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藤本院長のブログ(新国際学会周遊記)

医工学部が必要な時代へ その② 医学博士、工学博士の取得へ 

2013年01月16日(水) カテゴリー:医療

その①より続く

医師免許取得時に初めて

「既存の科に、自分の行きたい診療科や研究科がない」

ということに気づいても、現実はそんなことを言っている場合ではありません。

時間的猶予もありません。

とにもかくにもまずは祖父の生き方を辿るべく、彼が行っていたペインコントロールの専門を診療と研究対象にしたいと思い、痛みの専門家である麻酔科を選択。

結局麻酔科で5年目に麻酔専門医を取得しましたが、進路の選択が果たして正しかったのかどうか、いつも悩んでいました。

とはいえ、一度自分で決めた道なので、専門医を取得するところまで突き詰めることがまず先決。

それがなされなければ転科はしないと考えていました。

そんなとき大学病院の外来で、ペインコントロールに使用していた低出力レーザー機器を思い出したのです。

そうだ、自分は幼少の頃より顕微鏡やカメラなどの光学機器や機械がなにより好きだった。

いつか理系の研究者になりたいと思っていたのだったっけ・・・という、小さい頃の夢を思い出したのです。

そして、医師免許を生かして理系(工学)の研究に携わることもひょっとしたら可能なのではないか、と考えるようになりました。

米国の場合、メディカルスクールに進学するためには他の科の大学を卒業し、学士を持たなければなりません。

医学生の中には、工学部を卒業した人も多く、こうした環境から米国では医学にも工学にも詳しい人間が、機器開発に携わることができるのです。

しかしながら、同じ理系に分類される医学と工学は似たようで非なるもの。

日本では二つの分野にまたがった専門家は数えるほどしかいません。

医学と工学に長けた専門家は、人工心臓(心臓ペースメーカーを含む)を作る分野か、重量子線治療を含めた放射線医学を扱う分野か、レーザー医療に携わる分野に属する限られた人間です。

これからの医療現場には、もっともっと高性能機器が登場する時代が来るに違いない、そうであればそうした機器を扱って治療にあたる医師ももっと必要になるはずという確信も、僕の背中を押しました。

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僕は理学系研究の中でも特に工学(光学)に興味がありました。

そうなるとやはり光学機器の英知を結集したレーザー機器を専門にしたい。

レーザーはアインシュタインにより1920年代に発表された、「誘導放出の研究」により理論を提案されて80年。

さらにメイマン博士によりルビーレーザー機器がつくられたのが1960年。

自然界には存在しない人知が作り出したコヒレントな光。

まだまだ工学的にも新しい分野です。

レーザーが医療に応用されている局面は沢山あります。

古くはレーザーメスを主体とした外科領域、皮膚科・形成外科領域、泌尿器科領域、歯科領域、眼科領域さらには痛みの治療。

レーザーの医学応用には、診断領域と治療領域の二つの利用方法があります。臨床治療応用では、やはり皮膚科・形成外科領域での応用が最も多い。

医師となって6年目に大学院医学博士課程に進学。4年間の在学中に、自分の生活のために青山外苑前、六本木、そして表参道にレーザークリニックを開業しました。

これら3つのクリニックは、大学院修了後に東京大学医科学研究所で、大学職員(助手)になる前に、経営権を譲渡売却しました。国家公務員は兼業は出来ませんでしたので。

大学院医学系研究科では皮下の免疫細胞の司令塔であるマストセルを研究テーマにしました。

皮膚・免疫系の勉強を研究者の立場から勉強し直すことができたのは、今の自分のキャリアに生きていると思います。

僕の医学博士号の主査は、東京大学皮膚科の前教授の玉置邦彦先生にお願いしました。

玉置教授は素晴らしい人格者でした。

2010年に急逝されたときには大変驚き、もっと様々なことを教えて頂きたかった、もっとお会いしたかったと悔やまれました。

レーザー臨床では米国レーザー医学会やヨーロッパ皮膚科学会、米国皮膚科学会に所属し、世界に人脈をつくるために、毎年学会発表をするようにしました。

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僕はレーザーを利用する治療科を専門とする様になり、今年で14年目です。

英語による国際学会発表や招待講演も約90回行いましたので、そろそろ目標としていた100回という数字が見えてきました。

もともと新たな分野を学ぶことが好きなので、医療経営に興味を持ち経営学修士号(MBA)の学位を取ったり、フライングドクターを目指してセスナ機の免許を取得し、航空力学を勉強したりしたこともありました。

しかしながら、齢40にして思い立って工学部大学院を社会人受験。

当初アメリカの大学で取得の準備をしたのですが、アプローチしたどの大学も、工学部修士課程からしか入学が認められなかったのです。さすがに日本で医業をしながら修士・博士の5年間は離れられません。

人の縁を通じて、僕の今までのキャリアから判断していただき、工学部博士課程から入学できる大学を探したのです。

この3年間工学部博士課程に在籍し、工学博士号の取得がが本年中に見えるようになり、工学的な研究アプローチがわかるようになって、初めてぼんやりとしか見えてなかった輪郭がくっきりと見えてきました。

僕は医学部工学科もしくは、工学部医学科を専門にしたかったのだ、ということがようやくわかってきたのです。

医療の発展には、それ以前にその分野の工学の発達が不可欠です。

新たな機器が出来ることによって診断・治療能力が上がり、新たな治療が広がるのです。

しかしながら、同じ理系でも、医学と工学は研究アプローチがかなり違います。

臨床医として医学に携わる以上、医師の免許は必要です。

僕はどこかの大学で「医工学部」をつくる企画があったら、是非とも合流して仕事をしてゆきたいですね。

医師として医師国家資格を持つために勉強する学部と、医学にかかわった工学の学位を取るための学部。

もしくは工学博士などの理系の学位を持った人たちに、より短期間に医師免許を取得していただく勉強をしてもらう学部。

世界の200余の国や経済地域の基幹産業の中で、基軸となる1位から3位までの間に医療分野が含まれない国は本当にわずかです。

逆に医工学は、世界がこれから高齢化社会を迎えるにつれ最もニーズがある分野であるとも言えます。

もともと高い工業技術を持ち、世界の中でいち早く高齢者会を迎える日本の強みを生かすことが出来ると思うのです。

今後も、医学工学にまたがるレーザー研究を続けてゆきたいと思います。


医工学部が必要な時代へ その① 医者になったはいいけれど

2013年01月16日(水) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日1月16日(水)はクリニックFの診療日です。

雪が降った後、一段と冷え込みましたね。都心も渋滞はだいぶ解除されたものの、路面に氷が残っているところも多々あります。引き続き気をつけてください。

さて、今日のブログは、少々真面目なお話。

医工学部という新しい学部の提案です。

書いているうちにちょっと長くなってしまったので、二回に分けてアップしますね。

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僕が現在研究の対象としているレーザー・アンチエイジングは、「美容皮膚科」という大きな枠組みの中にあるひとつの専門分野であると言えるかと思います。

2013年の段階で美容皮膚科に携わる医師は、圧倒的に皮膚科医か形成外科医(もしくは美容外科医)が多いと言っていいでしょう。

皮膚の専門家が治療の延長として美を追求すべく、ピーリングや注入剤、レーザー・光治療器を扱ったり、外科の特殊分野である形成外科医や美容外科医が造形に携わり、メスによって美を追求する延長で、肌を美しくするレーザー・光治療を扱ったり、その他の施術を行うわけです。

そんな中で、僕はといえば米国(AAD)や欧州(EADV)では皮膚科学会の会員ですし、日本では日本形成外科学会の学会員となっていますが、あくまでそれらはレーザー治療が前提にあり、その治療症例を報告するために所属しています。

すなわち、厳密に僕はそのどちらにも属していません。

意識の中では、自分は皮膚科医でも形成外科医でも、ましてや美容外科医でもないのです。

自分のバックグラウンドとして現段階で最もしっくりくるものは、米国レーザー医学会(ASLMS)専門医かもしれません。

そのため、日本の学会では少々変わり者扱いされることも、しばしば? です(笑)。

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僕の母方の祖父は明治生まれの皮膚科医で、昭和の初めに医学博士号を取得した人でした。

知的好奇心や研究心が旺盛で、若い頃は研究者としても多くの功績を残しました。

祖父の医師としての人生の一部は、祖父の死後、テレビ朝日系列の鳥越俊太郎さんの「ザ・スクープ」で取り上げられたこともあります。

晩年は静岡県三島市で医院を開業していました。

初島近くの沖で海水を採取し、医院で抽出して、オリジナルの神経痛に対する痛み止めの注射薬を作っていた時期もあると、クリニックを手伝っていた母に聞きました。

現在でいうペインクリニック診療という、痛み治療の先駆けのような感じの治療でしょうか。

そんな祖父をもつ僕でしたが、僕自身は初めから医師を目指したわけではありませんでした。

以前に書いたことがありますが、目指さなかった一つの理由は、名医の誉れ高かった祖父が、これからはもう医者の時代ではないと5人の子供を誰一人として医者にしなかったこと。

これからは医者に教える人になりなさいと、理学系や薬学系の研究者にしたのです。

昭和の初めにこの考え方が正しかったのかわかりませんが、その後医学が理学や薬学の発展のおかげで飛躍的に進歩したのは事実です。

また、昭和の初めに比較すると、医療訴訟なども増え、医師が暮らしにくくなりました。

僕が高校3年生の時に祖父が亡くなり、一族に医者が誰もいなくなります。

その後に初めて大学受験を迎えた孫が僕でした。

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一方僕は高校生の時には外交官に憧れて、もともと理系が得意だったのに、受験のために文転。東大法学部を受験して、結果、見事に落ちました。

そのため、すべり止めとしていた慶應義塾大学経済学部に入学し一度は籍を置きましたが、結局自分の進路を改めてそこで考え直すことになります。

外交官となる夢に遠くなった今、では自分はどんなことを大学で学び、卒業後どんな仕事に就くべきなのかということを考えざるを得なくなったわけです。

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悩みに悩んだ僕は、文系よりは元々好きで得意だった理系を、理系の中でも祖父の跡を・・・と考え、他大学の医学部を再受験して医師の道を選択することになります。

医師といっても、様々な専門の医師がいることをこの段階で漠然と理解していましたが、とはいえ自分自身はどういった専門の医師になるのかといったことは、正直この段階でまだ考えていませんでした。

医学生の時は、自分は外科系の医師になるのだろうという漠然とした思いはありましたが、国家試験までに6年間もあるので、とにもかくにもまずは医師免許を取得することが先。その後臨床実習までの期間に専門を決めれば良いだろうと思っていたのです。

読書が好きだったのもあって、医療を扱った小説や本も本当に沢山読みました。

中でも、 A.J.クローニンの「城砦」は記憶に残りましたね。

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そうして無事国家試験に合格し、医師免許を取得する歳になって、はて、と気づくことになるのです。

いくら考えても、既存の科に自分の行きたい診療科や研究科がない、ということに(苦笑)。

医師の仕事とは、人間の生命という大きなテーマに対し、自分の何を捧げ、どう役に立つかということに尽きるかと思います。

人間の生命とは、他の生命体とは違って体と心の両方によって維持されます。

時に、体と心のどちらもが、医師の力量によって寿命が左右される場合もあるのです。

基礎研究で役に立つのか、それとも臨床で役に立つのか。

自分の特性の中で、一体どこの何を使えば良い医師となれるものなのか。

自分でなければできない仕事とは、専門とは、いったいなんなのだろう?

20代半ばのまだ若き、社会経験の乏しい青年であった僕は、ここでまったく途方に暮れてしまったのです。

その②に続く


カメラ光学技術の進化は医療を進化させる CANON SX50HS

2013年01月10日(木) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日1月10日は木曜日でクリニックFはお休みです。

昨晩は診療の後、ちょうど1月9日締め切りだった英語の論文を仕上げました。日本とは時差があるので、アメリカ時間の1月9日。

つまり日本時間の今朝提出。ちょうど間に合いました。

今日は諸処の予定をこなした後、工学部大学院レーザー研究室に行って、研究の続きをしてこようと思っています。

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ところで、このブログを読んで下さっている方は良くご存知だと思いますが、僕はカメラに目がなく、新しいものをついついチェックしてしまいます。

今回年末年始の米国出張には、3台のカメラとiphone5を持ち込みました。

その中で新調したカメラは、こちら。

CANON SX50HSです。

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この大きさで、光学50倍ズーム1200mm。

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しかもレンズ交換なくマクロ撮影も可能。

一眼レフを主体に使っている人間としては考えられない完全無欠のカメラですね。

望遠でかつ、動きが速いのでシャッタースビードの短い、高い撮影技術が必要なサーフィンの撮影も、こんなにあっさり撮れてしまってよいのか?と思うぐらい。

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雨天で光量が足りない中ですが、ハワイのノースショアでの写真です。

広角も24mmまでですのでこの通り。

この虹はダブルレインボーになっているのがわかりますか?

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さらにこちらは望遠で撮った、「虹の架け橋のまさに開始地点」。

ハワイの強い紫外線もあると思うのですが、ここまでくっきりと映るのは驚きました。

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こうしたカメラ光学技術の進化は、科学の世界に応用すると、測定能力の精度の高さに直結しています。

「人はなぜエセ科学に騙されるのか」などを著した、元コーネル大学のCarl Sagan教授はScience is a self-correcting process(科学とは自己修正過程である)という言葉を残しました。

昨日のブログにも書きましたが、より精度の高い測定機器が開発されると、過去の理論では説明できない事象が観測される様になり、さらに新たな理論が構築されてその分野の科学が進化するのです。

医学を始めとした生物学の世界は、顕微鏡の開発による、細胞の発見から発展が始まります。

17世紀にニュートンにより基礎的な理論がほぼ成立していた物理学に比較すると、生物学は20世紀半ばから始まった、まだまだ新しい学問ですよね。

1953年のDNA構造の発見が生物学を大きく進化させます。

僕が医学生だった1980年代から1990年代の前半には、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)機器が、最新医療のトピックとなりました。

これはDNAを増殖させるための原理およびそれを用いた手法のことで、最新最速のPCRの機器、つまり最速のDNAのシークエンス測定機器をいち早く手に入れた研究室が、論文を量産できたのです。

これからの科学の発展はどんな分野が中心になるのでしょう?

僕の専門である医学の中では、自分でも注目している分野が3つあります。

一つは、もちろん僕の専門とするレーザー工学の分野。

レーザーの技術は、レーザーをセンサーとして用いる場合と、治療に利用する場合があります。今世紀には、アト秒発振レーザーの開発により、原子どころか電子動態が測定できるようになり、物質の測定精度が著しく上がりました。レーザー治療機器の分野も新機種の開発が続いています。

もう一つは、生体内の「気体」の動態についての分野。

気体である「NO」に生体内で役割があることがわかり、生体内の「水素」が活性酸素の除去にかかわっていることがわかってきました。特に水素については2007年に日本医科大の太田成男教授がネイチャーに論文の載せたことから一気にメジャー化しました。いよいよ生体内の「気体」の動きが測定できる時代になりつつあります。

最後の一つが、小腸内細菌叢(フローラ)の役割についての分野。

こちらにはカメラの技術の進化が大きな影響を与えています。

小腸は癌になることがない不思議な臓器。

今までは、生体内消化管はとても長い臓器ですが、胃カメラもしくは大腸ファイバーによって、入り口と出口のごく一部しか観察ができませんでした。

日本でも世界に遅れて2008年にようやくカプセル内視鏡が認可されたことから、遅ればせながら視覚による小腸の観察機器を手に入れたということになります。

人一人当たり、100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が存在していて、さらに個人個人によって種類が違います。

人間が作ることができないある種のビタミン類やアミノ酸などが、この腸内細菌によって作られていますし、宿主に対してよい働きをしている善玉菌も多いでしょう。

栄養学が、現在の医学に応用しにくい点は、口から入る非加熱状態の栄養素の量を、体内に入ったと換算している点です。

医学的には消化管内部は、「体の外部」と考えますので、本来ならば、栄養素が口に入った時点ではなくて、消化管で100%吸収されるのか、10%しか吸収されないのかという吸収率を栄養素に「掛け算」しなければならないのですよね。

必要量も相当変わってくるはず。

小腸内細菌叢(フローラ)は、栄養素の吸収率の多寡や、微量元素の補填など、宿主にとっても多くの役割を担っている可能性があります。

カプセル内視鏡によって、小腸内細菌叢(フローラ)を実際に研究することで、栄養学の理論の抜本的革命が行われる可能性があるのです。

こうした研究にはアンチエイジングに関わる医師としては興味がありますね。


iPS細胞と山中伸弥教授のノーベル賞受賞

2012年10月09日(火) カテゴリー:医療

おはようございます。

三連休が明けた今日10月9日(火)もクリニックFの診療日です。

連休中に素晴らしいニュースが飛び込んできましたね。

受賞が噂されてはいましたが、日本で最もノーベル医学生理学賞(正確には 医学または生理学賞)に近かった研究者山中伸弥教授 が賞を取りました。

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1962年生まれの山中教授は、臨床医としてキャリアをスタートさせ、様々な経験を経た後臨床の中に問題意識を見いだし、99年に医学系研究者として転身。06年にiPS細胞の論文発表。

そして、今年2012年、50歳でノーベル賞受賞なんて、夢のような物語です。

99年というと、僕が医学博士号を取るために医学系大学院の入学試験を受けた年。自分の研究生活と重ねてしまいます。

特に1949年の時点では安全性がわからなかったロボトミー手術に対してポルトガルのエガス・モニス(Egas Moniz)博士へのノーベル賞授与で批判が高まったため、論文が発表されてから短い期間でのノーベル賞は慎重に選択されるのですが、それを超える功績があったのしょう。

さらに、ノーベル賞は生前に授与されることが条件ですが、共同受賞者の英ジョン・ガードン氏が高齢だったことも幸いしたのだと思います。

医師として、研究者として、本当に嬉しい。

そしてなによりも日本人として誇らしいことだと思います。

僕も興奮しています。

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iPS細胞、すなわち人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells)とは、一旦分化してしまった生体の細胞に、4種類(後に3種類)の遺伝子を導入することで、胚性幹細胞のように非常に多くの細胞に分化できる能力を持たせた細胞のことです。

マウスの皮膚の線維芽細胞から山中先生らによって2006年に世界で初めて作られました。

生物を構成する種々の細胞に分化することが出来る分化万能性は、胚盤期の胚の一部である細胞塊や、そこから培養されたES細胞、ES細胞と体細胞の融合細胞、一部の生殖細胞由来の培養細胞など、卵母細胞が関わった細胞の特殊能力でした。

ところが、iPS細胞の開発により、受精卵やES細胞をまったく使用せずに、すでに分化した細胞から、万能細胞を単離培養することが可能となったのです。

人体の皮膚などの細胞から、さかのぼって病気で壊死してしまった火傷後の皮膚細胞や、肝臓の細胞、梗塞後の壊死心筋細胞や神経細胞など細胞を作ることが出来ます。

白血病などの骨髄血液病変などにも福音でしょう。さらに輸血の時に足りない特殊な血液型の補充などにも大きな進歩があるでしょう。

胚細胞が必要な治療は、実際受精した卵子を利用しなければならないなど、倫理的な側面もありましたが、一旦分化したiPS細胞であれば、そうした心配もありません。

さらに、自分の遺伝子を使った細胞で、最新薬の治験もすることが出来るでしょう。

医学の未来が広がリますね。

一方で、どんな細胞へも分化増殖してしまう細胞は、癌細胞と一緒でいくらでも無限に増殖してしまいます、実際の生体利用にはまだハードルがあることも確か。

今後の研究に期待したいところです。

閑話休題(笑)

僕の専門であるレーザー医学/工学の研究分野でも、過去8つのノーベル賞受賞者がいます。

実は日本のレーザー技術のなかに、ノーベル賞が近いと言われている技術があるのをご存知ですか?

それは、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)。

兵庫県に2011年9月に建設された世界最短波長のX線レーザー機器。

というか、大きさ直径450m、長さ1.6kmと巨大な施設。

0.06nmの波長のコヒレントなエックス線レーザー光を出力できる世界唯一の機器です。

一般に利用されるレーザー機器は可視光線の波長(600nm前後)ですので、それらに比較しても分離率10000分の1。

フェムト秒すなわち、千兆分の一秒の観測が出来ます。

細胞内のタンパク質の反応の観測や、分子や原子を観察することによる新たな物質の融合などに使える可能性がありますよね。

スーパーカミオカンデもそうですが、こうした大型の実験機器を作ることが出来るのは、莫大な研究費が国から出ることが条件。

日本の経済的な繁栄とは切っても切れないのです。

過去の蓄積によってできた日本の科学の財産。

不景気になるとこうはいきません。

この機器から次の分野のノーベル賞受賞が出ることを望みます。


日本トリム講演会 アンチエイジングと水 表参道 Tokyo Baby Cafe

2012年10月03日(水) カテゴリー:医療

プラハ出張から帰国して一日半。少々まだ時差ボケは残っていますが、体調は良いようです。

今日は朝から、表参道にあるTokyo Baby Cafeで「アンチエイジングと水」について、講演をさせていただきました。

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場所は、表参道の裏。とんかつ まい泉のななめ前あたり。

地下にあるお店で、お母さんと子どもが一緒に過ごすことのできるカフェのようです。初めてこの場所に来ましたが、小さな子供とお母さんが遊びに来ることの出来る場が都心にあるのは便利ですよね。

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講演内容は「アンチエイジングと水」について。

今回は、アンチエイジング医療の定義について。

活性酸素が老化と病気を進めるメカニズムについて。

さらに現在活性酸素を除去するために水素を利用した英文論文を10編ほど引用し、それぞれについてコメントをさせていただきました。

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今回の講演にあたって、過去10数年間の英文論文を調べてみてわかりましたが、気体である水素分子を抗酸化治療に使うことについて、特にこの5年でかなり多くの発表がなされているのです。

20世紀には、生体内での気体の動態は、測定することはほとんど不可能だったと思うのですが、特に同じ気体である一酸化窒素(NO)が、血管内皮細胞やマクロファージなどから産生され、生体内で機能を持つということが発見されて以来、生体内気体の機能に注目が集まってきました。

ここで水素という気体の生体内での働きが注目されて、研究されてきたのかもしれません。

酸素を糖と反応させて、ミトコンドリアで代謝すると、2%の活性酸素が生まれます。

一般的な活性酸素の代謝を考えると

1.SO(スーパーオキシド)がSOD(スーパーオキシドジムスターゼ)によってH2O2(過酸化水素)に変化する。

2.さらに発生したH2O2がカタラーゼやGSTによってH2O(水)にして無毒化する。

という、二段階の経路があります。

しかしながら、SODやカタラーゼ、GSTの除去能力が低下すると、H2O2を代謝できず、有害なヒドロキシラジカル(•OH)が発生します。

この悪性活性酸素であるヒドロキシラジカル(•OH)を除去していたのが

食事で摂取される抗酸化物質

および

腸内細菌によって作られる水素

であったともいえるのです。

アルカリイオン水などの機能水は、効能としては胃腸状況の改善という枠しか厚労省の認可を取れていませんが、本来は電解してアルカリイオン水を生成する上で、大量に含まれていた水素分子が様々な役割を担っていた可能性はあります。

水素分子はこの世の中で、最も小さな分子で、電離した直後より拡散していきますので、ペットボトルやアルミパックでの保存は難しいとは思います。

奇跡の水として知られるルルドやノルデナウの泉などの水を飛行機で移動して測定しても普通の水と何ら変わりがなかったのはこのためでしょう。

電解されたばかりの水を利用することが条件ですが、今後飲用の水素水の効果がより明らかになってゆくと思います。

水素分子の入った水を飲むことにより、消化管から水素分子が体内に拡散され、口腔内からの水素濃度が上昇することがわかっています。

有害な活性酸素を、体内で水素分子が除去する仕組みが解明できるはずです。

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医学的にはちょっと高度でアカデミックな講演になってしまいましたが、皆さん楽しそうに聞いていてくださったので安心しました。

ご一緒させていただいた歯科医師の宝田恭子先生と一緒に写真を撮っていただきました。

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会場のせいもあって、講演後も和気あいあいとした雰囲気で皆さんのご質問に答えることができました。

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楽しく過ごさせていただきました。

次回からはヨーロッパ出張記を始めますね。


超有名英文医学雑誌からのレヴューワーの依頼

2012年10月02日(火) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日10月2日はクリニックFの診療を再開しています。

ちょっと留守していたため、残務が沢山。患者さんも沢山。

時差ボケの中、集中力を切らさずに何とか頑張っています。

さて、帰国してメールを開けてみると、超有名英文医学雑誌からレヴューワーの仕事の依頼が。

医学雑誌のレビューワーとは、その論文が出版に値するか、過去に執筆した論文などから専門分野の近い学者が編集者から依頼される仕事。

たいてい一流誌だと数名以上のレビューワーが論文の判定をします。

すごい名誉なことだなあと、論文の題名をみてみると、確かに自分の研究内容と良く似ている!!

これはレビューの仕事も来るなと。

しかし、文章を開けてわかりました。

なんと、先日の共同研究で自分も加わった研究。

しかも、僕は4番目の著者に入っているのです。

I have checked the manuscript and that is possible publication.
But unfortunately, I can not review because I am one of the authors of this article.
Coincidence.

と返信しておきました。

とほほ(笑)。

先ほど、編集部から、「混乱させて申し訳なかった。知らせてくれてありがとう。」

というメールが届いていましたよ。


「アンチエイジングと水」のセミナー 

2012年09月20日(木) カテゴリー:医療

株式会社日本トリム社の企画で、10月3日に表参道の Tokyo Baby Cafe にて「アンチエイジングと水」のセミナーの講師をさせていただくことになりました。

昨晩は、診療後にホテルニューオータニで、もう一人の講師である歯科の宝田恭子先生と打ち合わせをさせていただきました。

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実際のセミナーでは、僕が「病気や美肌と活性酸素の関係」について。

宝田先生が「食生活と水」について講演を担当することになりました。

良くテレビで拝見する宝田先生ですが、本当に溌剌とされて仕事を楽しんでいらっしゃって、実年齢をお聞きしたら、驚いてしまいました。

いわゆる美魔女ですね(笑)。

実際にお話をしてみると、アンチエイジングドクターと言われる先生方に、共通の知り合いがとても多いことに気づきました。

聞きに来てくださった方に、楽しんでいただける会にしたいと思っています。

10月3日というと、ヨーロッパ出張から帰ったばかりですが、体調を崩さず、頑張りたいと思います。


ボトックスとレーザーの複合治療の講演

2012年08月27日(月) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日は8月27日。最終週ですね。

今日もクリニックFの診療日です。

昨日の日曜日は、ボトックスを販売するアラガン社の講演会が六本木のリッツカールトンでで行われました。

サンフランシスコのベイエリア・レーザー研究所の皮膚科医で、レーザー医師としても名高いDr. Vic Narurkar, MDの講演がありましたので、行ってきました。

車で会場に行ったのですが、昨日のミッドタウンは灼熱でした。

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ですが、リッツカールトンの目の前の借景はここが都心と思えないほど、綺麗ですよね。

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僕はちょうど10年前、医学部大学院に在籍していたときに、六本木でクリニックを経営していたことがあるのですが、その当時はこの地域は工事中でした。

このような景色になるとは想像もできませんでしたね。

会場に入ると、華やかな女医さんがたくさんいて、ちょっと気後れしたのですが、いつもレーザーのことを教えていただいている、みやた形成外科・皮ふクリニックの宮田成章先生を見つけ、隣に座らせていただきました。

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Dr. Vic Narurkarの講演は、ちょうどお昼時に、こんな軽食とともに始まりました。

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講演は、レーザーとボトックスビスタのコンビネーションセラピーについての総論的なもの。

英語の講演はゆっくりとしていて、とても聞き取りやすかったです。

同じ話を、ネイティブが相手のアメリカで聞くときは、1.5倍速だなあ(笑)と思いながら、聞いていました。

希望としては、もう少しボトックスの禁忌事項について、一歩突っ込んだ本音の話を聞きたかったですね。

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講演の後、挨拶に行くと、僕の名前は憶えていてくれたようで、先日米国レーザー医学会誌に通ったばかりの僕の論文を進呈して帰ってきました。

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帰るとき、ミッドタウンで人だかりを見つけました。

なんだろうと思って近づいてみると、

ロンドンオリンピックの内村選手の金メダルでした。

皆が写真を撮っていましたよ。

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考えてみれば、ミッドタウンには内村選手が所属するコナミの本社がありますものね。


三国志劉備玄徳の母 中国高級茶

2012年08月22日(水) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日8月22日はクリ二ックFの診療日です。

昨日、中国の高級茶なるものをいただきました。

このような立派な箱に入った、見るからに豪華そうなもの。

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このお茶のセットは、何でも中国の高官相手に、20セット限定で作られたものなのだそうですが、ご厚意で一つおすそ分けをいただいたのです。

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中国は古くからお茶の効能について、研究が進んでいますよね。

日本とは違った濁った河の水を、お茶によって殺菌して飲んだ文化から始まっていますので、どちらかというと漢方薬に近い印象だったのではないでしょうか?

高価なお茶ということを聞くと、僕はいつも三国志の始まりのシーンを連想します。

吉川三国志の中にも、劉備の登場シーンでお茶が効果的に使われていますよね。

漢王朝の血を引く劉備玄徳は、簾(すだれ)やむしろを織って売り歩いて生計を立てていましたが、丸二年間働いた稼ぎを持って、黄河のほとりで、洛陽船から本物のお茶を購入しようとします。

ところがこの時代のお茶は高額で、貴族や、一部の病人しか飲むことができない時代。

劉備の2年間の稼ぎをもってしても、お茶を買える金額にはなりませんでした。

劉備は、故郷に住む母にお茶というものを飲ませてあげたいという親孝行の一心で、父の形見であった剣の柄頭から紐でぶら下がっている瑯玕(ろうかん)を手放して、お茶を手に入れるのです。

劉備は、黄巾党などの盗賊などからお茶を守りながら家路につきます。

年老いた母は、遠路はるばる高価なお茶を買ってきた劉備に、感謝の気持ちを述べますが、ふと形見の剣の瑯玕(ろうかん)がないことに気づきます。

瑯玕(ろうかん)と引き換えにお茶を手に入れたことを話すと、母は物事の優先順位と大局を見誤った劉備に激怒し、私の育て方が間違っていたと、お茶をすべて川に捨ててしまいます。

形見の剣は、劉備の一家が漢王朝の末家であることを示す大切な印だったのです。

劉備はこの母の叱責から、自分の血筋と宿命を再認識し、漢王朝の復興を目指して邁進してゆくのですが、三国志の最初のわずか数枚のこの物語だけでも、劉備の母の愛とその先見性、さらにその後の劉備の性格を示す、多くの伏線を含んでいますよね。

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先ほどお茶を早速いただきましたが、本当に素晴らしい香りです。

クリニックFの患者さんには施術後にお茶をお出ししているのですが、暫く患者さんにも高級茶を楽しんでいただこうと思います。


開業予定のドクター来院 病気であること 健康であること

2012年06月10日(日) カテゴリー:医療

クリニックFに、土曜日終業間際に来客がありました。

長いこと大学病院にいらして、レーザー皮膚科クリニックを来春ご開業予定の先生が、クリニックの見学にいらしたのです。

開業予定の先生方の見学をクリニックFでは受け入れていますので、ひと月に数名ですが、こうした来客があるんですよね。

レーザー光治療は、アメリカでこの10年間に開発された治療技術ですが、デバイスラグの問題で日本で認可されている機器も数に限りがあります。

大学病院で診療をされている先生は、知識としてレーザー/光治療のことは知っていても、実際に機器を使う経験ができない場合もあるのです。

レーザー光治療器は、治療器具や道具の一つですので、実際に診療に使用した経験がないと良し悪しも判断できませんよね。

しかも、大学病院に最新のレーザー機器が揃っていないと、ドクターのトレーニングもできない。

日本でレーザー治療が難しいとされる一つの理由はここにあります。

見学後の会食時に話題になったのが、「病気であること」と「健康であること」の概念について。

僕が大学病院にいた約10年の時期は、病気の人しか診ませんでした。

病気を治す、それこそが医師の仕事であり、医学部で病気について習い、病気の専門家としての知識や経験は得たと思うのですが、どのような状態が健康なのかということを深く考えてこなかったのです。

ひとえに「病気」の人ばかりを診察し、「病気と健康」というように二元的に対比してしまうと、「健康ではない=病気」という考えになるのもある意味当然かもしれませんね。

けれど、多分思い当たる方は多いかと思いますが

「病院で治療してもらうほどに病気でもないけれど、自分が健康かといえばそれについては自信がない」

という人が本当に多いのも現代です。

それを何かの「病気」にカテゴライズして、薬を出すことも可能でしょう。しかしながら、この「薬」ではなかなか改善することもないのが、難しいところです。

今僕は、クリニックFで、健康な人を診察しています。

「健康な人を診察している」という意味は、保険診療の対象となる病気を診ていない、ということです。

僕の領域で言えば、皮膚に現れる病気=皮膚疾患を診察し治療を行っていないのです。

そうした診療スタイルをとって久しく、欧米ならともかくこの日本でこの診療スタイルが受け入れられるのかな? と思った時期もありましたが、なんとか今日までやってきました。

そんな中で思うことのひとつに、健康な状態とひとまとめにされるものが、実際には乖離があり、その度合いというものは大きく違うのだ、ということがあります。

一般的にもわかりやすい言葉を使ったイメージでいうと、

「完璧な体調」

「すごく健康」

「おおむね健康」

「普通の健康」

「疲れが取れにくい健康」

「ちょっと体調が悪い健康」

「病気の予備軍となる健康」

「病気になりかけの健康」

「病気」

と、様々なグレードの健康な状態があり、その中の一部が「病気」

ということなのです。

アンチエイジング医療・美容レーザー皮膚科という科は、それこそ健康な人しか診ません。

しかしながら、健康を専門とする医師に定期的に健康な状態を診てもらうことで、得られるメリットも大きい。

上記の「健康」の文字を、「肌」と書き換えれば

「シミ、あざを取る」という、旧来のレーザー治療以外にも、より健康で、若々しい肌を作るのに、様々なレーザー光治療機器を使うことがイメージできると思います。

この10年間にアメリカで開発され、世界中に広まったレーザー光治療の一番大きなメリットは、肌に対してレーザーをメンテナンス照射することで、健康な肌をより健康に、美しくすることができるということに尽きるのです。

これからは日本で最も人口の多い団塊の世代の人たちが高齢化します。

いかに「健康であるか」という議論を、「健康」の専門家として提供できるように知識を蓄えてゆきたいですね。


心拍解析による、自律神経機能評価の研究

2012年03月13日(火) カテゴリー:医療

おはようございます。

今日3月13日もクリニックFの診療日です。

今日の朝は、医療機器メーカーとの打ち合わせで、クリニックに早く出勤しました。

開発中の新しい機器の効能について、自律神経の測定機器を使用して、研究ができないかと相談を受けていたのです。

美は健康の上に初めて成り立つもの。

自律神経の安定化は、健康に欠かせませんので、美容レーザー機器を扱う人間にとっては、自律神経の安定化は非常に興味のある研究テーマでもあります。

今日、使用した機器はこんなもの。

カルフォルニアのBIOCOMテクノロジーという会社の機器でした。

Img_4781

僕の指につけた脈波測定器が見えますか?

ここで取得したデータをコンピューター解析するのです。

今回使用しようとしている測定機器は、心拍変動解析による自律神経機能評価のもの。

ちょうど10年ちょっと前、1999年のことですが、僕も自律神経の研究室で研究をして、自律神経学会誌に英文論文を書いたことがあります。

Autonomicreport

人間の体は、そのバランスを、自律神経系の交感神経と副交感神経を併律することで保っています。

この自律神経系とは、ドイツのビュルツブルグ大学生理学研究所名誉教授であるRobert F. Schmidt博士が研究、確立された分野。

現代の生理学の基礎の一つとなっていますよね。

この自律神経の研究の際に、シュミット博士の一番弟子といわれた(故)佐藤昭夫博士にご指導いただきましたので、僕はシュミット博士直系の孫弟子ということになります。

理論上はほぼ構築されたこの交感神経と副交感神経理論。

しかしながら、この交感神経と副交感神経の実際の緊張度を、生体で測定するため機器は長い間ありませんでした。

一つ有効な手段と考えられたのが、心電図のRR間隔の揺らぎをスペクトル解析を行う方法。

ちょうど10年前の、僕が東京都健康長寿医療センターの自律神経の研究室にいたころにこの手法は注目されていたのですよね。

当時は心電図からデータをおこしていたのですが、この機器は脈波からデータを取っています。

厳密にいうと、本来であれば心電図上の電気データは、脈波とは乖離があります。

脈波をRR揺らぎ解析に利用するのは問題があるといわれていたのですが、機器を見ると、波の形をした脈波の波の微分値を測定することで、この問題をクリアしているように見えます。

Img_4780

まず、上記の様に5分間測定した心拍の揺らぎを測定します。

それらのデータをもとに揺らぎをスペクトル解析すると

超低周波VLF(0.0033Hz-0.04Hz)

低周波LF(0.04Hz-0.15Hz)

高周波HF(0.15Hz-)

の三つの領域に分けることができます。

このうち

LFは、交感神経+副交感神経の緊張度を

HFは副交感神経の緊張度を示すというデータがあるのです。

そこで、交感神経の緊張度を示すためにLF/HFレシオを算出するとそれぞれの緊張を調べることができるというわけです。

Img_4782

測定されたデータは、縦軸が副交感神経、横軸が交感神経のデータとして出てきます。

僕の場合、両者ともにバランスがとれた状態のようですね。

Img_4783

こちらはもう少し細かく取得したデータ。

取得データの再現性や、さらに呼吸や会話などによって引き起こされる誤差データをいかに排除するかが課題ですが、一定数の母集団となるデータを取得すれば、評価できるのではないかと思いました。

今後の共同研究が楽しみです。


花粉症にボトックス

2012年03月03日(土) カテゴリー:医療

誕生日を迎え、「四十にして惑わず」といきたいところですが、3月生まれの僕はこの時期そうも言ってられない事情があるのです。

それは、必ず春を迎える頃になると花粉症に振り回されるから。

毎年春には米国皮膚科学会と、米国レーザー医学会があって、アメリカに出張するとすぐに軽快するのですが、日本の空域に入ると、途端に花粉症が再発するのです。

毎年泣かされています(苦笑)。

ところが今年はそうひどくなく、いやむしろ未だかつてないくらい好調にこの季節を迎えています。

ボトックスが花粉症に効くという話をご存知ですか?

もともとアセチルコリンのブロッカーであるボツリヌス毒素。

顔面のしわ取りだけではなく、多汗症や腋臭症に対しても使用されるのですが、鼻粘膜には注射をしなくても、点鼻するだけでよく吸収されます。

僕も以前から聞いていましたが、ボトックスを常に使用している人に対して点鼻をしてしまうと、皮下に注射するよりも抗体産生が高まる(つまり持続時間が短くなり、効きにくくなる)というリスクがあり、ボトックスを花粉症の治療に適応するのは躊躇していたのです。

しかしながらインタール(花粉症を防ぐ抗アレルギー剤の点眼、点鼻薬)では僕の花粉症は毎年効果がなく、考えてみれば僕自身はボトックス注射をしているわけではありませんし、今後も打つ予定がないので、リスクを考えるに及ばず、今年初めて自分に打ってみました。

打ち方はこんな具合です。

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注射の工程をブログの読者にわかりやすいよう、こんな写真を撮ってみましたが・・・見ていた患者さんとスタッフに大笑いされてしまいました(苦笑)。

ボトックス注射(というか針を使わないので注入)、痛みや匂いは全くありません。

ボトックスを溶解したのち、注射針を外して、通常の点鼻薬のように鼻に入れるのです。

そのまま5分程度鼻をつまみ、薬液が吸収されるのを待てばもう終りです。

30分もしないうちに鼻が通ってきます。

論文によると3週間~3ヶ月の期間、効果があるとのこと。

通常は花粉症の季節に一度やればよさそうですね。


「痛みの高圧酸素療法」ペインクリニック学会誌に論文が載りました

2012年01月11日(水) カテゴリー:医療

東京・四谷で診療を再開しています。

慌しい中先ほどお昼にお弁当を食べましたが、やはり和食(日本食)は染みますね・・・おいしい(笑)。

さて、昨年に仕上げた医師専門誌の「ペインクリニック」の依頼原稿。

今日クリニックに出勤したら届いていました。

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久しぶりに痛みについての医師向けの原稿を書きましたが、僕の医師としての最初のキャリアは、「痛み」の治療。

痛みの治療は奥が深く、医師としてどの分野においても役立つものが多いです。

今回依頼された原稿は、高圧酸素療法と痛みについてのもの。

海外の論文を検索してみましたが、二つのキーワードを直接繋ぐものは、ほとんどないのです。

結局、高圧酸素療法について書かれた多くの論文から、痛み治療に効果があるであろう3つの機序に疾患を分類し、まとめさせていただきました。

さらに、高圧酸素療法と活性酸素についての関わりも、章立てしてふれました。

こうして原稿を読み返してみると、付け加えたいことも沢山出てきますが、また次の機会に加えてゆきたいと思います。


ロシアの医療政策、アロプラント

2011年08月08日(月) カテゴリー:医療

ロシアに滞在したのはこれで二度目でした。

今までも出張した各国独自の医療政策について個人的にまとめてきていますので、今回はロシアの医療政策についてまとめておきたいと思います。

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まずは、ソ連~ロシアという巨大社会主義国家の歴史を簡単におさらいしておきましょう。

1917年にレーニンにより結成された共産主義がロシア帝政に代わって政権を取り、世界に初めて社会主義国家という“スーパーパワー”が出現します。

’89年にベルリンの壁が取り払われ、’91年にソ連邦が解体されることによって、69年間続いたこの時代は終わりました。

社会主義というある意味での「理想国家」が、試行錯誤を繰り返しながらも様々な矛盾を抱えて終焉したのです。

社会主義施政下の当時、医療も「無料」で提供されていました。

医師および看護師の増員や公的病院、診療所の増設を国家がすべて行い、国民から医療費を徴収しないという、公的な「無料医療」が施行されていたのです。

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しかしながら、ソ連解体後の翌年、1992年には早くもロシアの医療状況は崩壊状態に陥いります。

ある意味当然ですよね。

新生ロシアにおける医療の現状を調べる過程でまず驚いたことは、医療にかける国の予算の驚くべき低さです。

国民医療費が国民総生産の2.2%しかないのです。

計算すると、国民1人当たりの医療費を年間250ドルしか、国で予算計上していない、ということになります。

年間250ドル。為替計算してみてください。びっくりしますよね。

この予算でひとりの病人に対しなにができるでしょう? 治療を担当する医師、看護士他スタッフ、機器、薬品、施設にどどういった比率で何を配分できるでしょう?

病人を健康に導くためにできることが確実に限定されてしまいますから、満足できるレベルで公的医療を施行するのは、事実上不可能だということになります。

ちなみに日本の医療機関において、初診で診療するのにかかる金額は、10割負担でも約3,000円。

これは何を意味するかというと、医師が受け取る初診診療の対価がひとりの患者さんにつき3,000円であるということを意味します。

対してロシアでの初診料は、約15,000円。

医師への対価が単純に日本の5倍という計算になります。

通常ヨーロッパでは初診料は100ユーロぐらいはしますので、日本が国際的には安すぎるわけでこれは別の議論が必要な領域ですが、とはいえ、様々な事情を差し引いても物価がロシアと日本では違います。

単純な5倍計算では成り立ちません。

さらに摩訶不思議なことに日本や他国だったら、診察を行うその場で済んでしまう簡易な治療や医療施術も、ロシアでは一旦病院に入院しないと受けることができません。

どうしてなのか理由はよくわかりませんが、入院すれば当然諸経費は跳ね上がりますから、ロシアの平均所得に対して医療費は非常に、非常に高額だということは確実に言えます。

最近ロシアでは自由企業も奨励されているので、私的医療施設の進出が盛んになりつつあります。けれど、診療費が公的施設のさらに数倍高額であるため、富裕層のみが利用しているようです。

公的施設での診療は税金で維持されていますが、大半の医療機関は老朽化が激しく機器や建物の老朽化は常に問題となっています。

ロシアの医師や看護師の診療レベルも、国際的にみると決して高いものではありません。優秀な人材はいることと思いますが、育てきれない現状があるようです。

教育・研究の問題もありますが、社会主義国家において、医師は人気のある職業ではありませんから優秀な人材は他の職業に流れてしまうという背景もあるでしょう。

不眠不休で、しかも人の命を預かる責任重い仕事をしても、他の職業と給与が一律であれば、人気が出ないのもある意味自明の理ですよね。

社会主義国家が崩壊してまだ20年ですから、新しい価値観の元医師の育成がまだ追いついていないのも当然と言えるでしょう。

こうした背景により、ロシア国民の80%は伝統医療や自然療法に依存し、重病以外は医師の診療を受けないというのが通例となっているようです。

感染症や急性疾患に強い西洋医療に関わることができないということは、そのまま乳幼児および高齢者の死亡率に繋がります。平均寿命は60歳前後という状態です。

医療技術の問題も良く討議されます。

チェルノブイリの事故の際に、小児の甲状腺がんの手術の祭に、首を横断する様な大きな切開の傷跡を残されているのをみて、現松本市長、信州大学元第二外科助教授であった菅谷昭先生が単身ベラルーシに飛び、5年半もの期間、甲状腺がんの首の傷跡の小さな手術を広められたことがNHKの「プロジェクトX」でも取り上げられましたが、ご覧になった方はいらっしゃるでしょうか?

僕も学生の時に菅谷先生の講義を受けた記憶がありますよ。

また、96年には,ロシア大統領ボーリス・エリツィン元大統領の冠動脈バイパス手術の際には、結果的にロシア国内で信頼に値する医師がおらず、全米最大の心臓医療センターであるテキサス・メディカル・センターのマイケル・E・ドゥベイキー医師(1908年生まれ、元ベイラー医科大学学長)のチームが招聘されたことが記憶にありますね。

DeBakey(ドゥベイキー)医師は大動脈解離の分類をしたことで、医学史に名前が残っています。

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ロシアの医療で誇るべき技術もあります。

そのひとつは、「アロプラント(Alloplant)」―すなわち、死体線維から得られる人体医用材料の技術です。

人間の死体は、臓器、組織、細胞、遺伝子などの各レベルにおいて、移植用、医薬品製造用、薬物試験用、医学実験・研究用など、さまざまな目的で広範に利用され始めているのです。

約10年前に、狂牛病の話題が出た際に、クロイツフェルト・ヤコブ病の原因となる汚染されたヒト乾燥死体硬膜が日本の医療機関でも広く使用されていることが判明しましたが、このヒト乾燥硬膜は商品化したヒト組織の典型例ですよね。

しかしながら、このアロプラントを使用することで、網膜色素変性症、糖尿病網膜症、加齢黄色黄斑変性、視覚神経萎縮症、緑内障、進行性近視、早産児網膜症などと言った今まで治療が不可能であった、とくに眼科系の疾患の治療の道筋を見いだすことができました。

ロシアでは特に身元不明の死体は、細かく分離され医療の商材にされるのです。日本人には死体ストックして商材化することなど、なんともなじめない文化習慣ですが、国によって当然倫理基準は違います。

ここでは医療テクノロジーが人体を医療資源化し、市場経済がそれを商品化する図式が成り立っているのです。


チャリティイベントに参加します

2011年07月26日(火) カテゴリー:医療

ここでひとつお知らせです。

学会活動では基本的に医師や医療関係者、工学関係者向けの学会、セミナー、ワークショップで話をすることが多い僕ですが、この秋一般の方向けの震災チャリティワークショップで話をすることになりました。

場所は、東京外国語大学府中キャンパス。日程は、11月27日です。

今回初来日となる統合医療関係の方々と一緒に、パネルディスカッションに参加します。

参加申し込みが始まったそうですので、ご興味のある方はぜひいらしてください。

Touch for World International Week 2011

第一回世界自然療法シンポジウム

詳細:

http://t4wintlweek.com/2011symposium.html


「アンチエイジングと水との関係」についての招待講演

2011年06月04日(土) カテゴリー:医療

昨日金曜日は、臨時休診をいただいて、「アンチエイジングと水との関係」についての講演を、高知でさせていただきました。

電解還元水機器メーカーとしては唯一の東証1部上場企業である、株式会社日本トリムからのご依頼でした。

クリニックFでもトリム社の電解還元水機器を導入していますが、この話題は電解還元水のカテゴリーで詳しくふれています。

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乗り込んだ全日空機には、「心をひとつに、がんばろうニッポン」の言葉が日の丸と共に。

東京は曇り空ですが、雲を抜けると視界が開けます。

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僕が生まれ育った鎌倉江ノ島湘南地域を眼下にみながら

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富士山も観ることができて良かったですよ。

フライトがディレイしたのもあって、取り合えず会場のウェルサンピア高知に滑り込みます。

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最近は外国人医師相手に英語で講演する機会が多いのですが、今回は高知市のJA(全国農業協同組合連合会)の女性部会の約300人あまりの方々が対象とのことで、専用のスライドを作って望みました。

大きな会場にすごい熱気です。

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近年の研究では、ほぼすべての環境汚染問題、病気と老化現象の原因に、活性酸素がかかわっていることがわかっています。

具体的には

環境汚染としては

「オゾンホール」「除草剤」「重金属による汚染」「酸性雨」「地球温暖化」など

病気の原因としては

「心筋梗塞」「脳梗塞」「老化の分子障害説」「パーキンソン病」「アルツハイマー型痴呆」「糖尿病」「放射線被曝」「白内障」などなど

通常これらの活性酸素を破壊するために抗酸化物質を使用するのです。

食材やサプリメントに含まれる代表的な抗酸化物質は

■カロチノイド(赤色系)としては、アルファカロチン、ベータカロチン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンなど。

■ポリフェノール・フラボノイド(黄色系)としては、カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン(ビタミンP)、イソフラボンなど。

■アントシアニン(紫色系)としては、カシスやブルーベリー、クランベリー、赤シソ。

などがあげられるのですが、トリム社の機能水は、これら抗酸化サプリメントと同等の効果が期待できることが九州大学などの共同研究でわかっています。

“固体”の研究に比較して、水のような“液体や流体”の分析研究はまだまだ遅れているのですが、今後の研究が期待されますよね。

講演の後の質問時間には、いくつものご質問をいただき、高知の方々の健康美容意識の高さに驚きました。


右顔と左顔 どちらが痛みを感じやすいか?

2011年05月16日(月) カテゴリー:医療

新国際学会周遊記では、GW中に滞在したボルチモアの話が続いていますが、僕は東京にいます。

昨日の日曜日は、品川の御殿山ガーデン ホテルラフォーレ東京に行ってきました。イタリアはフィレンツェにあるレーザー会社DEKA社のスキンセラピーワークショップに出席してきましたよ。

ミーティングでの発表内容は非常に勉強になりましたので、また他のブログで触れようと思っているのですが、講演者の一人 実川久美子先生が、

「ほとんどの患者さんは左顔の方が痛みを強く感じやすいので、麻酔をかけた後には、麻酔が強く効いているうちに、左顔から施術をするようにしている。」

というようなことをおっしゃておられたのが印象に残りました。

患者さんの痛みに対する反応を見て、ご対応を変えていらっしゃるとは、素晴らしいなと思ったのです。

「医者ならあたりまえじゃないか」

と思われる方もいるかもしれません。

けれど、実際の現場ではこれが出来る医師と出来ない医師とがいるのです。

よく言われる医師の傲慢さや怠慢さから起きるのでは決してなく、どちらかというと人と接するときの感覚的な問題、感性の問題のように思います。

治療を行うときに、患者さんの反応を見ながらその場で臨機応変に対応する・・・医師として最も必要な感性のひとつですよね。簡単なことではありませんが・・・。

さて、実川先生がおっしゃっていた痛みを感じる左右差について、今日はすこしお話したいと思います。

実は以前、僕もレーザー照射時に全く同じ感想を持って、どうしてそういったことが起こるのか色々と考えたことがあります。

ペインクリニック専門医として言える答の1つに、体のいたるところから来る感覚神経の求心路は、8割以上が首の位置で左右が入れ替わり交差するということがその根拠の1つとして考えられます。

日本人の中で先天的な左利きは、10%前後と言われています。

つまり、ほとんどの患者さんがほぼ右利きということになります。

右利きの人は当然ながら左手よりも右手をよく使うことになりますので、首から下について言えば右側の運動神経と感覚神経が左側よりも発達しているといえます。

ちなみに、自分の「利き手」「利き足」はどちらか意識することはありますか? 

手の場合は箸を持ったり字を書いたりするのですぐわかりますが、運動選手でもない限りどちらが「利き足」かというのは普段意識しないかもしれませんね。

右手が利き手の人は右足が利き足の場合が多いようです。ただし、後天的に利き足が左足となり、利き手は右だけど利き足は左、という人、もしくはその逆という人は珍しくありません。

これが、さらに顔ということになると、「利き顔」が左右どちらかということを何で判断するのか難しいところ。女性は俗に左側の顔のほうが右よりも美しいとされることも多いですから、「自分の利き顔は左」と思われている方もいるかもしれません。

医学的に言えば、さきほども書きましたように首の位置で多くの神経が交差しますので、右手右足が「効き手」「利き足」の場合、その感覚を司っているのは“左”脳ということになります。

つまり右利きの人の利き顔?は、左顔ということになるのです。

顔は通常は左右対称に動くように出来ていますので、分かりにくいかもしれませんが厳密に計測することが出来れば、左脳優位な右利きの人は、左の顔の方が複雑な表情が出せるのかもしれません。

同じように感覚神経も敏感になりますので、一般的には、「右利きの人は、左顔が痛みを感じやすい。」のです。

反対に、「左利きの人は、右顔が痛みを感じやすい」ということもあると思います。

クリニックFの患者さんの中には、僕に施術中に「もしかしたら左利きですか?」って言われた経験のある人がいらっしゃると思いますが、そういう理由があるのです。

ちなみに、クリニックFでレーザー照射時に使用する塗る麻酔薬は定期的に自家調合しています。

そして、施術の長さや痛みの強さによって麻酔の薬の配合を都度変えています。

局所麻酔薬の場合、炎症などが続いて組織が酸性に傾いていたりすると麻酔が効きにくいため、麻酔薬の量が多めに必要なことはありますが、いったん効果発現まで組織内麻酔薬濃度が上がると麻酔効果は一定となり、持続時間だけが変化します。

僕は上記の「左顔の方が痛みを強く感じやすい」人が多いという理由から、麻酔の効果時間を考えて、逆にほとんどの方を右から施術をするようにしています。

痛みを感じやすい左側の施術が終了するまで効果の続く麻酔を使用することで、施術時間の1つのメルクマールにしているのです。


放射性ヨウ素の除去

2011年04月13日(水) カテゴリー:医療

地震も続き、原発・プルトニウムの問題も依然緊張が続いています。患者さんからは飲料水や農作物、海鮮物などについての質問も受ける機会がしばしばあります。

クリニックFで採用している日本トリムの整水器で、ヨウ素の除去効果を示すデータが得られたことが4月2日の読売新聞に掲載され、それについての御質問なども頂きました。

こちらが実際の記事になります。

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担当の方による、この記事にはないもう少し細かい情報をここでご紹介しておきます。

「放射性物質については、厚生労働省が3/19日に水道局宛に出した文書内で、活性炭にヨウ素131を除去できる可能性があるとする指摘があった。しかしながら、素材メーカーも含め民間でこれに対するデータを持っている所は無かった。

厚労労働省見解の追試として、日本トリム社では取り急ぎ福島県いわき市内のユーザー宅2軒にご協力いただき、水道水と整水器通水後の水を採水し、分析を日本食品分析センターに依頼した結果。」

ということのようです。

もちろん放射性物質は浄水に関して想定外のものであり、自然界に微量にしか存在しないセシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどは取り扱いも出来ない為、試験自体することが困難ですが、理論的には活性炭を使用して微量元素を吸着させるだけでも、飲料水の安全度は増しそうですね。

東京都や千葉県の水道水や、一部の農作物、魚介類に放射性ヨウ素131が含まれていたという情報が出てから一月あまりが経ちました。

ここで改めてヨウ素(ヨードとも言う)とはなんであるか復習しておきましょう。

ヨウ素とは、原子番号53番。ハロゲン元素のひとつです。

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これは以前のブログでもふれた、「世界で一番美しい元素図鑑」のヨウ素の画像です。クリニックFにも英語版と日本語版の二冊が備品として置いてあります。

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ヨウ素自体には同位体が37種類あることが知られていて、ヨウ素127のみが安定型です。

甲状腺ホルモンの構成成分として、人間にとって必要な微量元素であり、体内には約25mgが存在します。食物としては海藻類に多く含まれていることは、このひと月でよく理解された方も多いかと思います。

甲状腺は、ヨウ素が体内に入ると、甲状腺ホルモンを作るために、必要な量を取り込み蓄積する作業をします。

通常のヨードが甲状腺に取り込まれた場合、30日程度で半分の量が体外排出され、甲状腺に取り込まれないヨウ素はその日のうちにほとんどが出て行きます。

放射性ヨウ素とは、放射線を放射するヨウ素で、数種類あります。特にヨウ素131(半減期約8日)、ヨウ素133(半減期約21時間)は、ウランの核分裂によって生成される放射性ヨウ素です。

半減期が長いヨウ素131のほうが放射線を放出する時間が長いといえます。

セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなど他の放射性元素の体内動態を考えると、基本的には体内代謝経路に関わりません。一旦筋肉のような血流の多い組織に移行することはあれ、ほとんどが尿から排泄されます。

これに対してヨウ素は、沸点も低く、気化して大気中に広範囲に拡散しやすい上に、呼吸や飲食により体内に吸収されやすいという性質があります。

原子力施設の事故で放出されたヨウ素131が体内に吸収されると、甲状腺で甲状腺ホルモンに合成・蓄積され、その後長期間にわたって体内被曝をしますので注意が必要です。

チェルノブイリ原子力発電所の事故では、癌患者が増えるだろうと予測されていたのですが、結果的には事故の5年以上後に統計学的に優位に増えたのは、特に幼児だった子供たちの甲状腺癌の発症率だけでした。

甲状腺癌の予防のためにヨウ素剤を飲むのは、吸収された放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積される前に、正常なヨウ素で甲状腺のヨウ素必要量を飽和させるという意図があるのです。

行政は原発の事故より近い地域より、一刻も早く、特に小児を優先してヨウ素を予防的に飲ませるといった、二次的被害を防ぐ対策を直ちに練るべきだと思います。

一方で、医学的にはこうした放射性ヨウ素を短期間に使用することで、甲状腺癌治療や甲状腺機能亢進症の治療が行われています。同位元素のヨウ素123やヨウ素131は単一光子放射断層撮影(SPECT)に、ヨウ素124はポジトロン断層法(PET)に用いられています。

このような治療目的の場合、なるべく甲状腺に放射性ヨウ素を集めたいので、治療前の患者さんには、昆布や海苔などのヨウ素の摂取を控えてもらいます。

放射性ヨウ素の経口摂取を防ぐには、花粉症と同様な対策が必要となります。特に手洗いとマスクは大切です。


痛みとトラウマのメカニズムの類似性、癒すタイミングの違い

2011年04月07日(木) カテゴリー:医療

本日木曜日はクリニックFの休診日です。

通常の木曜日は、僕は工学部大学院でレーザーの研究をする日にしているのですが、震災後は、普段診療を行う「レーザー治療」のほかに、日本ペインクリニック学会認定医としての僕のもう1つの専門分野である「痛みの治療」で御相談を受けたり、診療に借り出されることが増えています。

日々余震と原発の存在を感じながら先が見えないことによる様々なプレッシャー、不安、恐怖、強烈なストレスなどなど。

そうしたものと戦っていると、心や身体にいくつもの不具合を感じるようになりますよね。

ぐっすりと眠れない毎日が続き、リラックスできるはずの家の中でさえ、緊張感を感じながら避難道具を脇目にTVやインターネットをついつい見てしまう人もいることでしょう。

心理的ストレスを長期間受け続けると、ストレスに対抗するため、副腎皮質よりコルチゾールが分泌されます。さらにストレス状態は持続的な交感神経優位状態になりますので、心身のバランスが崩れないわけがありません。

闘争モードの交感神経が優位になっていると、細動脈も収縮し、末端組織に血流が行きにくくなりますので、頭痛を始め、関節の痛みや腰、首などの痛み、腹痛などが引き起こされることもあります。

こんな際には、クリニックFでも行っていますが、「痛みの悪循環」を断ち切るペインブロック注射が非常に有効な場合があります。

しかるべき関連医療機関に紹介状を書く場合もあります。

また、最近似たような御質問を何人かから受けました。

「先生は、痛みのメカニズムに関して本を書いていますが、トラウマのメカニズムと痛みのメカニズムは一緒なんですか?」

この御質問についてお答えしますね。

まず、トラウマとPTSDの違いが分からないと言われる方がいますが、「PTSD」とは Post Traumatic Stress Disorder(ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダー=心的外傷後ストレス障害)の略です。

「PTSD」の方が直後に引き起こされる生体ストレス反応までを包括した表現なのですが、現在使われている「心的外傷・トラウマ」の意味においては、基本的には同じものと考えてよいです。

確か、以前のブログにも書いたことがあるのですが、まずそもそも「痛み」とは何か、ということをクリアにしていきましょう。

世界疼痛学会(IASP)で決定された、「痛みの定義」という ものがあります。

それによると

「「痛み」とは、実質的、または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような経験から表現される不快な感覚、または情動経験をいう。」 と定義されています。

「情動経験」・・・日常生活でなかなか聞きなれない言葉ですが、“情動”とは短時間で強く作用する脳とホルモンや免疫系、生体物質における興奮状態としての「生理反応」であり、わかりやすく定義すると「感情の動き」ということになります。

つまり、痛みとは「感覚」であると同時に、それに伴う「感情の動き」でもある、ということなのです。

また痛みの知覚が、脳の中では「視床」と呼ばれる部位で感知されることが多いのはご存知の方もいるとおもいます。

しかしながら、

この「痛みによって引き起こされる情動反応」

さらには

「痛み刺激の予知と回避についての学習」

といった、感知された痛みに対するより高次元な脳反応には、大脳辺縁系の一部の「前部帯状回」という部位が関わっています。

心的ストレスは、「心が痛い」といった表現をしますよね。

その言葉通り、心的ストレスを受けた場合、fMRI (functional Magnetic Resonance Imaging=機能的磁気共鳴画像)を利用して、脳のどの部位が活動しているのかを機能分析すると、この「前部帯状回」が痛み刺激を受けた場合と同じように反応することが分かっています。

「トラウマ」と「痛み」によって引き起こされる情動、つまり脳における反応メカニズムはほぼ一緒なのです。

これはむしろ、人間の進化の過程で、生体にとって最も脅威となる「痛み」を感じるために発達した「痛みの脳回路」が、同じように社会生活の中で最も脅威になる「心的ストレスのための脳反応回路」に、「転用」されたと考えた方が良いのでしょうね。

人類が社会生活を初めて早4000年の歴史があります。進化の過程による対応策の1つだったのでしょう。こう考えると不思議ですね。

ただし、今回の震災を考えた場合、それによって受けた心の痛みとからだの痛みとでは、その癒すべきタイミングは、多少異なるかもしれない、というのが僕の見解です。

心も体も、痛みをメカニズム的に癒し、傷を再生させるためには、自律神経を整えることがどうしても必要です。

闘争と逃走の神経=交感神経は、いついかなるときに震災が起きても逃げられるよう日々準備を整えておかなければならない昨今のために、現在日本に住むどんな人の体の中でも日夜フル稼働していることでしょう。

しかしながら、Relax & Digestの副交感神経を十分に作動させ優位にしない限り、傷はなかなか癒えてはくれません。

身体的な傷や痛みは、自律神経の状態に関わらず、西洋医学的な治療薬でもって早期解決する事が日常生活を送る上でも、からだの機能的にも求められる場合があります。

けれど、災害によって心に出来てしまったトラウマのケアをしていくときには、こうした社会状況も考えながらのケアが求められると僕自身は思うのです。類似した状況が続き、交感神経が優位であることを刻々と求められる状況では、痛みを根本的に癒すことは難しい。

つまり、ある程度余震や原発状況が落ち着き、日々の生活への不安や恐怖が遠のいてから・・・せめて枕元に避難道具を置かないと落ち着かない夜が去ってからの方が、有効的な治療ができると考えています。


放射線障害発生のメカニズムと活性酸素

2011年03月19日(土) カテゴリー:医療

昨日のブログでお話した、放射線障害発生のメカニズムについて、もう少し細かく教えてほしいという御要望を頂きましたので、今日はそこについてお話します。

放射線障害には、このブログでもおなじみの活性酸素が深く関わっています。

生体が60兆個の細胞によって構成されていると、昨日のブログでも述べましたが、細胞を構成している要素を大きく分けると、60~70%の水分と、30%のタンパク質によって構成されているということになります。

放射線の細胞への作用は、この人間の体の60~70%を構成する水分の部分に影響を及ぼします。それは電離作用が影響するのです。

ちなみに、電離作用とは、物質を構成している原子から電子を弾き飛ばす作用のことを指します。

電離作用によって生体の細胞の電子軌道から電子がはじかれる、ということがまず起きます。

ここで、電子がはじかれると

①はじかれた電子が直接DNAを損傷するという直接作用

②はじかれた電子が水や酸素分子にあたって生成された化学反応の高い活性酸素が、DNAを損傷するという間接作用

が起こってしまいます。

この電離作用が大きいと、①酵素機能の低下、②細胞分裂の遅れ、③遺伝子損傷・・・などの影響があらわれるのです。

細胞死に至らない程度の損傷を遺伝子が受けた場合、ほとんどが短期間に修復されます。しかしながら、ごく稀に癌になりやすくする遺伝子を作ってしまったり、逆に癌を抑制している遺伝子を破壊してしまうことが、癌細胞の誘発につながります。


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