやくカプセル内視鏡が認可されたことから、遅ればせながら視覚による小腸の観察機器を手に入れたということになります。

人一人当たり、100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が存在していて、さらに個人個人によって種類が違います。

人間が作ることができないある種のビタミン類やアミノ酸などが、この腸内細菌によって作られていますし、宿主に対してよい働きをしている善玉菌も多いでしょう。

栄養学が、現在の医学に応用しにくい点は、口から入る非加熱状態の栄養素の量を、体内に入ったと換算している点です。

医学的には消化管内部は、「体の外部」と考えますので、本来ならば、栄養素が口に入った時点ではなくて、消化管で100%吸収されるのか、10%しか吸収されないのかという吸収率を栄養素に「掛け算」しなければならないのですよね。

必要量も相当変わってくるはず。

小腸内細菌叢(フローラ)は、栄養素の吸収率の多寡や、微量元素の補填など、宿主にとっても多くの役割を担っている可能性があります。

カプセル内視鏡によって、小腸内細菌叢(フローラ)を実際に研究することで、栄養学の理論の抜本的革命が行われる可能性があるのです。

こうした研究にはアンチエイジングに関わる医師としては興味がありますね。


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