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BLOG 藤本幸弘オフィシャルブログ

iPS細胞と山中伸弥教授のノーベル賞受賞

おはようございます。

三連休が明けた今日10月9日(火)もクリニックFの診療日です。

連休中に素晴らしいニュースが飛び込んできましたね。

受賞が噂されてはいましたが、日本で最もノーベル医学生理学賞(正確には 医学または生理学賞)に近かった研究者山中伸弥教授 が賞を取りました。

1962年生まれの山中教授は、臨床医としてキャリアをスタートさせ、様々な経験を経た後臨床の中に問題意識を見いだし、99年に医学系研究者として転身。06年にiPS細胞の論文発表。

そして、今年2012年、50歳でノーベル賞受賞なんて、夢のような物語です。

99年というと、僕が医学博士号を取るために医学系大学院の入学試験を受けた年。自分の研究生活と重ねてしまいます。

特に1949年の時点では安全性がわからなかったロボトミー手術に対してポルトガルのエガス・モニス(Egas Moniz)博士へのノーベル賞授与で批判が高まったため、論文が発表されてから短い期間でのノーベル賞は慎重に選択されるのですが、それを超える功績があったのしょう。

さらに、ノーベル賞は生前に授与されることが条件ですが、共同受賞者の英ジョン・ガードン氏が高齢だったことも幸いしたのだと思います。

医師として、研究者として、本当に嬉しい。

そしてなによりも日本人として誇らしいことだと思います。

僕も興奮しています。

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iPS細胞、すなわち人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells)とは、一旦分化してしまった生体の細胞に、4種類(後に3種類)の遺伝子を導入することで、胚性幹細胞のように非常に多くの細胞に分化できる能力を持たせた細胞のことです。

マウスの皮膚の線維芽細胞から山中先生らによって2006年に世界で初めて作られました。

生物を構成する種々の細胞に分化することが出来る分化万能性は、胚盤期の胚の一部である細胞塊や、そこから培養されたES細胞、ES細胞と体細胞の融合細胞、一部の生殖細胞由来の培養細胞など、卵母細胞が関わった細胞の特殊能力でした。

ところが、iPS細胞の開発により、受精卵やES細胞をまったく使用せずに、すでに分化した細胞から、万能細胞を単離培養することが可能となったのです。

人体の皮膚などの細胞から、さかのぼって病気で壊死してしまった火傷後の皮膚細胞や、肝臓の細胞、梗塞後の壊死心筋細胞や神経細胞など細胞を作ることが出来ます。

白血病などの骨髄血液病変などにも福音でしょう。さらに輸血の時に足りない特殊な血液型の補充などにも大きな進歩があるでしょう。

胚細胞が必要な治療は、実際受精した卵子を利用しなければならないなど、倫理的な側面もありましたが、一旦分化したiPS細胞であれば、そうした心配もありません。

さらに、自分の遺伝子を使った細胞で、最新薬の治験もすることが出来るでしょう。

医学の未来が広がリますね。

一方で、どんな細胞へも分化増殖してしまう細胞は、癌細胞と一緒でいくらでも無限に増殖してしまいます、実際の生体利用にはまだハードルがあることも確か。

今後の研究に期待したいところです。

閑話休題(笑)

僕の専門であるレーザー医学/工学の研究分野でも、過去8つのノーベル賞受賞者がいます。

実は日本のレーザー技術のなかに、ノーベル賞が近いと言われている技術があるのをご存知ですか?

それは、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)。

兵庫県に2011年9月に建設された世界最短波長のX線レーザー機器。

というか、大きさ直径450m、長さ1.6kmと巨大な施設。

0.06nmの波長のコヒレントなエックス線レーザー光を出力できる世界唯一の機器です。

一般に利用されるレーザー機器は可視光線の波長(600nm前後)ですので、それらに比較しても分離率10000分の1。

フェムト秒すなわち、千兆分の一秒の観測が出来ます。

細胞内のタンパク質の反応の観測や、分子や原子を観察することによる新たな物質の融合などに使える可能性がありますよね。

スーパーカミオカンデもそうですが、こうした大型の実験機器を作ることが出来るのは、莫大な研究費が国から出ることが条件。

日本の経済的な繁栄とは切っても切れないのです。

過去の蓄積によってできた日本の科学の財産。

不景気になるとこうはいきません。

この機器から次の分野のノーベル賞受賞が出ることを望みます。

 


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